こんにちは。水曜日のBTJメールを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 昨日、九州大学に取材に行き、新しい分子イメージング装置について取材してきました。日ごろ取材しなれないイメージングの技術の話を理解するため、半日ほどかけてじっくり取材させてもらいましたが、将来的に画像診断装置として医療機関で広く利用される可能性を秘めた、実にユニークな装置だということが理解できました。詳細については、来週月曜日にも日経バイオテク・オンラインに記事をアップする予定なので、ぜひそちらでお読みください。
 このイメージング装置についてもそうですが、最近、いわゆるデバイスも含めた医療機器の分野における日本の技術力の高さを認識させられることがよくあります。8月中旬には大阪の樹脂メーカーであるタキロンに取材したのですが、この会社が新たに開発した人工骨も、生体吸収性があって将来的に患者自身の骨に置換できることに加えて、変形させたり、裁断したりできるため、手術中に適切な形状に調整して使えるという点で、実に革新的な製品だと思いました。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/5389/ 
 
 ところがこの製品、欧米では来年にも販売開始する予定ながら、日本市場への投入は少し先になりそうということでした。人工骨に使用している材料が、既に臨床での使用実績があるものなので、米食品医薬品局(FDA)からは臨床試験なしで承認が得られましたが、日本では審査当局に臨床試験の実施を求められたからだとのことです。
 
 厚生労働省は、医療機器産業の振興などを目的に、7月に「新医療機器・医療技術産業ビジョン(案)」を策定しました。このビジョン案を公表した7月15日の「医療機器産業政策の推進に係る懇談会」では、医療機器業界団体の代表らから、「承認を迅速化してほしい」という要望が出たのに対し、厚労省の審査管理課長は「医療機器の審査の実務に関しては、少しでも基準を明確にするために、業界、医薬品医療機器総合機構、我々でタスクフォースを作って議論している。また、米国に比べて申請までで7カ月、承認まででさらに7カ月ある新医療機器の導入までのデバイスラグを解消するため、自民党の調査会で医療機器の審査員を増員してはどうかと指摘された。秋に向けて、審査迅速化のアクションプログラムを作るために議論していく」などと説明していました。
 
 しかしながら、先ほどの例にあるように、臨床試験が必要か不要化といった根本的なところで考え方が異なるようでは、いくら審査員を増やしてスピードアップを図っても、デバイスラグがなくなるわけはありません。
 
 一方で、新医療機器・医療技術産業ビジョン案には、「医療機器産業がよりいっそう発展するためには、積極的に世界市場に展開する必要がある」「日本の得意分野である電子技術、IT技術、繊維技術等の高度な要素技術を駆使し、高い品質を保つ生産技術を誇る日本の強みを活かすことにより、世界一の医療機器開発拠点となることも可能である」などとも書かれています。
 
 私の認識もその通りで、日本の製造業の技術を生かせば、世界市場で競争力を持った医療機器を開発することは十分に可能だと思います。開発にはそれなりのコストがかかると思いますが、国内だけでなく海外市場も同時に視野に入れて開発し、投資の回収を図るべきだと思います。
 
 そう考えれば、医療機器産業を振興するためにサポートすべきは、国内での開発よりも、むしろ海外での開発ということになるでしょう。ベンチャー企業や中小製造業でも海外での医療機器開発ができるよう、FDAの審査官OBなどによるコンサルティングを行ったり、資金面でのサポートをしたりすることも必要かもしれません。
 
 その結果、企業がまずは欧米での製品化に向かうことになれば、デバイスラグはますます長くなりかねませんが、産業振興の観点で言えば、国際競争力のある製品の開発こそ、政策的に支援すべきでしょう。デバイスラグの解消を掲げる厚労省にとって取り組みにくいということなら、経済産業省に政策として取り上げてもらうといいのかもしれません。日本における承認審査の迅速化も重要なテーマですが、日本発の医療機器・医療技術の国際化を推進することも重要なテーマだと思います。
 
 今週も最後にセミナーのご案内です。
 
 日経BP社Biotechnology Japanでは、9月以降に、BTJプロフェッショナルセミナーをシリーズで開催します。第一弾は9月2日の「ゲノムサイエンスへの貢献とヒトゲノム医療技術への展望─Gateway開発記念10周年シンポジウム」。セミナーは、10時10分からのセッション1と14時からのセッション2の2部構成で、セッション1は完全長cDNAプロジェクトなど、生物資源ライブラリの作製とその活用と展望について。セッション2は遺伝子操作とその医療応用に関する話題で、ES細胞やiPS細胞の基礎研究や医療応用の話も聞けます。
 
 このセミナーは、スポンサーのご厚意により、学生の方は無料で参加いただけることになりましたが、一般の方の申し込みもまだ受け付けています。
 
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/080902/ 
 
 第二弾は、「次世代シーケンサーが変えるバイオ研究の未来」というテーマで、9月18日に開催します。
 
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/080918/ 
 
 第三弾は、「抗体医薬の現状と未来」というテーマで、10月3日に開催します。
 
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/081003/ 
 
 いずれのセミナーも、このメールをお読みの方は特価で参加いただけますので、この機会にぜひお申し込みください。
 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
  
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
 
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若手の会から始まった日本RNA学会が、この7月の年会で10回目の区切り
BTJジャーナル08年8月号は、機能性RNA、日本RNA学会を特集リポート
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」の2008年8月号(32号)を本日、公開・発行しました。
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5 特集リポート
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内藤哲・北海道大学教授
中村義一・東大医科研教授

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                            BTJ編集長 河田孝雄