こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 
 BIO2008の取材で米国に来たついでに、カナダはバンクーバーのバイオ産業を取材させてもらうことになり、バンクーバーのダウンタウンのホテルでこのメールを書いています。バンクーバーは実に思い出深い町で、20年以上前に初めて訪れた北米の都市がバンクーバーでした。その後、90年代後半に一度取材で来ましたが、ほぼ10年ぶりに訪れたバンクーバーは全面ガラス張りの高層マンションが文字通り林立し、未来都市のような雰囲気をかもし出していました。
 バンクーバーでは、幾つかのベンチャー企業から話を聞く機会がありました。また、BIO2008の会場でも、バイオベンチャーなどに個別に話を聞く機会がありました。何社かと話をしていて意外だったのは、日本に比べて欧米は投資マネーが潤沢だといわれているものの、当のベンチャー企業は口をそろえて「資金調達は簡単ではない」と言っていたことです。
 
 とりわけカナダは資源が豊富なため経済的には好調で、今やカナダドルと米ドルのレートはほぼ同じぐらいになっています。ですが、トロントの株式市場に上場しているあるベンチャー企業は、「資源や不動産の価格が上昇しているため、投資マネーはそちらに向かい、バイオベンチャーの株価は下落している。だからNASDAQに上場したい」と話していました。
 
 しかし、NASDAQに上場する企業の株価が堅調かというとそうではなく、やはり下落傾向にあるようです。「サブプライム問題をきっかけに、資金は安全な投資先に向かうようになった。バイオはリスクが高いと考えられて、全体的に株価が下落している」「これまでなら、臨床試験でこういうデータが出ればFDAはこう判断するという見通しがついたが、FDAの判断が予測できなくなったために投資家がバイオから逃げていった」などと指摘する声がありました。
 
 ちなみに、FDAの問題を指摘したベンチャー経営者は、「FDAが安全性を重視するようになったというよりも、審査員が足りないために審査がいつ終わるかのめどがつかないところに問題がある」と、日本で言われているのと同じような問題を指摘した上で、「FDAに嫌われたくないので、こんなことを私が言っていたとは書かないでほしい」と付け加えていたのが印象的でした。
 
 ただ、その一方で、欧米製薬企業は有力な医薬品の特許切れを控え、鵜の目鷹の目でバイオベンチャーを買いに行っているようです。この結果、買われそうなプロジェクトを有するバイオベンチャーには資金が集まり、バイオベンチャーの二極化が進んでいるという解説もありました。取材した中には、まさにリストラの真っ最中という会社もあり、ファンドマネーが潤沢にあるといわれている欧米でも、バイオベンチャーの経営は決して楽ではないと思い至った次第です。
 
 それからもう1つ、バンクーバー州政府のバイオ施策や、創薬研究、トランスレーショナルリサーチの支援政策の話を聞いて痛感したのは、官の支援が非常に手厚いということです。税制優遇だけでなく、資金援助や、臨床試験のサポートなどが実に充実していました。日本でもバイオ産業を育成するためには、今以上に支援を充実される必要があると感じました。
 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
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 最終回のテーマは、全ゲノムワイド関連研究(GWAS)、21世紀の新しい遺伝学です。網羅的な解析で大量に生み出される情報から、有用な結論をいかに引き出すか。
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08年5月号(第28号)の概要を目次にて紹介します。
 
2 連載「大学は今」第5回
イメージングで免疫の全貌把握
審良静男・阪大IFReC拠点長

5 特集リポート
トランスフェクション
三宅淳・AIST部門長・東大招聘教授
三宅正人・AISTグループ長

10 BTJアカデミック・ランキング
 iPS記事がトップ3を独占

11 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
 食品検査は是か否か

13 連載「サイコムキャリアプロジェクト」
 第4回 オンリーワンの自分を売り込め

16 連載「遺伝統計学へようこそ!」第15回
 現実的な全ゲノム関連研究を目指し

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                            BTJ編集長 河田孝雄