こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 GreenInnovationメールの第2週目は、バイオインダストリー協会つくば研究室の小林良則室長に担当いただきます。今回は、関わっておられるNEDOのバイオエタノール製造技術開発のプロジェクトの中から、2つの研究成果、成分酵素の役割解析と、糖化反応の停止現象に関する考察について、ご紹介いただきます。
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◆マイオピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  成分酵素の役割解析と糖化反応の停止現象に関する考察
           バイオインダストリー協会つくば研究室・小林良則室長
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 今回はこれまでの研究成果の中から2つのトピックスを取り上げてお話しします。まずは糖化酵素成分のバイオマス糖化における役割の解明についてです。最も有名なTrichoderma属糸状菌を例に取れば、この菌株の培養液中にはCBH、EG、BGL、キシラナーゼ、キシロシダーゼ等数多くの成分酵素が含まれています。これらの種類と生産量の多さがこの微生物由来酵素が優秀である理由です。これらの成分酵素のバイオマス糖化における役割解明、さらに進んで高機能糖化酵素を創成するための最適比率の決定はこの研究分野おけるメインテーマの一つです。そのため、この課題に関する研究は数多くあり、最近、精製した10数種もの成分酵素を種々の比率で組合せてコーンストーバ前処理物に作用させ、それらの最適比率を求めたという論文も出ています。
 我々は、さすがにそこまで多種類の精製酵素を短時間で揃えるのは難しいので、長岡技術科学大学で創成された単一成分欠損酵素を使わせていただくことにしました。これらはTrichoderma reeseiのCBH1、CBH2、EG1の遺伝子欠損株から作られた酵素であり、それぞれの単一成分を欠いていますが、本来この菌株が生産するその他の成分は全て揃っていますので、目的のための研究材料としては非常に有用です。これら3種の酵素を種々の条件で各種セルロース粉末やバイオマス標準前処理標品に作用させ、糖化パターンを比較したところ、非常に面白い結果が得られました。すなわち、各種セルロース粉末を基質とした場合の各成分酵素の糖化に対する貢献度は同じ傾向を示し、CBH1=CBH2>>EG1でした。
 これに対し、各種バイオマス前処理標品の場合は全ての基質においてCBH1は必須で重要ということは変わりませんが、CBH2とEG1の貢献度はその基質によりかなり異なるというものでした。例えば、稲ワラの苛性ソーダ処理物ではCBH1>>CBH2=EG1、硫酸処理物ではCBH1>CBH2>>EG1、水熱処理物ではCBH1>CBH2>EG1であり、ユーカリの場合はこれら3種の前処理法共通にCBH1>CBH2>EG1、スギの爆砕処理物ではCBH1>CBH2>>EG1という結果でした。これらの結果から言えることは、セルロース粉末の場合は、結晶、非結晶の割合等には違いがあるものの、成分酵素の側から見た場合、本質的な構造上の特性において大きな差異はないが、バイオマスの場合は前処理物全体の特性が異なり、糖化に寄与する成分酵素の種類、量が変わってくるということです。これらの結果は高機能糖化酵素創成においてはあくまでそのバイオマス種、前処理物に対応して必要な成分酵素の性能改良と量比の最適化が重要であることを示唆し
ています。
