とうとう師走になってしまいましたね。
 今年は暖冬なので、東京の桜葉も黄土色のまま散り始め、紅色に変ずる前に落ちることを嘆いていました。が、何とかここのところの冷え込みで、四ツ谷の土手の桜も散り残りの葉に紅を浮かべるようになりました。この葉を失うと、冬将軍の支配が始まります。
 冬の訪れのプレリュードが落葉です。昨日はまるで雨のように葉が落ち、家の前の路を竹箒で空しく掃くも、掃いても掃いてもちり積もる落ち葉。むきになることは本当はありませんが、汗までかきました。しかし、落ち葉かきに便利な竹箒を良く見ると、少なくとも300年以上前から変っていない風情です。今、夢中になっている隆慶一郎の時代小説の下人が御所の庭を掃いている箒そのままです。
 落ち葉との格闘で、我が国の伝統を知る日暮れ時。
 女子フィギアスケートもわが国の伝統になったと言うべきでしょう。浅田選手も自信を回復、今月、ライバルであるキムヨナ選手の決戦に挑みます。多分、上位選手は総てアジア、あるいはアジア系の選手が独占するだろうと思います。
 さてバイオです。
 現在、新幹線で京都に向っております。国際会議場で開催される日本免疫学会の取材で、もう紅葉というよりは、枯葉散る古都を訪れます。免疫学は本当にコロコロ学説が変るので、この学会に参加しないと免疫学の浦島太郎になってしまう恐れがあります。
 本日も勉強、勉強です。
 何故、免疫学がこんなにも毎年変貌するのか?
 一つはこの学問がかなり頭でっかちというか、哲学的というか、つまり学説が先行するタイプの学問を今までやっていたという伝統があります。地道な生化学のような物質レベルの議論よりも、アイデアを競う傾向があるといったら失礼になりますか。これは免疫学が実勢の病気に深く関与しているということに過半の理由があるでしょう。病気を起こしたり、防いだりする免疫現象の全体をとにもかくにも把握しようという努力の現われとも言えるでしょう。
 分子生物学がリンホカインやケモカイン、サイトカインなどを明らかにし、その受容体とシグナル伝達機構も分子レベルで明らかにした結果、免疫学は新たな段階に入りました。しかし、今でも尚、コロコロ学説が変るのは、免疫のもう一つの主役である細胞を記述したり、細胞を操作する技術、細胞工学技術がまだ未発達であることが原因でありました。セルソーターなどの技術革新によって、細胞の性格付けと分離がかなりのところまで参りましたが、それでも細胞表面マーカーだけで解析するセルソーター技術では、機能ごとに完全に細胞を記述したり、分離することができない限界があります。
 多分、こうした限界を打ち破るのが、iPS細胞を生んだ遺伝子の直接導入による細胞分化誘導法となると思います。細胞内で発現されている転写調節因子のプロファイルを分析し、そのプロファイルを遺伝子導入で操作することによって(細胞培養条件も重要です)、標準化された免疫担当細胞を分化させることが可能となるかも知れません。こうした標準化された免疫細胞やその支持細胞を混合培養することで、免疫反応の再構成が出来るようになれば、免疫学がやっと試験管内で必要・十分条件を満たす実験結果を揃えることができるようになると思います。
 今最も注目を集めている制御性T細胞(Treg)はFOX3という転写調節因子の発現で規定された初めての免疫担当細胞であります。もう新しい波の先駆けはやってきているのです。まずは遺伝子導入の実験が進むでしょう。
 細胞工学的手法が完成すれば、免疫学の核心問題である個体差や自他認識の研究も一挙に進むでしょう。iPS細胞は単なる再生医療だけには止まりません。
 なにやら新たな技術革新の炎がぶすぶすと音を立てていそうな予感してきました。
 さて、今年はどこまで進みましたか?これからが楽しみです。
 寒くなってきました。皆さんもどうぞご自愛願います。
            Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
============================================================================
<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
============================================================================
 
2008-11-26
BTJブログWmの憂鬱08年11月26日、我が国の再生医療は欧米に遅れてはいない
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7950/
--------------------------------------------------------------------------
2008-11-25
BTJブログWmの憂鬱08年11月25日、CHO細胞の大量培養による抗体医薬の
製造方法の改良
