こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。昨日は日経バイオテク本誌の校了日でしたが、合い間を見て厚生労働省の委員会の傍聴に行ってまいりました。
 委員会は「審議参加に関する遵守事項の評価・検討委員会」といって、名称だけでは何をするのか少し分かりにくいのですが、要するに、08年3月24日にまとめられた薬事・食品衛生審議会薬事分科買い申し合わせ「審議参加に関する遵守事項」という、薬食審の薬事分科会や部会の委員や参考人などが順守しなければならない利益相反のガイドラインに関して、その運用状況の評価や内容の検証と、3月24日の申し合わせを検討した際に残された課題を検討するために召集されたものです。
 
 ご存知の通り、厚生労働省は利益相反に関して「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針 」というものを策定していますが、昨年、インフルエンザ治療薬のタミフルに関して、厚労省の研究班の主任研究者らがタミフルを販売する中外製薬から奨学寄附金を受け取っていたことが判明したことを受けて、医薬品の承認などにかかわる「薬食審」の薬事分科会や部会の委員に関しては別立てのルールが作られた経緯があります。
 
 しかし、委員会の傍聴をしていて、いろいろと考えさせられるところがありました。1つは、国立国際医療センターの桐野高明総長が指摘していましたが、重要なのは透明性を高めることであって、幾ら以上もらっていると議決に加わってはいけないとか、意見を言うこともできなくなるといったルールを設けるべきではないと思います。専門家の数は限られているわけですから、情報開示によってバイアスがかかっている可能性があることを明らかにし、衆人環視の状態にした上で、中立的な意見を求めることがポイントではないかと思います。
 
 もう1つは、いみじくも厚労省審査管理課の中垣課長が語っていましたが、歴史的な経緯の中で、薬食審の役割は変化しているのに、形式だけを見て作られたルールにどれだけ意味があるのか、ということです。中垣課長が語るに、「医薬品医療機器総合機構(PMDA)ができる以前の、厚労省の中で、20人、30人で新薬の審査を行っていた時代には、薬食審の薬事分科会や部会の役割は外部の知恵を借りるというものだった。それがPMDAができて、200人、300人の審査官がいる上、PMDA自体が専門協議によって外部の専門家の意見を聞くようになり、一定のことはできるようになった。その中で、(PMDAでの審査の後に諮られる薬食審の分科会、部会の役割は)専門性を持ちながら、大きな目で誤りがないかを検証することだろうか」とのこと。要するに、審査の仕組みが変化する中で、薬食審の委員だけを対象に利益相反のルールを設けていていいのか、という問題があります。
 
 このことに関連して、全国薬害被害者団体連絡協議会の花井委員が、「PMDAでも外部委員の利益相反のことを検討しているが、PMDAでは利益相反しない専門家を探すのが大変だと聞く」と話していました。現実にその医薬品のことをよく知る専門家は、何らかの形でその医薬品の研究開発にタッチしているケースは多いわけで、利益相反の回避のことばかりを考えていると、本当の専門家から意見を聞けないという事態が生じかねません。利益相反に関しては、闇雲に専門家を排除するのではなく、どうやって専門家を活用するかという発想で考えるべきだと思います。PMDAでの利益相反に関しては、次回以降の委員会で説明があるそうなので、その際に詳細は紹介できるかと思います。
 
 また、薬食審の役割については、実は厚労省の別の委員会でも議論されています。結局7月7日の委員会で結論めいたことは決まらなかったようですが、今後、薬食審の役割の見直しや、その廃止を含め、薬事承認の仕組みについては、より議論が深められていくことでしょう。薬事制度の動向については注視していきます。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4138/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4360/
 
 薬事に関連する話題で、最後に少しだけ宣伝をしておきます。日本では医薬品の承認審査のガイドラインなどが未整備であるために、ある意味で承認審査がノウハウ化されてしまっており、大きな製薬企業ではさほど問題がないかもしれませんが、ベンチャー企業などが不利益を被る形になっているという問題を、これまで何度か指摘してきました。これに対して、PMDAはベンチャーに対する事前相談などを充実させる方針ですが、その一方で、やはり承認審査のような事項をノウハウにしてしまっていていいのかと思います。
 
 そこで、PMDAの審査官OBの方々に協力をお願いし、PMDAが公表した医薬品の審査報告書を読み解いていただき、承認審査のポイントなどを解説していただくという連載記事を、日経バイオテク本誌7月28日号から2号に一度掲載することにいたしました。製薬企業やベンチャーで医薬品の開発や、薬事にかかわる方はもちろん、トランスレーショナルリサーチなどにかかわる研究者にとっても極めて重要な連載記事を提供できると考えています。この機会にぜひ、日経バイオテクの購読を検討いただければ幸いです。
 
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html 
 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
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 以下に6月号の内容を、目次にて紹介します。
 
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松本 紘・京大副学長(次期総長)

4 特集リポート
エピジェネティクス最前線
豊田 実・札幌医科大学医学部教授
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10 連載「いいともバイオインフォマティスト」
 第3回 川路英哉・理研オミックス研究員

12 BTJアカデミック・ランキング
研究開発強化法が成立

13 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
GM栽培目指す北海道生産者

14 「サイエンスマップ2006」
 科学技術政策研究所(NISTEP)

17 広告索引

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                           BTJ編集長 河田孝雄