こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 GreenInnovationメールの第1週目は、バイオインダストリー協会先端技術・開発部の大島一史部長に担当いただいています。大島部長には、長くバイオプラスチックに関わって来られたご経験に基づき、最近のバイオプラスチックを巡る動向の解説や、普及に向けた提言などをいただきます。今回は前回に引き続き、汎用樹脂のバイオプラスチック化の話題です。
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        農業/環境分野のバイオテクノロジー記事
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Neste Oil社、再生可能ディーゼル燃料の性能をNurburgring24時間耐久レースで実証
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DuPont Danisco Cellulosic Ethanol社、セルロースエタノール生産施設の建設用地を購入
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◆バイオプラスチック革命◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   - 新たなトレンド:既存樹脂のバイオ化、その2 -
                  バイオインダストリー協会・大島一史部長
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<バイオPET>
 PET(ポリエチレンテレフタレート)は極めて身近な樹脂であることから、そのバイオ化の経緯を筆者の知る範囲で詳しく見てみます。
 1989年より糖蜜、若しくはサトウキビ由来エチレン・グリコール(EG)がIGL社(India Glycols Limited;インド)で生産されており、このバイオEGを用いたPET(今1つの原料であるテレフタル酸は石油由来)が開発されています。使用者側でも、コカコーラ本社はバイオPET製ボトルを使用した飲料の上市を2009年11月からデンマーク、次いでカナダおよび米国で、我が国では2010年3月から実施しました。筆者の知るところでは、該当ボトルの炭素濃度で計測したバイオ炭素含量は20%(⇔バイオEG組成約30%に対応)で、バイオEG由来PETであることが検証されています("バイオ炭素" とは現代に栽培/育成されたバイオマス由来の炭素。機会を見てこのシリーズでバイオマス度の測定法及び評価法について紹介します)。
 これらバイオPETの市場立ち上がりを見通して豊田通商は、Petrobras社(ブラジルの国営石油会社)とサトウキビ由来バイオ・エタノールの長期売買契約(2012年から10年間で140万kL;購入額は計700億円規模)を締結し、中国人造繊維会社(台湾の化学品メーカー)と合弁でEGへ変換し、以後バイオPETとして飲料ボトルや自動車向け繊維(内装表皮用繊維)として展開する意向を表明しました(2010年10月7日)。これに呼応してトヨタ自動車がこのバイオPETをレクサス・ハイブリッド車の荷室内装に使用するとしています。
 バイオEG由来PETを "バイオ・ポリエステル" として先行開発していた帝人ファイバーは、豊田通商と提携して、統一ブランド名を "PLANTPET" として、衣料、自動車用のシート・内装材、また衛生資材として2012年4月より本格展開することを公表しました(2010年12月9日)。同社によれば2012年度の販売量を3万tとし、2013年度には5万t、2014年には7万tを見込んでいます。既に大日本印刷はこのバイオPET製シートを "バイオマテックPET" と銘打って日用品や食品向け包装材として量産を開始したと公表しています(2011年5月2日)。さらに東洋紡績はバイオPET製長繊維不織布("バイオボランス")の発売を発表しました(2011年6月30日)。2015年には500tの販売を見込んでいるとしています。
 PETの年生産量は世界規模でおよそ4500万tとされ、年率8%、2015年には6000万t規模に達すると見込まれており、豊田通商はこのうち5%程度がバイオPETに置き換わり得ると見込んでいる模様です。
<バイオポリウレタン(PU)>
 ウレタン結合は通常ポリオールとイソシアネートとの縮合で形成され、これら原料の分子種を変えることで多用な特性を有するPUとなります。バイオPUはバイオマス由来ポリオールを使用することで合成されます。