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7917/
 
============================================================================
資源・エネルギー・食糧・環境、個のヘルスプロモーションなど、話題の大豆研究をリポート
BTJジャーナルのダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」08年11月号を先週、発行・公開しました。
 リポートは「大豆研究の最前線」。大豆は日本の長寿に貢献していると見られている食材。大豆は、栽培面積の確保では、バイオエタノールの原料にもなるトウモロコシと競合しています。大豆の油自身も、エネルギー源になりますし、畑の肉といわれる大豆を牛肉などの替わりに食べれば、より多くの地球人口の食を支えることができます。同時に地球温暖化ガスの発生量の抑制にも寄与します。
 大豆成分のイソフラボンは、女性ホルモンに似た作用があるため、女性ホルモンが関与するがんや骨粗鬆症、メタボリックシンドロームなどの予防・対策に役立つとみられていますが、一方で、環境ホルモン様の作用として安全性の評価が物議をかもしました。さらには大豆イソフラボンの健康効用は、個々人の腸内細菌叢の違いによって変わってくるという個のヘルスプロモーションの焦点にもまっています。
 11月9~12日に東京・新宿で開かれた第8回国際大豆シンポジウムの話題を中心にお届けします。上記のように大豆の研究、ゲノム時代と環境・食糧問題など現在の社会の諸問題と密接な関係があり、個の健康増進でも新たな展開が始まりました。バイオテクノロジーの最先端研究と社会との接点を考える上で象徴的な研究対象いえます。
※以下の大豆関連のBTJ記事の内容をリポートに盛り込みました。
大豆胚芽パスタで糖尿病性胃不全まひが改善、プロスタグランジンD2シンターゼの発現をイソフラボンが誘導
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7650/
東京農工大、米Harvard大、ニチモウ、大豆発酵素材ImmuBalanceがアトピー改善、ピーナツアレルギーに続く成果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7597/
米Ausio社、大豆イソフラボンから合成したS-エクオールのフェーズIを08年夏開始、アジア市場向け開発は日本の製薬企業と提携へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7525/
写真更新、イソフラボンの遺伝子領域や腸内細菌代謝の新知見、フジッコが第8回国際大豆シンポで4題の成果発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7480/
続報、自給率22%を100%へ、国産ダイズ品種のゲノム解読に生資研・STAFF研で454 FLXが本格稼働
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/5860/
 ただいまBTJジャーナル08年11月号で大豆研究の最前線リポート記事の全文を無料でご覧いただけます。ぜひご覧ください。
 「BTJジャーナル」のPDFファイルは、次のサイトでダウンロードしてください。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 08年11月号(第35号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 連載「大学は今」第11回
東京大学医科学研究所の
論文偽造報道騒動を検証
P.5 特集リポート
第8回国際大豆シンポジウム
腸内細菌叢の個人差に脚光
P.11 ノーベル賞研究室とキャリア
菊地和也・大阪大学大学院教授
P.14 BTJアカデミック・ランキング
スーパー特区24件採択がトップ
P.15 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
バナナダイエット事件の真相
P.18 広告索引
 ぜひ「BTJジャーナル」をダウンロードしてお楽しみください。パソコンでご覧いただくと、リンク先の情報もすぐに入手できます。プリントアウトをお読みいただくなら、カラーをお勧めします。
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn
 BTJジャーナルは、次のサイトでPDFファイルをダウンロードしていただくと(無料)、ご覧いただけます。オープンアクセスに対応した新タイプのジャーナルですので、ぜひお楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
 ご意見などは以下のフォームから受付します。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html