先週から今週にかけて2件、バイオディーゼル燃料(BDF)に関連する話題に出会いました。一件目は伊藤忠商事が米国のバイオベンチャーに出資をしたというニュースです。Benefuel社は、低品質な油脂からでも、効率よくバイオディーゼルが作れる触媒技術を持っています。その技術を基にしたアジア展開を視野に、伊藤忠商事は同社に4%出資しました。
ばそのままBDFとして利用できるわけです。しかし高蓄積させる技術などがまだ伴っておらず、実用化には時間がかかりそうです。
 そんな事情から、現在のところ実用化されているBDFのほとんどは、植物油に含まれる脂肪酸をエステル化して軽油の特性に近づけたものです。植物油の主成分は脂肪酸がグリセリンに結合したトリグリセライドです。これにメタノールを反応させて、脂肪酸メチルエステルを作っています。
 BDFの価格面でのライバルは軽油です。ですから、新品の植物油を原料にしてBDFを製造しても、とてもペイしません。そこで使用済みてんぷら油などを回収して、BDFの原料にする取り組みが全国で行われています。有名なのは京都市のケースだと思います。
http://www.city.kyoto.lg.jp/sakyo/page/0000043654.html
 ただし問題があります。熱をかけた使用済みの植物油は、脂肪酸がグリセリンから離れた遊離脂肪酸が多くなっているのです。エステル交換反応を進めるために、代表的なのはアルカリ試薬を使う方法なのですが、遊離脂肪酸が存在するとアルカリ試薬と遊離脂肪酸が先に反応してセッケンができてしまいます。
 セッケンができるとエステル化反応を阻害し、収率が落ちる原因になります。それで遊離脂肪酸がたくさん含まれる低品質な油脂をBDFの原料にする際には、まず精製して遊離脂肪酸を分離してから使うことが多いようです。精製工程は、当然、生産コストの押し上げ要因になります。
 対してBenefuel社が開発した触媒を使うと、遊離脂肪酸の存在下でエステル交換反応を行ってもセッケンができないとのこと。つまり、回収したてんぷら油を、あまり手間をかけずにBDFの原料にできるので、製造コスト面で有利に働くというわけです。まだリリースの内容だけなので詳細が分かりませんが、面白い技術だと思います。
 さて、もう1件の今週出会ったBDF関連の話題は、エステル化に必要なメタノールの製造についてです。長崎総合科学大学の坂井正康先生らが開発した技術を使い、廃木材などから電機とメタノールを作る実証事業が近々スタートします。
 バイオマスをいったん一酸化炭素と水素を主成分とするガスにして、そのガスからメタノールを合成する、BTLという技術です。坂井先生はこの分野では誰もが知っている「農林バイオマス3号」という装置を作られた方。昨日、長崎市に坂井先生をお尋ねして、お話を聞かせていただくとともに農林バイオマス3号の現物も見せていただきました。
 BTL技術では、微生物も酵素も使いません。バイオマスを原料として作った燃料という意味でバイオ燃料なのですが、技術のベースは熱化学です。発酵技術とは、液体バイオ燃料製造という意味ではライバル関係、BDFに必須のメタノールを供給する技術としては補完関係にある、といえると思います。
 生化学分野の読者の方々にもぜひ知っておいていただきたい技術なので、近々日経バイオテク(ニューズレター)の特集でBTLを取り上げることにしました。ご期待ください。
  日経バイオテク副編集長 小田修司
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