東大大学院の難波成任先生、博士課程の川西剛史さんらの研究成果についての記事を、本日、日経バイオテクオンラインにアップしました。研究成果を要約させていただくと、炭素源(アミノ酸や糖類)と抗生物質を適当に組み合わせて培地を作れば、目的の微生物を選択的に生育させることができる――というものです。
 微生物の種類によって、生育が可能な「炭素源+抗生物質」の組み合わせは異なります。炭素源と抗生物質を2つの「変数」と考えると、目的の微生物のみを生育させるための第一の条件は、その微生物は資化できるが競合する微生物は資化できない炭素源を加えること。第二の条件は、その微生物は影響を受けないが、競合する微生物は生育を抑制される抗生物質を加えること、となるわけです。
 とはいえ、「本当に変数は2つだけでいいのか」という疑問が沸きます。そこで難波教授らは、炭素源と抗生物質の組み合わせを多数作って、第一と第二の条件を満足し、目的の微生物が生育可能になる培地を総当りで探索しました。そして実際に、主要作物の主要病原菌約100種について、選択的に生育させる培地を見つけることに成功したそうです。
 「目的の微生物を選択的に生育させるために必要な要素は、炭素源と抗生物質の2つに集約できる」。言われてみれば「まあ、確かにそうかも」と思いますが、しばらくしてじわじわと「それってすごいことかも」と感じます。
 さし当ってこの研究成果は、植物病原菌の迅速検査キットの開発に応用されそうです。目的の微生物だけを生育させる培地を使うと、従来の検査方法に比べて感度が10倍から100倍にアップし、1週間かかっていた判定までの時間が1週間に短縮するとのこと。病原菌による作物被害の縮小や、農薬・消毒の低減につながる可能性があります。
 さらにその先には、微生物のハイスループット探索とか、メタゲノムで見つかった遺伝子の由来微生物探索であるとか、いろいろと夢のある応用も考えられます。
 「面白い!」と思われた読者の方もいらっしゃるのではないかと思います。
その方には、やや残念なお知らせかもしれませんが、サイエンス教育事業などを手掛けるベンチャー企業リバネスが、東大TLOを通じて、この研究成果に関する特許のライセンスを既に受けています。同社はユニークなコンセプトのベンチャーですから、我々マスメディアとしては、たくさん面白いニュースが出てくることを期待して見守りたいと思います。
 
日経バイオテク副編集長 小田修司
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