お元気ですか?
 
 いよいよ北京オリンピックですが、中国政府の抱える少数民族問題を浮き彫りにする結果になりつつあります。ただでさえ、都市と農村の経済格差と地方政府の腐敗に対する不満から年間8万件以上の暴動が地方で起こっていることを、先の全人代で国家首脳が認めている累卵のような国家状況に加えて、イスラムなど歴史的に中国と軋轢のあった地域の反政府組織がオリンピックを契機に、テロを宣言したためです。チベットでの暴動もまだ記憶に新しいですが、かつての中原(中華)の外の地域が騒がしくなってきました。原油高騰と米国市場の縮小も中国の経済に連鎖的な悪影響を及ぼしています。今まで経済成長が人民の不満を解消してきた面があり、経済停滞が現政権にとっては大きなダメージとなる可能性もあるのです。
 世界のメディアが殺到するオリンピックでは情報操作が難しいため。中国が今まで表に出さなかった国の実情が露わになると思います。小さな記事、そして映像も見逃すことは出来ません。
 
 大気汚染や政情不安を嫌って、我が国で30カ国近いオリンピックチームが合宿をしています。各県持ち回りの国体があるために、驚いたことに各県に立派な、国際的に通用するスポーツ施設が整備されており、尚且つ北京と時差が1時間である地政学的な位置で我が国が注目を浴びたのです。一般市民とオリンピック選手が、超近代的な市民プールでコースロープを隔てて泳ぐ姿をTVで見てびっくりしました。日本のインフラは凄い。戦後、営営と建物と道路港湾に投資し続けたことはあります。後はそれをどうやって活用するかでしょう。もう建物は止めて、ソフトやそれをプロデュースする人材に投資する時代なのです。
 
 さてバイオです。
 
 先週の末に神戸で日本臨床分子医学会を取材しておりましたら、「君が良いと言っていた、Aβのワクチンは確かにアルツハイマー患者のβアミロイドの蓄積は減少させるが、痴呆の改善や寿命の延長とは無関係だという論文が今週のLancetに出ていたぞ」と自治医大の高久学長から指摘を受けました。ご丁寧にメールで論文までお送りいただき、ひたすら恐縮しています。
 
 確かに、アイルランドのElan社と米Wyeth社がアルツハイマー病患者の脳に蓄積し、神経に毒性を示すAβ42ペプチドを抗原として、アルツハイマー病の治療用ワクチン(AN1792)の臨床試験を行っておりました。しかし、フェーズII臨床試験の段階で、6%の患者でT細胞性の脳炎が発症、2003年に臨床試験は中断されました。今回の論文は、生存者80人を対象に2003年6月から2006年9月までフォローアップした結果を解析したものでした。
 
 フォローアップの中間解析では、不幸にも死亡した患者の解剖の結果、脳内にはβアミロイドの蓄積が完全に無くなっていた。また、生存者の認知機能が、血中のAβに対する抗体価が高いほど改善した、といった極めて良好な報告が相次いでいました。
 
 その結果、「Aβワクチンの臨床効果に関しては証明(Proof of Concept)が得られた」と世界の製薬企業が殺到することになったのです。臨床試験で一度挫折したElan社・Wyeth社も、Aβに対する抗体医薬のフェーズIIIに着手していることに加えて、T細胞性脳炎を引き起こさないワクチンの開発にも着手しています。スイスNovartis社は既にAβ42ペプチドのN末9つのアミノ酸ペプチドがB細胞だけを刺激する抗原決定部位であることを突き止め、現在、スウェーデンでフェーズII臨床試験に着手していました。
 
 受動的(抗体医薬)、もしくは能動的(ワクチン)な免疫によって、アルツハイマー病の患者の脳内に蓄積しているβアミロイドの量を減らせば、この病気は治療可能だという楽観的確信を私も含め、みんなが持っていたのです。 
 本当にこれが臨床試験の難しいところです。
 
 2006年9月までのAN1792のフォローアップ調査を解析した結果、確かにアルツハイマー病患者のβアミロイドの蓄積量はワクチン投与群で、2.5分の1に減少していました。免疫によってβアミロイドの蓄積量が減ることは事実でした。
 
