こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 今週月曜から、日経バイオテク・オンラインは夏季休暇に入りました。8月4日(月)から8月17日(日)まで、緊急性の高いニュースを除き、有料ニュース配信をお休みします。
 とはいえ、実際には編集部自体は稼動しており、一部の記者は取材に飛び回っています。これまでに取材した中でまだ記事を執筆していなかった記事をせっせと書いている記者もいます。編集部自体が休業となるのは来週13日から15日までで、このときは当BTJメールの配信もお休みさせていただきます。
 
 で、私も取材した話題を記事にしなければと思いながら、取材に飛び回っていっこうに記事が書けないでいる毎日です。最近、取材と記事執筆の時間配分のバランスが悪いせいか、記事を書く能力が低下したためかよく分かりませんが、取材しながら記事にしていない話題がどんどんたまっていくような気がしています。
 
 7月30日に開催された厚生労働省の医薬品産業政策の推進に係る懇談会もその1つです。懇談会では、昨年策定された新医薬品産業ビジョンのアクションプランの進捗状況の報告と、さまざまな政策の進展に伴うアクションプランの改定案が示されたほか、「意見交換」として日本製薬団体連合会や日本製薬工業協会などから意見陳述が行われました。
 
 懇談会での議論などについては改めて日経バイオテク・オンラインで記事にする予定です。そちらでお読みいただければと思います。
 
 意見交換の中で、米国研究製薬工業協会(PhRMA)の幹部が、「医療はコストではなく、社会が行う投資であり、この点を政策綱領および政策決定で明確に周知すべきである」との意見を述べていました。医療費がコストではなく、国民が安心して生活するための投資ととらえるべきというのはその通りだと思います。
 
 実は、厚労省で、「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会というのが開催されていて、医療崩壊といわれる現状を以下にして立て直すかという議論が行われています。既に、医師不足を解消するために、厚労省は6月に策定した「安心と希望の医療確保ビジョン」の中で、従来の医師数抑制の方針を転換する方針を打ち出しています。6月に閣議決定した「骨太の方針2008」の中で、大学医学部の定員を「早急に過去最大程度まで増員する」とされたことを受け、8月5日に開催された検討会で舛添厚労大臣は、「来年度の予算で過去最大までの増員を一発でやりたい」との意向を表明しました。
 
 これまでの医師数抑制の方針を、増加の方針に転じたことは大いに評価できます。しかし、医師数抑制の方針の背後には医療費抑制の意図があったわけで、医師数増員する以上はそれなりの医療費増を覚悟しなければなりません。ところが、今回の議論を聞いていても、その結果、どのぐらいの医療費増を容認していこうとしているのかはよく分かりません。社会保障費の自然増を抑えようという方針は貫かれたままなので、将来、実際に医師が増え始めたら、医療は一層汲々としてしまうのではないかと心配になってしまいます。
 
 転換すべきは、むしろ医療費抑制策ではないかと思います。政府は、むしろ医療に積極投資し、医師や医療従事者を増やして、医療サービス産業による雇用者の増加を図り、同時に医薬品産業や医療機器産業が地力をつけて、国際市場に展開することを支援することで、将来の日本経済の発展にもつなげる──。ちょっと雑な議論かもしれませんが、これまでの医療費抑制策の下で、医師や医療供給体制の不足が深刻になると同時に、日本の医薬品、医療機器市場が伸び悩み、企業が競争力を失ってきた姿を思えば、根本的な方針転換こそが必要なのではないかと考える次第です。
 
 来週水曜のBTJメールはお休みさせていただきます。
 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
 
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Nature Photonics掲載論文が7月末にオンライン発表
たんぱく質の結晶化を不要にする次世代の光XFELを、
BTJジャーナル08年7月号の「構造生物学・結晶構造解析技術」特集でリポート
BTJジャーナル08年7月号を発行・公開
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp 
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 バイオ研究者のキャリアアップ/スキルアップにお役立ていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」の08年7月号を、先週末に発行・公開しました。

 特集リポートは「構造生物学・結晶構造解析技術」。結晶化せずに解析できる次世代の光、X線自由電子レーザー(XFEL)にも注目です。

 XFELは、オングストロームの空間分解能とフェムト秒の時間分解能で物質を照らす新しい光。XFELを利用することで、難病に対する特効薬の開発や、持続的発展に必要な新エネルギーシステムの研究など、ライフサイエンスやナノテクノロジーの分野が大きく発展すると、世界中の科学者が期待を寄せています。

 日本では兵庫県の西播磨で、2010年にXFELが稼働する予定です。それに先駆けて05年に建設されたプロトタイプ機では、08年春からXFELを用いた実験が始まりました。

 日本では、欧米とはまったく異なる新たな発想に基づくコンパクトなXFELの開発に取り組んでおり、このプロトタイプ機で、高出力で安定した極紫外線レーザーを自足的に発振できるという成果を、7月28日にオンライン版が公開になったNature Photonics掲載論文で、発表しました。

 レーザー光と放射光の優れた特質を併せ持つ夢の光である、XFELを用いると、たんぱく質を結晶化することなく、1分子のままで立体構造を解析できると期待を集めています。

 たんぱく質の構造解析で最大のボトルネックとなっている結晶化が不要となれば、たんぱく質の構造情報に基づく創薬が飛躍的に発展すると、期待できます。

 詳しくは、BTJジャーナル08年7月号P.5-9の記事をぜひご覧ください。

「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/

最後に08年7月号(第31号)の目次を紹介します。

2 連載「大学は今」第7回
研究開発強化法
鈴木寛・参議院議員
林芳正・参議院議員

5 特集リポート
進展する結晶構造解析技術
高エネルギー加速器研究機構(KEK)
理化学研究所播磨研究所

10 海外現地リポート
ニュージーランドのバイオ・健康素材

16 BTJアカデミック・ランキング
中村祐輔・東大教授
鎌谷直之・前女子医大所長

17 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
中国産ウナギ偽装事件

 ぜひ「BTJジャーナル」をダウンロードして、お楽しみください。パソコンでご覧いただくと、リンク先の情報もすぐに入手できます。プリントアウトをお読みいただくなら、カラーをお勧めします。

 BTJジャーナルは、オープンアクセス時代に対応した新タイプのジャーナルです。研究や教育、日常生活にご活用いただければ幸いです。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 
                            BTJ編集長 河田孝雄