こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 GreenInnovationメールの第3週を執筆いただくのは、京都大学大学院農学研究科海洋微生物学分野の澤山茂樹教授です。澤山教授は藻類など、主に応用微生物学を専門としたバイオ燃料の研究をされています。澤山教授にご寄稿いただくのは今回が最後です。半年間どうもありがとうございました。
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◆ニュースウォッチ◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  「かびと糸状菌」
        京都大学大学院農学研究科海洋環境微生物学分野・澤山茂樹教授
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 私たちの研究室では、糸状菌にセルラーゼを作らせる研究をしています。糸状菌と酵母は比較的近い関係になると思いますが、多細胞性の糸状菌は単細胞の酵母に比べると格段に扱いにくい生物です。寒天培地に接種しても絨毯のように広がって単離しやすいコロニーはできませんし、広義の抗生物質は効きにくいし、液体培養では酸素の供給に苦労し、だまのようにもなります。
 糸状菌関連の単語の用法も難しいと感じています。広辞苑によると、「真菌」はきのこ、かび、酵母の総称、「かび」は菌類のうちキノコを生じないもので、主に糸状菌を言うそうです。なんか堂々巡りの感じです。微細藻類でも日本語ではありませんが、分類にはアルベオラータとかストラメノパイルとか耳慣れない言葉が出てきます。微生物の分類が専門的で難しいということかもしれません。
 糸状菌は醸造産業などで広く産業利用されていますが、一般的には、病気の原因になったり、食品に生じたり、頑固なお風呂汚れの元になったりする厄介な「かび」のイメージがあるかもしれません。ただ、糸状菌という言葉を使えば、糸状の菌糸をイメージしやすいですし、かびのようなどちらかというと悪いイメージも和らぐのではないかと思います。話は脱線しますが、この原稿を書き始めた時点ではカタカナの「カビ」としていました。以前、文章中で「ゴミ」と書いていたのを見つけたある先生から、「日本語なのにどうして平仮名にしないのか」と言われたことを思い出しました。片仮名の「ゴミ」と表記したのは、ごみを悪者扱いする意識があったからかもしれません。ということで、かびも平仮名に直しました。
 「Books.or.jp」で「糸状菌」で本を検索しても、1冊もヒットしません。ちなみに、「かび」で検索すると321冊の色々なジャンルの本が、「真菌」では医学関係の本が21冊出てきます。糸状菌の基礎が学べる本があると助かるのですが・・・。
 日経バイオテク・オンラインのニュースをチェックしようと、9月5日に本年について「糸状菌」で検索したところ4件、「かび」では5件の記事が出てきました(編集部注、デフォルトは過去3カ月の記事から検索するよう設定しています)。

2011-07-29 12:20:02
玉川大学学術研究所菌学応用研究センター 日本菌学会 第22回微生物資源ワークショップ、日本菌学会シンポジウム
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0618/
 「糸状菌」で検索されたこの記事によると、テレオモルフ・アナモルフの二重命名法がなくなるかもしれないとのこと。糸状菌の分類の専門家でない当方にとっては、有名なセルラーゼ生産糸状菌(1つの種)について「テレオモルフ 完全世代Hypocrea jecorina、アナモルフ 不完全世代Trichoderma reesei」という2つの名前を覚えなくて済むという意味では朗報です。
2011-08-03 20:10:20
BRAINイノベーション創出事業の新規15件は競争率17倍超、事業仕分けでNARO研究者への配分は無し
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0799/
2011-07-23 10:49:22 [初 2011-07-22 00:00:00]
JSTのA-STEP探索、アグリ・バイオ分野で多数採択は大阪府立大、広大、東北大、名大、北大、慶大鶴岡、香川大、宮崎大
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0525/

 これらの2つの記事では、採択された研究開発事業において、合計3件のテーマ名に「糸状菌」を含むものがありました。研究開発のターゲット微生物として、糸状菌が重要であることを物語っているかもしれません。研究開発の公募事業ではある程度中身の情報が得られますが、企業で研究開発が実施されている場合は、どんな微生物がどんな有用物質を生産するかは表に出てこないことが多いと思います。糸状菌は、思いのほかいろいろなところで活躍しているのではないかと想像しています。
2011-05-11 03:04:20
世界市場年9000億円でシェア2割弱、FAD-GDH血糖値センサーでパナソニックと池田糖化に農芸化学技術賞、組み換えによる酵素の糖鎖除去で感度向上
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/8816/
 この記事は、血糖値センサーの開発において、糸状菌Aspergillus terreusの固体培養の上清中に、グルコース特異性が高くマルトースに反応しない有用な酵素を発見したというものでした。麹菌でもお分かりのように、糸状菌の特徴の1つとして、菌体外へ多種・多量の酵素を生産・分泌する能力があることが挙げられます。
 はじめに糸状菌は酵母に比べて扱いづらいというお話をしましたが、このことは研究対象として複雑で興味深いことの裏返しとも言えるかもしれません。当方の研究が亀のようなペースであることの言い訳にはならないとは思いますが・・・。