厚生労働省が、厚生労働科学研究における利益相反の管理に関する指針を策定しました。対象となるのは、厚生労働省の研究費補助金を受けようとする研究者で、研究者は研究期間中、所属する研究機関(大学など)のCOI委員会に経済的な利益関係を毎年報告し、審査を受けなければなりません。経過措置として、「機関の長はできるだけ早期にCOI委員会を設置するように務めなければならない」とされていますが、2010年度以降の厚生労働科学研究費補助金の交付申請書提出前にCOI委員会が設置されず、外部のCOI委員会への委託がなされていない場合には、厚生労働科学研究費補助金の交付を受けることはできない」とされています。つまり2年以内に体制を整えることができなかった期間に所属する研究者は、厚生労働科研費が受けられなくなってしまうわけです。
 臨床研究における利益相反に関しては、06年3月に「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」を作っており、今回の厚労省の指針に対して「屋上屋を重ねるものだ」という批判もあります。しかし、文科省が利益相反ポリシーを策定した後も、実際に利益相反ポリシーを策定していた国立大学はわずかしかありませんでした。今回の厚労省の指針は、各大学に利益相反問題を認識させ、ポリシーの策定や委員会の設置を促すと言う意味では有効なものだと思います。
 
 利益相反に関する議論を聞いていて疑問に思うのは、企業から研究者が寄付金を受け取ることを害悪視する見方があることです。例えば、同じ厚労省でも薬事・食品衛生審議会では「審議参加に関する遵守事項」(案)として、企業から一定額以上の寄付金を受け取っている場合に「審議不参加」「議決不参加」といったルールを設けようとしています。そのため遵守事項(案)には、「大学や研究機関と民間企業との共同研究の実施や技術移転といった産学官連携の活動は国全体として推進されているもの」で、「寄付金などを受け取っていることをもって委員と企業との間に不適切な関係があるかのように誤解することのないよう既往する」とわざわざ書いてあるわけですが、今でも医師が製薬企業から寄付金を受けていることを問題視するようなマスコミ報道を見かけます。
 
 利益相反は、産学連携などを推進していく以上避けられないことであって、適切なルールの下に情報公開を進め、コントロールしていくというやり方が正しいはずです。薬食審の「審議不参加」「議決不参加」という対応も、場合によっては専門家を審議の場から外し、素人だけで審議をするような事態を招かないとも限らない点、少し気になる次第です。
 
 
                      日経バイオテク編集長 橋本宗明
 
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 詳しくは、「BTJジャーナル」08年3月号P.4-8の記事をご覧ください。
 
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「BTJジャーナル」08年3月号(第27号)の目次を紹介します。
 
2 連載「大学は今」第3回
進化迫られるテニュアトラック制

4 特集リポート
糖鎖オールジャパン体制
谷口直之・阪大教授・理研GD
成松久・産総研センター長

9 BTJアカデミック・ランキング

10 専門情報サイト「FoodScience」

11 社告 日経BP技術賞

12 連載「サイコムキャリアプロジェクト」第2回
自分を「見える化」

16 連載「遺伝統計学へようこそ!」第13回
関連性を評価する方法

20 広告索引

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                           BTJ編集長 河田孝雄