 2005年より米Cargil社が大豆由来ポリオールを“BiOH”として生産しており(於・ブラジル)、北米を中心に自動車や家具などクッション用途向けPU原料としての展開がなされていました。米本国では、Ford Motor社が低発泡PUとしてシート・クッション、シート・バック、およびヘッド・レストを2010年型Taurusに採用している様です。さらに大豆由来ポリオールについては、最近、米BioBased Technologies社製を長瀬産業が "Agrol" の名称で輸入し、販売を始めると公表しました(2011年1月31日:バイオマス由来度は96%超。公表資料を読み取れば、対象としている石油由来品の出荷までのGHG排出量≒4.1kg/kg程度に対して-1.4kg/kgであり、マイナスであることから "持続性" を意味していることになります)。
 これとは独立に三井化学がひまし油由来ポリオールを開発しており、イソシアネートと組み合わせた低発泡PU(バイオマス由来度≒15%)をトヨタ自動車が自動車用クッション材として活用しています(2009年5月)。ひまし油原料であるヒマの種の生産量はおよそ100万t/年(⇔ひまし油換算で≒50万t/年)とされ、インド、次いで中国が主な栽培地とされます。
 また東洋ゴムのダイバーテック事業関連企業であるトーヨーソフランテックは、バイオマス由来度≒30%のポリオール系軟質PUフォームを発売し、家具や寝装寝具用クッション材としての展開に取り組むことを公表しました(2010年5月19日)。
 この様にバイオポリオールの新たな分子設計により多用なバイオPUが今後も開発され、実用化されていくものと思われます。
<バイオポリアミド(PA:"バイオナイロン")>
 フランスArkem社がひまし油由来タイプのPA-11を “Rilsan” として生産しています(生産能力は約2万t/年)。耐薬品性に優れ、柔軟性燃料パイプ等の用途に展開されている模様です。ガラス転移点は約37℃で、室温ではガラス状態であり、一方結晶融点は185℃と高く、耐熱性に秀で(熱変形温度は0.45MPa荷重下で145℃、1.80MPa荷重下で50℃)、耐衝撃性はノッチ付きシャルピー値が50kJ/cm2であり、エンジニアリング・プラスチック的な位置付けになると思われます(物性値は基本銘柄のカタログ値)。10個のメチレン基を持つことから分子鎖に可とう性も持ち、一時期、富士通がパソコン部品としての展開を図るとウェブサイトで紹介されたこともありました。
 最近、東洋紡績はArkem社と業務提携して融点260℃(バイオマス゛度≒70%)から同315℃(同≒30%)、吸水率を従来比1/3とした新規ポリアミドの開発を公表しました(2010年4月)。2011年には発売し、2014年までに50億円規模の売り上げを目指す
としています。
 三菱ガス化学もバイオ耐熱性ポリアミド "LEXTER" の開発を公表しました(2010年10月18日)。ひまし油由来のセバシン酸をモノマーとした分子設計により高結晶性を実現し、同時に融点を300℃以下に押さえて成形加工性を維持しているとしています。吸水性が低く、耐久性が期待されることからもLED関連部材や無鉛ハンダ、自動車エンジン周辺部材への用途を想定している模様です。このポリアミドをベースに三菱エンジニアリングプラスチックスはガラス繊維強化コンパウンド "Reny SRH0101"(仮名称)を開発し、自動車部材や電気・電子部品部材としての市場開拓を進め、5年後には2000t/年から3000t/年の販売を目指すとしています(2010年10月27日)。同じくベルギーSolvay社も熱変形温度が270℃のガラス繊維強化コンパウンドを開発している模様です。
<バイオABS樹脂>
 ABS樹脂(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン系ポリマー)において、ゴム成分であるブタジエン(組成としておよそ16%)を(部分的に)天然ゴムに置き換えた "バイオABS" がIRPC Public社(タイ)により開発されたと伝えられています。ブタジエンの25%を天然ゴムに置き換えた銘柄(バイオマス由来組成が4%)の銘柄が上市されており、近々倍増した銘柄も上市されると伝えられている。
 ブラジルではバイオ・エチレンを塩化ビニルに変換後重合してポリ塩化ビニル(PVC)とする工業化試験も伝えられており(ソハイオ社構想)、この様に、石油系汎用5大樹脂(PE、PP、PVC、PSおよびPET)の多くがBP化され得る可能性を秘めていると言えるでしょう。