こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 GreenInnovationメールの第4週を執筆いただくのは、北海道で技術戦略マネジメント・オフィスというコンサルティング業を運営しておられる飛谷篤実さんです。北海道の出身で、昨年まで北海道ベンチャーキャピタルに在籍しておられ、現在札幌を拠点に食品やバイオテクのイノベーションに関わるコンサルティングを行っておられるだけあって、北海道のバイオ事情に詳しい方です。北海道のグリーンイノベーションをリポートしていただきます。
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◆「日経バイオテクオンライン」の関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━
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DuPont社、Danisco社買収に伴う人事異動と組織変更を発表
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Metabolix社、スイッチグラスからバイオ製品開発にDOEより600万ドルの助成金を獲得
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Cellana社、藻類バイオ燃料の副産物から動物飼料の開発でUSDAとDOEから助成金獲得
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OriginOil社、合弁会社Ennesys社がフランスで藻類プロジェクトを展開
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◆北海道発◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  バイオディーゼル燃料と菜種油を製造販売するエコERC
        技術戦略マネジメント・オフィス 飛谷篤実
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【お詫びと訂正】5月26日にメール配信した際に一部原稿が欠落していました。6番目の段落で、「自動車の保有台数としては、全国の企業の中で1位になりました。ちなみにそれら全車両」という文字が抜け落ちていました。お詫びして訂正します。アーカイブの文章は訂正済みです(編集部)。
 北海道のグリーンイノベーションをご紹介する本連載の第2回目は、環境バイオのビジネスに取り組むベンチャー、エコERC(北海道帯広市、爲廣正彦社長)を取り上げます。
 元々は別の事業を営んでいた現社長が、自社の車両の燃料源とするためにバイオディーゼルを取り扱い始め、その後にエコERCとして起業しました。現在の事業は、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造販売、そして菜種油の製造販売です。
 前者の事業内容はお分かりになると思いますが、後者がこのベンチャーのユニークなところです。まず原料となる菜種(アブラナ)の栽培は、北海道内の農業生産者との委託契約により行っています。用いる品種は国内の農業試験場で開発されたもので、心臓障害を誘発するリスクのあるエルシン酸を産生せず、かつ非遺伝子組み換え種です。交配によりエルシン酸が産生される可能性があるので、それを避けるために毎年、原種の種子を同社から農家へ供給しています。
 委託契約先の栽培農家から調達した菜種の種子は、品質の劣化を抑えるために低温で搾油し、脱ガム処理を行い、添加物を一切使わない精製菜種油を得ます。菜種油としては生食用と天ぷら・炒め物用の2種類を販売し、搾油工程で出る残渣も家庭菜園の肥料として商品化しています。また札幌を拠点に国内外で活躍する料理研究家の岩城道子氏の協力を得て菜種油のレシピを開発し、同社のサイトで公開することによって菜種油の利用促進を図っています。
 これら菜種油は同社でもオンライン販売を行っていますが、強力なパートナーが生活協同組合コープさっぽろ(札幌市、大見英明理事長)です。北海道全域に100を越える店舗を有する同組合では、店頭ならびに宅配で菜種油を販売するとともに、後者のサービスの一環として家庭で使用済みの食用油の回収を行っています。集められた廃食用油は、店舗の惣菜調理時に出たものと合わせてエコERCへ運ばれ、同社の製造ラインによりバイオディーゼル燃料(BDF)へと生まれ変わります。
 こうして得られたBDFは、コープさっぽろの宅配サービスで使用されるトラックにおいて軽油代替燃料として消費されます。同コープの資料によると、回収される廃食用油は2009年時には月3万8000Lとなったとのことです。そのBDFにより稼動する宅配用トラックは、2010年には保有台数のほぼ半数となる300台に達し、バイオ燃料で稼働する自動車の保有台数としては、全国の企業の中で1位になりました。ちなみにそれら全車両のパレードが同年9月に行われ、かのギネス世界記録のサイトにも「Largest parade of alternative fuel powered vehicles」(代替燃料を使用した自動車による世界最大のパレード)として登録されています。
 循環型ビジネスを目指すエコERCは、これまでに農林水産省の助成事業の支援や、地元の大学や研究機関の連携により技術開発を進めてきました。資金面では、北海道内の主な信用金庫ならびに中小機構が出資し、北海道ベンチャーキャピタルが運営するベンチャーファンド(しんきん地域活性ファンド)などが支援してきました。
 一方、これからの成長を支えるのは、直接的にはコープさっぽろを始めとする流通や販売面でのパートナー、そして間接的には消費者ということになるでしょう。現状では同社の販売する菜種油やBDFは競合品に対して価格面で優位性があるとは思えません。それにもかかわらず徐々にビジネスが伸張しているのは、低環境負荷や安全・安心、地産地消、安定供給などの価値が付与されていることを、地域の個人や法人が理解し、賛同しているためと思われます。
 エコERCのビジネスモデルは、菜種油およびBDFの製造販売であり、これら二つは循環サイクルを形成しています。少なくとも循環の仕組みは成立していますが、現状では菜種だけで物質収支が取れているわけではなく、BDFの原料には菜種油以外の植物油が加わります。今後このサイクルを強化していくためには、菜種油の需要喚起や他の植物油への展開、そして廃食用油の回収網の強化、BDFの消費拡大などが考えられます。
 燃料や電力などのエネルギー業界においては、規模の経済性が働かない限り、有望なビジネスとしては認知されません。おそらくエコERCが手がける事業も、既存のシステムと完全に置き換わることはないでしょう。ですが、小さくともしっかりと回るシステムが地方で構築されつつあることは評価されるべきと思います。価格や効率だけでは無く、様々な価値軸を有する代替燃料・代替エネルギーを、その地域のコミュニティが育てるケースとしてご紹介いたしました。