 しかし、悲劇だったことは、寿命延長や痴呆の進行抑止には、βアミロイドの蓄積量とは無関係であったのです。「POCが取れた」と思ったのは、今回の結果に限って言えば、早合点だったということになります。詳細は下記の論文をアクセス願います。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673608610752/abstract 
 
 実はこの論文のコメントをいただくために、国内の研究者に連絡を取ったところ、主要な研究社は米アルツハイマー協会が主催する国際シンポに参加中でありました。一体この論文を受けて、どんな議論がChicagoで巻き起こっているのか、興味津々です。続報いたします。 
http://www.alz.org/icad/about_icad.asp 
 
 まだ夏の入り口です。しかし、もうばてばてです。
 
 運動がアルツハイマー病の進展を抑止するという論文もありますが、今はお勧めいたしません。
 
 皆さん、どうぞご自愛願います。
 
          Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
PS 
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 10月に横浜で開催する我が国最大のバイオ展示会・シンポジウム「BioJapan2008」のマッチングシステムを稼動させました。狙いは個人情報を保護しながら、当然主催者にも個人情報はタッチできません、共同研究やライセンス、ひょっとしたら就職(企業や大学の研究室)の相談まで、国内外のバイオ関係者を結びつけることです。これによって、皆さんや皆さんの企業が新しい出会いを確保し、技術革新や個人的な幸せを実現することが目的です。
 
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 マッチングシステムそのものの概要は下記の記事を参照願います。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2008070156623 
 
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●出展企業募集
 1)バイオクラスター(ほぼ国内外の主要なクラスターが出揃います)
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 3)バイオベンチャー、医薬ベンチャー、環境関連ベンチャー(日本のバイオベンチャーは勢揃いします)
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 詳細は、 http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/exhibitorsite/index.html をアクセス願います。  問い合わせメールアドレスはbio08@nikkeibp.co.jpです。
 
 今なら、何とか、出展場所を確保できることが可能です。どうぞ連絡をお急ぎ願います。
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2008-07-23
BTJブログWmの憂鬱08年07月23日、質の高い遺伝子検査とは何か?
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4718/
 
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2008-07-22
BTJブログWmの憂鬱08年07月22日、胸を打つ、鎌谷教授の言葉
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4691/
 
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構造生物学・結晶構造解析技術を特集リポート、
6月成立の研究開発強化法で議員インタビュー
自然に恵まれたニュージーランドのバイオを現地リポート
BTJジャーナル08年7月号を発行・公開
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp 
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 バイオ研究者のキャリアアップ/スキルアップにお役立ていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」の08年7月号を、先週末に発行・公開しました。
 
 特集リポートは「構造生物学・結晶構造解析技術」。結晶化せずに解析できる次世代放射光の登場も期待を集めています。
 
 「大学は今」連載の第7回は、議員立法で6月に成立した研究開発強化法。中心となった議員2人へのインタビュー記事も掲載しています。
 
 もう1つ、自然に恵まれたニュージーランドのバイオを現地リポートした記事も、お楽しみください。51点の写真を6ページに渡って掲載しています。
 
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
それでは最後に08年7月号(第31号)の目次を紹介します。
 
2 連載「大学は今」第7回
研究開発強化法
鈴木寛・参議院議員
林芳正・参議院議員

5 特集リポート
進展する結晶構造解析技術
高エネルギー加速器研究機構(KEK)
理化学研究所播磨研究所

10 海外現地リポート
ニュージーランドのバイオ・健康素材

16 BTJアカデミック・ランキング
中村祐輔・東大教授
鎌谷直之・前女子医大所長

17 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
中国産ウナギ偽装事件

 ぜひ「BTJジャーナル」をダウンロードして、お楽しみください。パソコンでご覧いただくと、リンク先の情報もすぐに入手できます。プリントアウトをお読みいただくなら、カラーをお勧めします。

 BTJジャーナルは、オープンアクセス時代に対応した新タイプのジャーナルです。研究や教育、日常生活にご活用いただければ幸いです。
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                           BTJ編集長 河田孝雄