水曜日のBTJメールを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 
 先週、医薬品医療機器総合機構の宮島彰理事長辞任のニュースを聞いて、少し驚きました。宮島理事長は、薬害C型肝炎問題で製薬企業から厚生労働省に418人分のリストが提出されたときに医薬局長を務めていました。だから、当時、提出されたリストにある患者に対して、血液製剤を投与した事実が伝えられているかどうかを確認しなかった、という点では非があるかもしれません。しかし、以前にもこの欄に書いたように、そもそも個人名を特定できるような形で厚労省に報告が上がっていたことに疑問を覚えます。したがって、「リストから個人名を特定して本人に告知する」ということを厚労省がやるべきだとは思いませんし、告知しなかったことの責任を取って辞任するというのも少しおかしな気がします。
 総合機構は今、ドラッグラグの解消や安全対策業務の充実に向けて改革のさなかにあります。理事長の突然の辞任で、こうした改革の流れがストップしてしまわないかが、大いに気になるところです。
 
 特に、ドラッグラグの解消に関して、昨年、総合機構は、次期中期計画の最終年度である2011年に、医薬品の承認までの時間を2.5年短縮する目標を掲げました。審査基準を明確化したり、相談業務を充実させることで、前臨床・臨床開発に要する時間を1.5年短縮させ、人材の強化などによって審査期間も1年短縮する計画です。これによって、本当に医薬品が日米欧でほぼ同時に発売されるようになるのかどうかは分かりませんが、総合機構がチャレンジングな目標に取り組もうとしていることは確かです。
 
 もっとも、昨年暮れに開催された運営評議会で示された新医薬品の総審査期間などの数字を見ると、ばらつきはありますが、05年度、06年度に比べて、07年度の審査期間が短縮に向かっているという傾向は読み取れませんでした。改革の緒に就いたばかりで、成果が出るまでには時間がかかるということかもしれませんが、次期中期の目標を達成するには、まさにこれから大きな改革を断行する必要がありそうです。そうした時期のトップの辞任だけに、改革に影響を与えないか心配しているわけです。
 
 ただし、改革はリーダー次第です。宮島理事長の後任はまだ未定で、一部では民間人の起用が検討されているとのことですが、しがらみなく組織に大鉈を振るえるようなリーダーを迎えた方が、むしろ総合機構の改革という点ではプラスになるのかもしれません。いずれにせよ、安全対策の強化も重要ですが、承認審査の迅速化という改革の流れが損なわれないように、注視していきたいところです。
 
 薬害肝炎問題については、薬害肝炎被害者救済特別措置法が成立し、原告と国が和解合意書に調印して1つの山は越えた観があります。ただ、スクリーニング検査の導入などで、血液製剤を通じたC型肝炎ウイルス(HCV)の新規の感染はほとんどなくなっていますが、HCVに感染している人は国内に百数十万人いるといわれています。厚生行政としては、こうした人たちに治療の機会を提供し、肝がんの危険因子であるHCV感染症を撲滅していくことも重要なテーマではないかと考えます。
                    日経バイオテク編集長 橋本宗明 
 
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国立大学法人の中間評価と
インパクトファクター・被引用数

4 インタビュー
環境対策バイオプロセス
清水昌・京都大学教授
横関健三・味の素アミノサイエンス研究所理事

7 リポート
次世代シーケンサー続々登場
バイオ研究に抜本的な大変革
 榊佳之・理研GSCセンター長
 林崎良英・理研主任研究員

12 連載「さきがけCloseUp」総集編
「さきがけライブ」07年末は実施せず

14 専門情報サイト「FoodScience」

15 連載「科学技術政策を論じよう」
 第4回 深刻化するポスドク問題

18 連載「遺伝統計学へようこそ!」
 第10回 遺伝統計学とゲノム研究

33 広告索引

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                         BTJ編集長 河田 孝雄