こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。ここ数日の間に、バイオベンチャーに関連して幾つか動きがありました。
 1つは27日に閣議決定した「経済財政改革の基本方針2008」(骨太の方針2008)の中に、新たなビジネスモデルを創造する仕組みとして「イノベーション創造機構」(仮称)を創設するということが盛り込まれています。詳細は日経バイオテク・オンラインの記事をご覧いただきたいですが、かいつまんで言うと、バイオや環境、半導体などの研究開発型ベンチャーに対して、公的資金を供給する仕組みを作ろうというものです。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4167/ 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4126/ 
 
 もっとも、これですぐに資金調達難から青息吐息のバイオベンチャーが一息つけるようになるかというと疑問です。というのは、公的資金を投資できるようにするためには立法措置が必要で、法律ができ、実際にファンドなどが立ち上がって、ベンチャー企業に資金が回り始めるようになるのは2010年度になると見られるからです。
 
 現実に目を向けると、これまでと同じ支出を続ければ、手持ちの資金はあと数カ月でなくなるという状態のバイオベンチャーは少なくありません。開発が順調に進んでいたはずのところからも、「全く資金が得られなくなって、次の試験のめどが立たない」という声が聞こえてきます。それらの企業は、国が支援体制を整える2年後までは恐らく待っていられない状況のはずです。
 
 そんな危機感から、バイオインダストリー協会が事務局を務める首都圏バイオネットワークは、バイオベンチャー企業同士が業務提携や合併などを通じて企業の魅力を高め、企業再生につなげる方策を議論する懇談会を発足させました。「会の趣旨に賛同するバイオベンチャーに、より多く参加してもらいたい」(事務局)ということなので、興味がある企業はぜひ懇談会の事務局に連絡してみてください。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4237/ 
 
 昨日、米Eli Lilly社のSidney Taurel会長が東大山上会館で行った講演を聞きに行ってきました。これも日経バイオテク・オンラインの記事にしたのでそちらでお読みいただきたいですが、要するに旧来の製薬企業は、資金調達から研究、開発、製造、販売のほぼすべてを自社でやってきた(これをFIPCOモデルというそうです)けれど、今やグローバルレベルで外部の人材や組織を開発する方向を目指すべきという趣旨の講演でした。特に、中国やインドには優秀な人材が豊富おり、そこへ海外からの帰国者が製薬企業の経験を持ち込んだ結果、パートナーとなる企業が育ちつつある状況のようです。それらパートナー企業は、単なるアウトソーシング先となるばかりでなく、リスクを共有して製薬企業の持つ化合物のインキュベーターの役割を負うなど、さまざまな形でのネットワーク化が試みられています。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4273/ 
 
 つまり、製薬産業では今、さまざまなタイプのアウトソーシング企業やバイオベンチャー、投資ファンドなどをネットワーク化し、事業をより効率化する試みが進められているわけです。そうであれば、バイオベンチャーはそのネットワークの中で自分たちの役割を見つけ、歯車の1つとなって機能を発揮していくことも生きる道ではないでしょうか。ネットワークの中に組み込まれてしまうと、将来、製薬企業になるようなビジョンを描きにくくなってしまうかもしれませんが、まずはネットワーク化の中で自分たちの役割を見つけ出していくことが重要でしょう。
 
 一方で、製薬企業には中国やインドにばかり目を向けず、足下にある日本のバイオベンチャーをネットワークに取り込んで活用していくことを考えてもらいたいと思いました。
 
                      日経バイオテク編集長 橋本宗明
  
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https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
 
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BTJジャーナル08年6月号を発行・公開
隔月連載「いいともバイオインフォマティスト」第3回は、
理研オミックスの川路英哉工学博士が登場
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「BTJアカデミック」はこちらから
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 バイオ研究者のキャリアアップ/スキルアップにお役立ていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」の08年6月号を発行・公開しました。
 隔月連載「いいともバイオインフォマティスト」第3回には、川路英哉・理化学研究所オミックス基盤研究領域LSA情報基盤チーム研究員に登場していただきました。2008年4月に発足したオミックス基盤研究領域は、林崎良英氏が領域長を務めています。LSAは、ライフサイエンスアクセラレーターの頭文字です。
※BTJアカデミックの記事はこちらから
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?jreq=btjnews&id=20054269 
 
※BTJ・日経バイオテクオンラインの記事はこちらから
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4269/ 
 
 大量のデータが出てくると、見過ごしてしまうデータもたくさん出てきてしまいますが、このようなデータも丹念に見ていくと、新たな発見の手掛かりになることがあります。「既知のファンクションだけを過程していると説明のつかない現象が潜んでいる可能性が多分にある」と、川路さんにお話しをうかがいました。
 今年4月には、既によく知られている転移RNA(transfer RNA)が、今まで知られていなかった断片として細胞内に存在することを示す研究を、第一著者として論文発表なさいました(「Hidden layers of human small RNAs.」BMC Genomics. 2008 Apr 10;9:157)。インフォマティストの立場から検証実験を議論し、実験的な根拠をも示す論文として仕上げたものです。
 omics時代に産出される膨大なデータの中から、経験と勘を働かせ、意味のありそうなデータを見つけ出す。必要に応じて仮説の検証に必要なウェット実験も提案する。国際FANTOMコンソーシアム(関連記事3)のデータ解析に長く関わってきた川路氏の活躍の場はますます広がっていきそうです。
 
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 BTJジャーナル08年6月号の記事をご覧ください。
 
 以下に6月号の内容を、目次にて紹介します。
 
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それでは最後に08年6月号(第30号)の目次を紹介します。
 
2 連載「大学は今」第6回
iPS支援体制整備は試金石
松本 紘・京大副学長(次期総長)

4 特集リポート
エピジェネティクス最前線
豊田 実・札幌医科大学医学部教授
伊藤隆司・東大大学院新領域教授

10 連載「いいともバイオインフォマティスト」
 第3回 川路英哉・理研オミックス研究員

12 BTJアカデミック・ランキング
研究開発強化法が成立

13 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
GM栽培目指す北海道生産者

14 「サイエンスマップ2006」
 科学技術政策研究所(NISTEP)

17 広告索引

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 BTJジャーナルは、オープンアクセス時代に対応した新タイプのジャーナルです。研究や教育、日常生活にご活用いただければ幸いです。
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                           BTJ編集長 河田孝雄