こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 
 今日は、昨日傍聴してきた輸血用血液製剤の不活化技術に関する厚生労働省の薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会・安全技術調査会の合同委員会の話を書きます。この委員会は、輸血用血液製剤に混入した細菌やウイルスなどの病原因子を不活化する技術の導入を検討しており、3月12日のBTJメールでもこの委員会の話を報告しました。
 今回の委員会は、不活化技術を有するメーカーからのヒアリングなので非公開で開催するという話だったのですが、前半部分が公開で、信州大学医学部付属病院先端細胞治療センターの下平滋隆副センター長を参考人に招いてヒアリングが行われました。ちなみに、傍聴席には参議院の予算委員会で舛添要一厚生労働大臣に質問を行い、不活化技術の導入議論に火をつけた田中康夫議員の姿もありました。国会議員も委員会の傍聴に来るのかと、少し感心した次第です。
 
 下平副センター長の話の詳細は、後ほど日経バイオテク・オンラインで記事にしますが、07年3月にトロントで開催された病原不活化技術に関するコンセンサス会議の内容を紹介しつつ、「輸血血液安全監視体制(ヘモビジランス)の構築を前提に、不活化技術導入について早期に結論を出す時期である」と提案されました。
 
 現在のNAT(核酸増幅検査)などを用いた安全対策がそれなりに効果は上げているとしても、検査すり抜けによる感染事故が発生しているのは確かです。一方で、その穴を補う不活化技術というものが登場し、世界各地で導入が進みつつあるというのであれば、その導入を前向きに検討すべきではないでしょうか。実際に導入するまでには、治験をやって有効性や安全性を評価しなければならないだろうから、なおさら早々に治験を開始し、評価に着手すべきでしょう。それでも、海外との間に技術導入の“タイムラグ”が生じるのは避けられません。
 
 下平副センター長の提案も、海外の状況などに基づき、不活化技術の導入を前向きに検討するよう求めたもので、至極まっとうだと思って聞いていたのですが、委員会の委員にはそうは聞こえなかったようです。もちろん、中には下平副センター長の提案に賛意を示す人もいましたが、全般的には提案に疑問を示す発言が目立ちました。それも、揚げ足を取るような質問が多く、ある委員が「不活化技術を推進するメーカーとの関係なく、ニュートラルな立場で発言しているのか」と質問した時には、傍聴席に失笑が起こりました。
 
 ある委員は、「NATの導入など、安全対策は進んでいるのに、なぜ今、不活化技術の導入を言うのか」と質問していました。確かに今、現時点で感染リスクはかなり抑えられているとしても、新型インフルエンザなどの新興感染症のことを考えれば、先手を打って技術を導入できるようにしておくのは重要だと思います。いずれにせよ、新しい技術の登場に対して、どのように使っていくのが有効かを検討するのがこの委員会の役割だと思っていたのですが、実態は「下平副センター長の提案を審査する会」とでもいった印象でした。恐らく傍聴席にいた多くの人が同じような印象を抱いたに違いありません。
 
 残念ながら後半の企業ヒアリングの部分は非公開で傍聴できなかったのですが、新しい技術の導入に、こうした委員会は果たして有効に機能していると言えるのでしょうか。今後、この委員会での議論がどのように展開していくか、しばらく注目してみたいと考えています。今日はこの辺で失礼します。
 
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
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糖鎖オールジャパンを特集、
BTJジャーナル08年3月号を発行・公開しました。
オールジャパン体制の構築に取り組んでいる理研の谷口直之・グループディレクターらと、AISTの成松久センター長らに話をうかがいました。
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp 
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 日本有数のバイオテクノロジー研究機関である理化学研究所と産業技術総合研究所(AIST)が共に、ここ半年で新たな組織を立ち上げた「糖鎖科学・糖鎖生物学」の特集記事を、BTJジャーナル08年3月号で5ページにわたり掲載しました。
 
 「米国は政策的な動きが非常に早い」と、この3月中旬に米NIHで開かれた糖鎖の会議にも参加した谷口直之・大阪大学微生物病研究所寄附研究部門教授は語ります。谷口教授は昨年10月、理化学研究所フロンティア研究システムにシステム糖鎖生物学研究グループを立ち上げ、糖鎖の技術をいろいろな分野に提供していく仕組み作りにも注力なさっています。
 
 「大学の先生は産業化をあまり意識していない。アカデミアの取り組みのもう一方の極として、産業中心のGLIT(糖鎖産業技術フォーラム)を立ち上げた」と、この3月中旬に米NIHで開かれた糖鎖の会議にも参加した成松久・AIST(産業技術総合研究所)糖鎖医工学研究センター・センター長は語ります。08年1月23日につくばで開かれたGLIT設立シンポジウムには、100社以上から210人が参加しました。さらに成松センター長らは、日本糖鎖科学統合データベースの構築も進めており、産業界とアカデミアの橋渡しにも積極的に取り組んでいます。
 
 詳しくは、「BTJジャーナル」08年3月号P.4-8の記事をご覧ください。
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「BTJジャーナル」08年3月号(第27号)の目次を紹介します。
 
2 連載「大学は今」第3回
進化迫られるテニュアトラック制

4 特集リポート
糖鎖オールジャパン体制
谷口直之・阪大教授・理研GD 
成松久・産総研センター長

9 BTJアカデミック・ランキング

10 専門情報サイト「FoodScience」

11 社告 日経BP技術賞

12 連載「サイコムキャリアプロジェクト」第2回
自分を「見える化」

16 連載「遺伝統計学へようこそ!」第13回
関連性を評価する方法

20 広告索引

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                           BTJ編集長 河田孝雄