こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 GreenInnovationメールの第1週目は、バイオインダストリー協会先端技術・開発部の大島一史部長に担当いただいています。大島部長には、長くバイオプラスチックに関わって来られたご経験に基づき、最近のバイオプラスチックを巡る動向の解説や、普及に向けた提言などをいただきます。
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◆北海道発◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     -“バイオ素材”の判定法とは-
            バイオインダストリー協会・大島一史部長
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 今回は、化学品や化成品、更にはプラスチックがバイオマスに由来するのかどうかをどのような方法で判定するのかについて、その現状を紹介しましょう。今後、“バイオ素材や製品”が次々に開発され、単独で、あるいは多種多様な有機物/無機物と複合化されて日常品として登場し、普及してくると、この判定法が重要になってくると考えられます。
1.バイオマス由来度の考え方
 大気中では窒素14(14N)が宇宙線の照射により放射化されて14Cへ変換され、通常の二酸化炭素の12Cと交換され、光合成によってその14Cが植物などの中に固定化されます。 14Cの半減期は5730年で、従って太古の有機物の変換物質である原油中には存在しないのに対して、現代の地球上で栽培されたバイオマス中には微量存在することになります。その存在比は 14C/12C=1×10-12 のオーダーで極微量ですが、この存在比を高精度で測定すれば、対象素材が石油由来であるのか、バイオマス由来であるのかが分かります。この方法は、基本的には遺跡物の年代測定法として定着している方法(“Carbon Dating”) です。
 “バイオマス度”の定義は日本工業規格でも国際規格においてもいまだ定められていませんが、通常は米国材料規格試験法(ASTM D6866)での定義、すなわち対象とする素材の全炭素(C)量に対するバイオマス由来炭素(“バイオC”)量の割合“バイオC量/全C量×100wt%” を“炭素濃度で表したバイオマス度”として表示しているケースが多いのが現状です(採用事例:米国農務省の運営する認証制度やEUにおける民間認証機関による表示)。
2.バイオマス度測定法の現状
 加速器質量分析法(Accelerator Mass Spectrometry,AMS)と液体シンチレーション法(Liquid Scintillation Count Method,LSC)が今日の主流になっています。
(1)AMS法
 検体を完全酸化させて二酸化炭素に変換後、さらに還元処理してグラファイト化してAMS装置に導入します。以後セシウム・イオン・ビームの照射により荷電(アニオン化)後に加速器部へ導入し、その後に分離磁石で90度曲げると、12C、13C、14Cの質量差に応じて曲がり方が異なることから、これらの存在比を測定できます。AMS法では、標準物質および検体中の12Cと13Cを電流値として、14Cを個数として計測して14Cの安定同位体(12C と13C)との比からバイオマス度を評価します。
(2)LSC法
 この方法は14Cのβ崩壊数を計測するもので、特にベンゼン化法(試料の酸化処理で生成した二酸化炭素をリチウム・カーバイト化後にアセチレンに変換し、さらに最終的にベンゼンとして14C濃度を測定する方法)が開発され、標準化されています。この方法ではベンゼンを親油性シンチレーターへ溶解させてその放射能を計測するのですが、前処理に極めて煩雑な工程を必要とし、実質上は考古学上、あるいは古代地理学などの貴重な遺蹟を対象とした場合に高度な技術を持つ一部の専門家のみが取り扱える手法と言えましょう。
 近年注目を集めているバイオ燃料や、固体系資材であっても溶媒による(高濃度)溶液化が可能な場合には、シンチレーターへ直接溶解させたLSC法が極めて効果的と考えられることから、国内外で以下の手法が開発されてきています:
-直接法 (1):
 バイオエタノール添加ガソリンやバイオETBE添加ガソリンを親油性シンチレーターへ直接溶解して14C濃度を測定する方法(海外分析機器メーカーが開発)。
-直接法 (2):
 バイオガソリン用添加剤ETBEの迅速バイオ判定(バイオマス由来かどうか)法として日本アルコール産業が開発した方法で、親油性シンチレーターへ直接溶解して14C濃度を測定する。
-水抽出法:
 バイオエタノール添加ガソリンを対象に、東京都立産業技術研究センターが開発した方法で、所定量の水を添加してエタノールを水側へ移動させ、エタノール溶解水を抽出して親水性シンチレーターへ直接溶解し、14C濃度を測定する。
 実用化の観点からは直接法(2)が最も進んでおり、既に2008年4月1日以降実用化されています。直接法(1)および水抽出法はガソリンのような資材を燃焼処理して二酸化炭素へ変換する前処理を必要とせず、またシンチレーション計測工程以降が高度に自動化されているLSC法においては専門家以外にも適用性が高いのが特徴です。
 未着色ガソリンを使用するEUでは直接法(1)の適用性が極めて高いことが実証されており、私どもの調査事業では、我が国や米国のように着色ガソリンが使用されている場合でも、シンチレーターや、シンチレーターへの溶解条件を適合化させれば定性分析が可能であること、さらに高い定量性を求める測定では水抽出法が適していることを検証しています。
3.バイオマス度測定法の留意点
 私どもの調査事業では、AMS法とLSC法の対応性が極めて高いこと(従ってどちらの測定法によるかは素材の特性次第)を検証しています。
 一方、1960年代の大気中核実験によって14C濃度が増大し、今日でもその効果が無視できないことから、この時代の大気中二酸化炭素を固定化した樹木に由来する素材では特別の注意が必要であることなど、課題も浮かび上がっています(トウモロコシやサトウキビなどの短期栽培バイマスでは顕在化していませんが、樹齢数十年の間伐材由来の場合には十分な注意が必要)。
 今後はこれら測定法上の課題に十分留意しながら、バイオマス由来素材や製品の正しい情報開示がなされ、普及していくことを期待しています。