 それにしても、上記に紹介した論文をはじめ、海外研究者の豊富な材料を駆使した緻密な研究には驚かされます。このような状況の中で、どこに我々の存在感が示せる場面があるのだろうかと思案します。かって、若い頃師事した先生から言われた「物量では欧米に敵わない状況におけるオリジナリティーの追求」が頭をよぎります。企業在籍時にも常に考えていたことですが、国際的にも激烈な競争下において研究開発で勝つポイントは、当たり前のことですが、自分達のADVANTAGEの棚卸しと、それらの最大限の活用策だと考えます。有期限で一定の成果が求められるプロジェクト研究においては徹底的に、自分たちしか持たない材料、技術、情報を棚卸しし、それらをいかに効率的に組み合わせて研究を進め、目的を達成するかだと思います。我々のプロジェクトメンバーには長年に渡り蓄積してきた膨大な研究成果という財産があります。それらをいかに適切に、効率的に組み合わせて最短時間で目的を達成するかが研究マネージメントの肝と考えています。ここで述べた、成分酵素の役割解析は長年にわたり長岡技術科学大学で研究されてきた成果と当方の各種バイオマス前処理物標品という材料と評価方法があったからこその成果と考えます。この成果は次回以降に述べる、高機能糖化酵素創成への重要な足掛かりになりました。
 もう一つの話題は糖化反応における「頭打ち現象」についてです。これは、糖化反応における使用酵素量の低減化を目指した研究の中で発見したもので、酵素量を順次低減していくと、反応が途中で停止し、いかに長時間反応を続けても、過剰量酵素を使用した場合の糖化率に到達しないという現象です。このことは、少量酵素による高濃度糖化達成の観点からは大きな障害です。我々はこの原因を究明すべく、このような現象が見られる基質と酵素の組み合わせについて検討してみたところ、程度の差はあれ、全ての場合に共通の現象であることが分かりした。そこで、考えられる原因を酵素の側と基質の側、およびそれらのインターラクションという側面から整理してみました。
 酵素側からは単純な熱やプロテアーゼによる失活、基質の側からはリグニンやヘミセルロースの存在が考えられます。詳細は省きますが、種々の実験データから、これらは確かに反応停止要因の一つではあるが本質ではないこと、本質はセルロースと成分酵素たんぱく質のインターラクションそのものにあると考えるに至りました。これまでも、コットンセルロースのようなきれいな基質から実バイオマスに至る種々の基質に関する酵素たんぱく質の吸着現象について論じた報文は数多くあります。しかしながら、糖化反応の停止現象と酵素たんぱく質吸着の関係を詳細に解明した研究例は、それほど見当たらないように思えます。
 そこで、各種前処理バイオマスに各種市販セルラーゼを作用させた場合の糖化反応における成分酵素の挙動を追跡してみました。この結果、成分酵素が基質との間で吸脱着する様子が観察されました。リグニンの多い希硫酸処理物にはBGLの吸着が顕著に認められ、CBH1、CBH2、EG1などが反応初期に一度基質に吸着し、以後、順次脱離していく様子も観察されました。また、電子顕微鏡観察により残渣セルロース表面に無数の酵素たんぱく質と思われる粒子が付着している様子も観察されました。また、この問題にはバイオマスそのものの不均一性も大きく関与しているものと考えております。現在、この現象を「非生産的吸着」と捉え、これまで得られた種々の知見を総合的に解釈し、この現象を説明できるモデルを考察しております。
 我々のプロジェクトには当初よりこのような問題の発生を予測し、高効率糖化法を開発する目的で、いわゆるWood Chemistryの専門家が多数参加しております。現在、これらの専門家と共に協業してこの現象解明と対応策立案に取り組んでいます。また、東大五十嵐圭日子氏の著名な研究成果を横目で見ながら、あのきれいな材料を題材にしたサイエンスとしての知見が、我々のようなきたない基質の場合にはどう反映されるのだろうかと考えつつ仕事を進めています。
 
 最後に田舎暮らしの話の続きです。私の畑の今年前半の成績はまあまあでした。何が理由か良く判らないのですが、毎年、不作、豊作の波が激しい玉ねぎが、今年は幸いに豊作でした。週末の朝食には、紫玉ねぎのスライスを、同様に自作のキュウリ、パセリ、トマトなどと一緒にサラダにして至福感を味わっております。ジャガイモは男爵になにやら病害が少し認められましたが、メークイン、キタアカリは共に豊作でした。スイカは今のところ、6個ついています。8月中旬には味わえる予定です。子供たちの畑は、残念ながらトマトに立ち枯れ病が発生し、4、5本枯れてしまいました。私にとって初めての経験で、子供たちもがっかりしています。子供たちのスイカは今のところ10個くらいついており、喜んで名札をつけています。サツマイモは葉が茂りすぎているようです。肥料のやりすぎでしょうか。素人農業の難しさです。