こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 暮れも押し迫ってきましたが、バイオにとっていいニュースがありました。厚労省の中央社会保険医療協議会が開催され、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の自家培養表皮「ジェイス」が承認されました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8375/
 保険償還価格は、8cm×10cmの表皮1枚に付き30万6000円。重症熱傷の患者が対象ですから、1回の治療で平均20枚ぐらい使用することになるもようです。そうなると、1治療当たりの表皮の費用は300万円から600万円ぐらい(ちなみに、社会保険に入っていれば、高額療養費制度によって自己負担の限度額が定められていますから、患者負担が100万円とかになるわけではありません)。これが安いか高いかは見方が分かれそうですが、J-TECは46万7750円を要望していたので、J-TECの思惑よりはずいぶん安い価格が設定されたということになります。
 話を聞いていると、原価計算方式で算出された30万6000円という償還価格で、メーカー側の採算が合うかどうかは微妙なようです。特に、採取した表皮細胞を培養している間に患者さんが亡くなってしまった場合にコストを回収できないなど、再生医療製品特有のリスクがあることを考慮すると、かなり厳しいかもしれません。しかし、J-TECとしては「(これ以上価格交渉などをするよりも)戦略製品なので、保険収載して実績を積み上げて行きたい」(大須賀俊裕専務)とのこと。ちなみに、今回の承認に伴って、09年3月期の業績見通しを修正することはないそうです。
 ここまでの道のりは、本当に紆余曲折がありました。ジェイスが厚労省から製造承認を取得したのは、承認申請から3年後の07年10月のことでした。しかし、承認申請で提出された国内臨床試験のデータはわずか2例のみ。しかも1例は移植後の観察期間終了後に死亡したため、承認条件として、製造販売後臨床試験を実施し、その結果を速やかに報告することが求められました。
 J-TECは承認後の07年11月に保険適用希望書を厚労省に提出し、08年4月の診療報酬改定で保険収載されることを望んでいましたが、これに対して日本医師会の疑義解釈委員会などで、「治験の症例数が少なく、有効性、安全性の根拠が乏しい」といった意見が出され、保険収載が見送られてきた経緯があります。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3200/
 保険収載は09年1月1日ですから、承認取得から1年以上たって、日本の再生医療製品第一号であるジェイスはようやく普及に動き出すことになります。J-TECは今後、安全かつ有効な製品としてジェイスの普及に務める一方、再生医療がビジネスとしても有望であることを実証していかなければならないわけですから、文字通りこれからが正念場ということになります。ともあれ、日本の再生医療にとって記念すべき第一歩を踏み出せるのは、本当に喜ばしいことです。
 ちなみに、年末にかけてはワクチンでも動きがありそうです。政治や経済は先行き不透明な状態が続いていますが、バイオ分野ではやっと少し明かりが見えてきたという感じでしょうか。年末にかけてのトピックは、追って報じていきますので、ぜひ、日経バイオテク・オンラインでお読みください。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6117/
検証:東大医科研論文偽造(3)、大山鳴動して・・・
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