毎週金曜日のメールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田です。
 今週は昨日夜に発行・公開した「BTJジャーナル」08年9月号の編集作業に注力してきました。
 水曜日9月24日にBTJにて報道した下記の記事も、BTJジャーナルなら全文を無料でご覧いただけます。ぜひどうぞ。
 
■BTJ記事
データを出す人だけが研究者ではない、NIHの「研究者役人」制度に学ぶ
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?jreq=btjnews&newsid=SPC2008092458562 
 
 今週一番おもしろかった取材は、9月24日の山田養蜂場が都内で開いた「みつばち研究助成基金」の記者説明会でした。
 
■BTJ記事
みつばち研究助成に応募が222件、山田養蜂場が若手研究者に総額1億円
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6239/ 
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?jreq=btjnews&id=20056239 
 
 2006年に全ゲノム情報が解読されてポストゲノム時代に突入したことにより、ミツバチ研究への期待も高まっている──。山田養蜂場(岡山県苫田郡、山田英生グループ代表=写真左)は、創業60周年を機に設立した「みつばち研究助成基金」の研究助成対象35件を決定した。採択案件は、ミツバチの生物学関連が6テーマ、予防医学関連が29テーマ。2008年9月24日に都内で開催された記者説明会では、採用研究者を代表して東京大学大学院の掛山正心・助教(写真右)が挨拶した。
 
 この記者説明会で、みつばち研究基金の発表のあと、「ミツバチから私たちへのメッセージ─蜂群異常崩壊騒動に学ぶ」と題した特別講演を、玉川大学ミツバチ科学研究センターの中村純教授がなさいました。この講演は実に興味深いものでした。
 
 さて、蜂群異常崩壊(Colony Collapse Disorder;CCD)なるものが、昨年(07年)の春以降、米国をはじめ世界各地で大きな問題になっているとのことです。
 
 この原因について集中的な研究が行われ、ピアレビュー論文として研究成果を発表したものも多いのですが、CCDの原因説はすべて、その後に否定されていて、いまだ原因は不明とのことです。
 
 特定の原因探求を是とする要素還元主義的な研究ばかりが行われ、崩壊現象自体の再現にも至っていない。対応策のない状況下で、多くのメディアが食糧危機や地球の存続機器まで、広範に不安を掻き立て、アインシュタインの偽引用まで飛び出し、養蜂産業だけでなく、一般市民をも巻き込んで、さながら行きどころのない非科学的な“騒動”の様相を呈している、とな中村教授は講演要旨にお書きです。
 
 「科学的情報は絶対ではない」というお話しも、まさに合点です。
 
 CCDに関する一般向けの英文書籍が08年5月28日、6月3日、それに9月16日に発行になっていて、このうち9月16日発行の書籍は日本語の翻訳本が11月に出版になるとのことです。
 
 「本が売れているのはいいのだけど、一般の人が本の書き手のセンスで理解する」問題も大きいと中村教授は指摘しました。
 
 CCDという呼び名は、07年に米農務省USDAが採用したのだが、うまく定義できていないと指摘なさいました。
 、
 中村教授が想定されるCCDの原因として、1番目に紹介したのは、「単一作物の花粉交配による栄養的ストレス」です。
 
 米国の広大なアーモンド畑で、受粉に必要なミツバチが急に少なくなってしまって困っている、アーモンド畑はとにかく広大なので、ミツバチのたんぱく質源である花粉として、アーモンドしか確保できない。
 
 働きバチは、この花粉をもとに、育児の餌を用意するのですが、アーモンド単一の花粉だと栄養バランスが偏ってしまうので、好ましいバランスの餌になるよう、自分の身を削って餌を用意する。すると、働きバチは弱ってしまいがちになる。
 
 蜂の子供は大きくなると、花粉そのものを食べるようになり、単一の花粉だと、栄養バランスが悪くなり、育つのに悪影響が出る。
 
 日本では、米国のアーモンド畑のような栄養ストレスはあまり考えなくていいようです。例えば、リンゴ果樹園でミツバチに活躍してもらうと、ミツバチはリンゴの花粉だけでなく、必ず周囲にある植物にも行ってくるので、栄養ストレスは受けにくいようです。
 
 ハウスの中の単一の作物について、ミツバチを受粉目的で使う場合には、栄養ストレスは大きく、必然的に、使用して戻ってくるときは、崩壊が起こっている。この崩壊は当たり前のことで、分かっていて利用するので、CCDには該当しないようです。
 
 米国の研究は、個体の死にこだわり過ぎでは、崩壊の過程をもっとみて欲しい、と中村教授は指摘なさいました。ミツバチは、社会的生物なので、蜂群(コロニー)を1個の生命体と考えるべき。「超個体」として活動するのです。
 
 ミツバチのCCDは、人間社会でいうと経済のデススパイラルに近い、とのことです。
 
 メール原稿の締め切り時間になりました。中村教授の講演の魅力を、もっと十分にお伝えしたいのですが、今回はここまでにさせていただきます。
 
 さて、来月(10月)15~17日にパシフィコ横浜にて開催される「BioJapan2008」のセミナー「巡りとバイオマーカー」、おもしろいので、ぜひご参加ください。早期に定員に達するセミナーも多いので、下記サイトから早めの登録をお勧めします。
 
「BioJapan2008」の概要は下記をご覧ください。
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セミナーの申し込みは、下記サイトからお願いします。
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 それでは最後に「BTJジャーナル」08年9月号(第33号)のコンテンツを目次にて紹介します。
 
2 連載「大学は今」第9回
ポスドクの就職率が向上
キャリアパス多様化促進
 
5 特集リポート
植物代謝パスウェイ
山崎真巳・千葉大准教授
村中俊哉・横浜市大教授
ハウス食品ソマテックセンター

10 NIH「研究者役人」に学ぶ
笠岡(坪山)宜代
国立健康・栄養研上級研究員

12 BTJアカデミック・ランキング
スーパー特区の記事が人気

13 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
事故米とメラミン

14 BioJapan2008プレビュー

18 広告索引

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                           BTJ編集長 河田孝雄