こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。先週水曜のBTJメールでは「来週水曜のメールはお休みします」と書き、また、昨日のBTJメールでも「次の送信は8月18日」としていましたが、諸般の事情で毎週水曜発行のBTJメール「SOLUTIONS」を1日前倒しで本日発行することにしました。お盆休み中の読者の方は、お騒がせしてどうもすみません。
 先週、千葉県木更津市で「ES細胞とiPS細胞の最新動向」と題するセミナーが開催されたので取材してきました。本当は1日べったり取材したかったのですが、会議で途中からの取材となりました。それでもiPS細胞の臨床応用に向けたシナリオについて幾つか興味深い講演を聴くことができ、非常に参考になりました。
 
 臨床応用の話で面白いと思ったことの1つに、赤血球製剤や血小板製剤への利用があります。iPS細胞の臨床応用で懸念されているのは、がん化の問題です。初期化にはOct4、Klf4、Sox2、c-Mycの4つの遺伝子を用いるのですが、その中に発がん遺伝子が含まれているからです。このため、発がん遺伝子を使わない別の初期化方法の研究が活発に行われています。
 
 一方で、赤血球や血小板には核がありません。そして、iPS細胞を赤血球や血小板に分化させる技術は既に確立されているということです。したがって、自己の赤血球や血小板を基に作った赤血球や血小板は、4つの因子を用いた今の初期化法でもがん化のリスクは少ないと考えられます。もちろん、iPS細胞から赤血球や血小板を低コストで大量に作る技術開発も必要だし、緊急輸血などには向かないので、iPS細胞由来の赤血球や血小板に適した用途が何かを考えなければならないでしょう。それでもこの話を聞いたときは、iPS細胞の臨床応用に関して、具体的な方向性が1つ見えてきた気がしました。
 
 セミナーではこのほか、遺伝子治療や抗がん剤投与後に行う自家の骨髄移植、免疫細胞療法などに応用するアイデアが紹介されました。既に日経バイオテク・オンラインで記事にしたので、ぜひそちらをお読みください。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/5232/ 
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/5183/ 
 
 それから、セミナーで指摘されていたことでもう1つ興味深かったのは、「iPS細胞は多様である」ということです。「初期化」というとパソコンのことを連想するせいか、細胞の状態は単一のように考えがちですが、元の細胞自体が遺伝的に多様であるほか、リプログラミングの状況も違えば、遺伝子の挿入部位も異なる──と聞き、なるほど細胞の状態は多様なのだと気づかされました。したがって、臨床応用するためには、細胞の状態を評価・同定するためのマーカーの開発が不可欠です。iPS細胞は実に応用可能性が広い一方で、まだまだ数多くの技術開発が必要だと、改めて認識した次第です。
 
 ES細胞やiPS細胞の応用に興味をもたれている方に、ぜひ参加いただきたいセミナーがあります。9月2日に開催するBTJプロフェッショナルセミナー「ゲノムサイエンスへの貢献とヒトゲノム医療技術への展望─Gateway開発記念10周年シンポジウム」がそれです。
 
 Gatewayというのは、DNAクローンを短時間で作製する技術で、複数の遺伝子を同時に導入できるなどの特徴があります。この技術の開発を記念して、米Invitrogen社と米Science誌が共催する形でBTJセミナーを開催します。
 
 セミナーは、セッション1「生命単位cDNAリソースの構築と意義」とセッション2 「ヒト医療のゲノム操作技術と展望」の2部で構成され、セッション1ではゲノム研究の先端動向、セッション2では幹細胞の医療応用に向けた話題が聞けそうです。たっぷり1日のセミナーで、講師の顔ぶれはそうそうたるものです。ぜひとも下記のサイトにアクセスの上、ご参加願います。
 
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/080902/ 
 
 それから、10月に開催するバイオジャパン2008のセミナーの予約も始まっています。こちらも山中教授が2日間にわたって講演するなど、iPS細胞の話題がたっぷりです。下記のサイトにアクセスしてご予約願います。
 
https://biojapan2008.com/public/application/add/37?lang=jp 
 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
 
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最後に08年7月号(第31号)の目次を紹介します。
 
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5 特集リポート
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                            BTJ編集長 河田孝雄