こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 
 先週後半、都内で開かれた首都圏バイオベンチャーネットワークの研修会と、バイオフロンティアパートナーズと弊社でやっているバイオファイナンスギルドに出席する機会があり、ベンチャー関連の方々と意見交換する機会があったので、それに関する話題を書きます。
 まず、イノベーション創造機構の話。先々週のこのメールでも少し紹介しましたが、閣議決定した「経済財政改革の基本方針2008」(骨太の方針2008)の中に盛り込まれ、いわゆる Fund of Fundsの役割を果たすものとして設立される方向です。資金調達難にあえぐバイオベンチャーにとっては、まさに救世主的な存在になるかもしれませんが、そうぬか喜びできるものではなさそうです。 
 そもそもこの機構は、バイオ分野のみを対称にしているものではありません。民間と合わせて2000億円って井戸とされる資金のうち、どの程度がバイオ分野に回されるかは、よく分かりません。 
 次に、これも以前書きましたが、制度化する前に立法措置が必要で、機構が発足するのはほぼ1年後、実際にベンチャー企業に資金が投じられるようになるのはもっと先と見られ、今、既に窮状に陥っているベンチャーにとっては救いとならない可能性があります。 
 もう1つは、民間資金とのマッチングファンド方式で、「民間から10億円集めてくれば、10億円出す」という形で運用される模様です。つまり民間から一定額の資金を調達できるベンチャーでなければ、公的資金を獲得することができません。ところが昨今の話を聞くと、「中核になろうというベンチャーキャピタルがおらず、VC同士が様子を見合っているうちに、流れていった案件が幾つかある」とのこと。果たして、ベンチャーキャピタルなどから一定額の資金を集め、公的資金の恩恵を受けられるベンチャー企業は、ごく少ない数に限られそうです。 
 問題は、今、既に青息吐息の状態にあるバイオベンチャーがどうすればいいのかです。バイオインダストリー協会が事務局を務める首都圏バイオネットワークが、業務提携や合併などを通じて企業再生を検討する懇談会を発足させたことは以前にもこの欄に書きました。 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4237/ 
 
 先週の首都圏バイオネットワークの研修会では、野村リサーチ・アンド・アドバイザリーの辻本研二シニアマネージャーは、「悪環境で株式上場して資金調達を行うのは、資金の受け手にも出し手にもリスクを伴う」として、株式発行を伴わない「Alternative Financing」という資金調達方法を提案していました(この話は後ほど、日経バイオテク・オンラインで紹介する予定です)。辻本シニアマネジャーの提案は、株式上場による資金調達を検討している企業を対象にしたものですが、いずれにせよ資金調達がこれだけ厳しい状況だからこそ、経営者の経営能力が問われているのは確かです。 
 株式市場に目を向けると、国内にマザーズ、ヘラクレス、NEOと、バイオベンチャーが上場を狙える市場自体は多様化しています。現在、東京証券取引所がロンドン証券取引所と合弁企業を設立し、機関投資家や一定以上の資産を持つ富裕層に限定した新興企業向け市場をスタートする方向で検討が進められているとも聞きました。情報開示の頻度などが少なくなる半面、英語での情報開示が求められることになるようですが、欧米に開発拠点を有するバイオベンチャーが少なくないことを考えれば、バイオベンチャーにとってはさらに選択肢が増えることにもなりそうです。 
 現在、多くのバイオベンチャーが資金調達に苦しんでおり、一気に環境が好転するような状況にないのは確かです。しかし、この状況を認識して、さまざまな関係者が対策を講じているのも事実です。公的支援などに大きく期待しすぎるのも問題はありますが、こうした時期こそ経営者として手腕を発揮する機会であり、前向きにこの難局を乗り切ってもらいたいものです。 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
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 文部科学省の科学技術政策研究所がこの6月にとりまとめ発表した「サイエンスマップ2006」の詳細を、掲載しています。
 
 下記のようにBTJアカデミックでも先に報道した成果ですが、BTJジャーナルの記事はどなたでも、記事全文をご覧いただけます。
 
文科省・科学技術政策研究所が「サイエンスマップ2006」取りまとめ、臨床医学研究と植物科学研究がポストゲノムでつながる
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 以下に6月号の内容を、目次にて紹介します。
 
2 連載「大学は今」第6回
iPS支援体制整備は試金石
松本 紘・京大副学長(次期総長)

4 特集リポート
エピジェネティクス最前線
豊田 実・札幌医科大学医学部教授
伊藤隆司・東大大学院新領域教授

10 連載「いいともバイオインフォマティスト」
 第3回 川路英哉・理研オミックス研究員

12 BTJアカデミック・ランキング
研究開発強化法が成立

13 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
GM栽培目指す北海道生産者

14 「サイエンスマップ2006」
 科学技術政策研究所(NISTEP)

17 広告索引

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                           BTJ編集長 河田孝雄