昨日、武田薬品工業が米Alnylam社との間で、がん領域と代謝性疾患領域を対象に、RNA医薬の開発に必要なプラットフォーム技術に関する非独占的ライセンスならびにこれに基づく共同研究にかかる契約を締結したと発表しました。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3340/ 
 契約に伴い、武田薬品は一時金として1億ドル、技術移転料として総額5000万米ドル、対象とする疾患領域の追加に際して5000万米ドル/一領域を支払うほか、ターゲットごとに1億7100万ドルを上限とする研究開発の進捗および販売額に基づくマイルストン、ならびに販売ロイヤルティを支払うとのことです。
 
 国内大手製薬企業によるバイオベンチャーの買収、提携で、ここしばらくの間目立っていたのは抗体分野に関してです。
 
 5月21日、第一三共はドイツのU3 Pharma社の全株式を1億5000万ユーロ(約245億円)で買収し完全子会社化すると発表しました。U3社は前臨床段階に4つの抗体医薬候補を有し、うち1つは08年中に、もう1つは09年中にフェーズIを開始する計画です。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3177/ 
 
 第一三共は、現在、抗RANKL抗体であるデノスマブ、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)抗体DE-766(ニモツズマブ)、ヒト化抗DR5抗体CS-1008の3つの抗体医薬の臨床開発を進めており、U3社を買収することは抗体医薬のパイプラインの補強につながります。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/2967/ 
 
 07年3月にはエーザイが3億2500万ドルで米Morphotek社を買収し、07年11月にはアステラス製薬が3億8700万ドルを投じて米抗体ベンチャーのAgensys社を買収しました。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/2812/ 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/8750/ 
 
 また、企業買収ではありませんが、07年11月に武田薬品工業が米国に抗体医薬の研究拠点となるTakeda San Francisco(TSF)社を設立しています。
 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/8576/ 
 
 少し前までは国内大手は抗体医薬に関心が薄く、中外製薬、協和発酵工業、キリンビールの3社が御三家と呼ばれていました。ところが、今や、国内大手は一様に抗体医薬に注力しています。ただ、抗体だけでなく、低分子はもちろん、ペプチドやRNA医薬、細胞医薬、ワクチンなどの分野も今後、重要になってくると思われます。そんなわけで、「国内大手がそろって抗体に投資をシフトしているが、落とし穴はないのか」という趣旨の原稿を、たまたま6月2日発行の日経バイオテクのFrom Editor欄に書きました。すると、それを見透かしたかのように、RNA医薬の分野での契約を武田薬品が発表したわけです。
 
 RNAは皆様もご存知の通り、生体内ですぐに分解されるために、RNA医薬の開発ではどうやって患部に送り届けるかが大きな課題です。今回の契約では、武田薬品はAlnylum社とDDS(薬物送達システム)技術についてもクロスライセンスしています。
 
 武田薬品は、これまでのゲノム創薬の成果として同定した標的遺伝子を基にRNA医薬を開発すると見られます。このところ、研究開発に関してジャパン・パッシング的な動きが相次いでいましたが、国内大手がイノベーティブな研究領域への投資を本格化することで、日本企業のプレゼンスが高まることに期待したいと思います。
 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
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トランスフェクションを特集したBTJジャーナル08年5月号を発行・公開
AISTと東大、固相トランスフェクションアレイや顕微針の取り組みを紹介
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 バイオ研究者のキャリアアップ/スキルアップにお役立ていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」の08年5月号を、ただいま発行・公開しました。
 特集リポートは「トランスフェクション」。omics時代を迎え、遺伝子を培養細胞に導入して発現させるトランスフェクションの技術が改めて注目を浴びています。iPS細胞の樹立や初代培養細胞、臨床サンプル組織を利用した解析でも、効率の高いトランスフェクション法の活用が重要な鍵を握っています。
 トランスフェクションには従来からウイルスが多く利用されていますが、ウイルスを利用したトランスフェクションは、利用するウイルスの性質によって目的以外の影響が出る可能性があります。例えば遺伝子導入効率が高く、発現も安定しているレトロウイルスベクターを使用すると、レトロウイルスベクターのゲノム遺伝子の挿入によって、がんなどの副作用を誘発する懸念があります。
 このようなウイルス特有のリスクを回避するために、ウイルスを利用しないトランスフェクションのニーズが大きくなっています。今号のリポートでは、ハイスループットな固相トランスフェクションアレイや顕微針を用いた物理的な手法で成果を挙げる産業技術総合研究所(AIST)と東京大学の取り組みを紹介します。
 詳しくは、「BTJジャーナル」08年5月号P.5-9の記事をご覧ください。
 
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08年5月号(第28号)の概要を目次にて紹介します。
 
2 連載「大学は今」第5回
イメージングで免疫の全貌把握
審良静男・阪大IFReC拠点長

5 特集リポート
トランスフェクション
三宅淳・AIST部門長・東大招聘教授
三宅正人・AISTグループ長

10 BTJアカデミック・ランキング
 iPS記事がトップ3を独占

11 専門情報ウェブサイト「FoodScience」
 食品検査は是か否か

13 連載「サイコムキャリアプロジェクト」
 第4回 オンリーワンの自分を売り込め
16 連載「遺伝統計学へようこそ!」第15回
 現実的な全ゲノム関連研究を目指し
21 広告索引
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 BTJジャーナルは、オープンアクセス時代に対応した新タイプのジャーナルです。研究や教育、日常生活にご活用いただければ幸いです。
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                            BTJ編集長 河田孝雄