こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 GreenInnovationメールの第3週を執筆いただくのは、京都大学大学院農学研究科
海洋微生物学分野の澤山茂樹教授です。澤山教授は藻類など、主に応用微生物学を
専門としたバイオ燃料の研究をされています。
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◆「日経バイオテクオンライン」の関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━
        農業/環境分野のバイオテクノロジー記事
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JSTのA-STEP・FSアグリ・バイオ25件、キノコで雪国と大塚、乳酸菌でゲンとニチニチ、リン脂質で日油とナガセ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0977/
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◆ニュースウォッチ◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  「生物多様性の確保」
        京都大学大学院農学研究科海洋環境微生物学分野・澤山茂樹教授
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 私たちの研究室では、微生物を利用したモノづくりの研究として、主にバイオ燃料をターゲットにしています。バイオ燃料としては、バイオエタノノール、バイオディーゼル燃料やバイオガスが挙げられます。ご存知のように、バイオガスは複合微生物系のメタン生成微生物群が生成するので、個々の微生物について遺伝子操作を含めた育種をすることはあまり行われていません。バイオエタノール製造技術においては、糸状菌や酵母について遺伝子操作による分子育種が行われています。遺伝子組み換え体の取り扱いに関しては、「カルタヘナ法」(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)に従って、第一種使用と第二種使用とに分けて使用の際のルールが決められています。
 日経バイオテク・オンラインのニュースをチェックしようと、8月1日に本年について「カルタヘナ」で検索したところ、3件の記事が出てきました(編集部注、デフォルトは過去3カ月の記事から検索するよう設定しています)。ちなみに「遺伝子組み換え」では79件ヒットしました。

2011-03-15 08:54:18
文部科学省、東日本巨大地震で遺伝子組み換え生物使用研究施設の被害届け出と早急な相談を要請
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7778/
2011-02-14 21:14:22
遺伝子組み換えカイコを農家が飼育、繭を免疫生物研究所に納品
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7117/
2011-01-11 00:00:01
国の調査で遺伝子組み換えダイズの国内生育を初めて確認
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6064/
 2番目の記事によると、抗体などのたんぱく質を生産するように遺伝子を組み換えたカイコを2系統3000頭ずつ飼育し、それぞれ約500gのターゲットたんぱく質の生産に成功したとのこと。遺伝子組み換え(GM)カイコの飼育は、第二種使用として農林水産省に申請して認められているそうです。カイコの場合は微生物とは異なり、十分目に見える大きさなので、飼育施設から逃げないようにすれば、環境中に放出されるリスクは比較的低いかもしれません。
 3番目の記事によると、遺伝子組み換えナタネ、トウモロコシやダイズを水揚げしている港付近で、組み換え遺伝子を持つセイヨウナタネやダイズが確認されたそうです。在来の近縁種との交雑は認められていないと報告されています。農林水産省は、輸入時にこぼれ落ちて交雑が起こっていたとしても、生物多様性に大きな影響はないとの立場だそうです。文を抜き出すと微妙なニュアンスが変わる場合もあるので、気になる方はニュース全文を読んでください。ダイズなど種子を利用する植物の場合は、組み換え遺伝子が種子に含まれていれば、生産地から加工・消費地とかなり遠くまで組み換え遺伝子が運ばれることになり、その間の組み換え体の管理が重要になりそうです。
 1番目の記事は、遺伝子組み換え体を扱う研究者にとって、大きな災害が起こった時には、困難な状況に陥る可能性があることを教えてくれています。研究施設への被害が少ないことを祈るばかりです。
 日経バイオテク・オンラインのカルタヘナ法関連のニュースを紹介しましたが、遺伝子組み換え体の産業利用について少し考えてみたいと思います。遺伝子組み換え体は、できれば使わない方がいいのかもしれません。遺伝子を組み換えない微生物育種法としては、突然変異法が中心となるでしょう。突然変異法は優れた技術ですが、例えば酵母にキシロース代謝能を付与する突然変異法による育種は成功していません。また、キシロースをエタノール発酵できる非組み換え体の酵母に比べ、遺伝子組み換え酵母の方が効率よく発酵できます。遺伝子組み換え体を使用する場合は、生物多様性を確保するために、非組み換え体に比べコストアップになると考えられます。キシロースを発酵するメリットと、組み換え体を使うデメリットの比較から、その是非を検討すればいいように思いますが、皆様はどのようにお考えでしょうか?
 糸状菌や酵母はタンクで培養しますから、第二種使用をイメージしやすいのですが、バイオ燃料を目的に独立栄養の微細藻類を培養する場合は、広い培養面積が必要になります。オープンポンドで、第一種使用を選択する可能性もあります。微細藻類は無性的に増殖する場合が多いので、遺伝子組み換え微細藻類を第一種使用したい場合は、どうやって生物多様性を確保するのかが重要な課題になりそうです。