毎週金曜日のメールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田です。
 
 今週は5月25-27日に京王プラザホテル札幌で開催された日本分子生物学会(MBSJ)第8回春季シンポジウムの話題をお届けします。
 この中でシンポジウム「躍動する分子生物学─北の大地から─」が2日間に渡って開かれ、極性/運動、発生/再生、細胞死、癌、細胞周期、生体防御、神経、の7つのCutting Edgeについてそれぞれ2名の方が講演しました。講演会場を1つに限定していたので、この7分野とも、講演をうかがうことができました。
 「最先端の生命科学研究を網羅的に俯瞰できるこのようなシンポジウムは多くの研究者の皆様にとりましてもきわめて稀な機会であると思います。研究分野がどれほど再分化されようとも、異分野を納得させる優れた研究には共通するロジックや広く提要可能がアプローチ法が存分に満ち溢れています。世界をリードする研究とは何なのか、他の研究とは質的にどこが異なるのか、自分の研究にどのように還元できるのか、最先端の研究成果と活気ある議論が展開される中で、参加者の皆様ひとりひとりが是非その答えをさがしてみていただきたいと思います」と、今回の春季シンポジウムの世話人とおつとめになられた北海道大学遺伝子病制御研究所・分子腫瘍分野の畠山昌則さんは、要旨集・予稿集の巻頭で述べていますが、まさにこの目的を達成したイベントでした。参加料は無料とのことで。とても充実した、かつ、お徳なシンポジウムと思いました。
 年末に開かれるMBSJの年会は、参加者数が1万人規模で、情報のるつぼにいると実感するのにはいいのですが、ごく一部しか見聞できません。今回の春季シンポは、参加者は300数十人くらいとのことで、特に人気の高い講演では立ち見がかなり目立ちましたが、ある意味、理想的な規模ともいえます。
 
 MBSJの春季シンポは来年は宮崎で開催されるとのことです。
※BTJアカデミックの春季シンポの記事
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?a1=1&jreq=btjnews&id=20053343 
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?a1=1&jreq=btjnews&id=20053305 
 
 Cutting Edge7分野の計14件の講演は、圧巻な内容の発表ばかりで、お伝えしたいこと、お伝えすべきことがたくさんあるのですが、今日はまず、Cutting Edgeの講演ではなく、27日の特別講演の話題からお届けします。
 
 「インフルエンザウイルス遺伝子の起源と進化」という演題の喜田宏(きだ・ひろし)北海道大学大学院獣医学研究科人獣共通感染症リサーチセンター長の特別講演です。たいへんなインパクトのある内容でした。NHKのクルーも取材に来ていたので、報道をご覧になった方もいるのではないでしょうか。
 
 日ごろ、高病原性鳥インフルエンザから発生する新型インフルエンザウイルスでパンデミックが起こるまで、導火線が確実に短くなている旨の講演を、国立感染症研究所の方々などからうかがっている当方の認識が、大きくくつがえされるものでした。
 
※インフルエンザの対策を誤らせる迷信
1.インフルエンザの疫学研究モデルにウシの口蹄疫を用いた。
2.インフルエンザは根絶できる。
3.ワクチン接種の目的は、感染を防ぐため。
4.H3N2ウイルスがヒトの間で40年間維持されているので、そろそろ新型ウイルスが出現する時期に来ている。
5.H5N1ウイルスのみが次のヒトの新型ウイルスである。
6.H5N1ウイルスが変異して ヒト─ヒト感染を起こすのは秒読み段階。
7.鳥に感染を繰り返す間に ヒト─ヒト感染を起こすウイルスに変異する。
8.高病原性鳥インフルエンザは、殺人ウイルスである。
9.新型インフルエンザウイルス対策は毎年の(季節性)インフルエンザ対策とは別に執る。
10.新型インフルエンザウイルスは病原性が強い。
 
 上記は、喜田センター長がお示しになったスライドの1つの内容です。
 
「『新型』というのは、初めてはやったときだけ『新型』なので、おかしな呼び名だが国会を通ってしまった」
「カモはインフルエンザウイルス遺伝子の供給源と定義した」
「1992年、93年、94年に、カモのうんち拾いツアーをアラスカで行った」
「犠牲者は230人を超えたが、レセプターが特異な人と考えている」
「ワクチンの乱用は、目に見えないウイルスの拡散を導く」
「摘発・淘汰を基本とすべきところ、ワクチンのみにして摘発・淘汰をやめてしまった。利益追求するワクチンメーカーのために、世界中にウイルスを広めてしまった。たいへんな矛盾」
「こんなにウイルスが広がると、北の氷に保存されるようになると大変。まだ北の氷の中には存続していないようだ」
 
「カモがすべての起源」で、
カモ→ガチョウなど→ニワトリ
カモ→ガチョウなど→ブタ→ヒト
とガチョウなど以降から2つに分かれるとのことです。
 
「特にブタの疫学調査が大事。国際的にやらねば。中国は立ち上がった」
 
 以上では説明不足で申し訳ありませんが、喜田センター長の講演をうかがい、高病原性鳥インフルエンザの蔓延を防ぐために有効と思われる鳥インフルエンザ・ワクチンが、なぜ、日本でなかなか認められないのか、その理由・エビデンスの一端がよく分かったような気がします。
 
 メール原稿の締め切り時間となりましたので、今回はここまでとさせていただきます。
 
■BTJアカデミック・記事アクセス・トップ3(08年5月23日-5月30日)
【1位】MITのBroad研究所など、脱メチル化と特定の転写因子抑制がiPS細胞作製効率を高める
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?a1=1&jreq=btjnews&id=20053413 
 
【2位】わが国のベンチャーキャピタルが、ホワイトバイオに本格投資、欧米を追いバイオに新しい息吹
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?a1=1&jreq=btjnews&id=20053402

【3位】慶大発ベンチャー、シグナル・クリエーション、アステラスから臨床フェーズIIaまで進んだ医薬候補を導入
http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp?a1=1&jreq=btjnews&id=20053306

 最後に、5月末に発行・公開した「BTJジャーナル」08年5月号(第29号)の目次を紹介します。

「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn

2 連載「大学は今」第5回
イメージングで免疫の全貌把握
審良静男・阪大IFReC拠点長

5 特集リポート
トランスフェクション
三宅淳・AIST部門長・東大招聘教授
三宅正人・AISTグループ長

10 BTJアカデミック・ランキング
 iPS記事がトップ3を独占

11 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
 食品検査は是か否か

13 連載「サイコムキャリアプロジェクト」
 第4回 オンリーワンの自分を売り込め

16 連載「遺伝統計学へようこそ!」第15回
 現実的な全ゲノム関連研究を目指し

21 広告索引

 ぜひ「BTJジャーナル」をダウンロードして、お読みください。パソコンでご覧いただくと、リンク先の情報もすぐに入手できます。プリントアウトをお読みいただくなら、カラーをお勧めします。

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                           BTJ編集長 河田孝雄