昨日、名古屋市が本拠地のバイオベンチャー、マイクロリソースの社長、貞松久人さんにお話を聞いてきました。貞松さんは以前、「マイクロ・ガイア」というベンチャー企業の中心メンバーの1人だった方です。微細藻の研究者や事業に関わっている読者の方の中には、会社の名前を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
 マイクロガイア時代からそうだったのですが、貞松さんは一貫して、微細藻類の有効利用するための技術開発と実用化を目指しています。自身が社長を務めるマイクロリソースでも、その目標はかわっていません。同社は東京にも事務所をお持ちですが、今回は名古屋市にお伺いしました。実用化が近づいたという、微細藻類のリアクターを見せてもらうためです。 
 光源や攪拌の方法を工夫して、効率よく微細藻類を培養できるリアクターが開発できた、と説明を受けました。現在は、試験的に様々な微細藻類の培養を行っているところです。特殊な性質の微細藻類を除くと、ほとんどが培養可能だそうです。培養条件が容易に、細かく設定できるためとのことでした。
「どんな微細藻類でも培養できるリアクター」というコンセプトに、貞松さんはこだわったといいます。地球上に存在する藻類は2万種から3万種。それらの中には、様々な有用物質を作るものがいるはずです。リーズナブルなコストで、自由自在に培養できれば、地球環境やエネルギーの問題の多くが解決できるはず、というわけです。光と二酸化炭素から物質を生産する微細藻類は本当に夢がいっぱいです。
 しかし実際の世界ではまだ、クロレラ、スピルリナなどの一部を除いて、微細藻類を使った事業が成功を収めている例はまれです。ヘマトコッカスの培養でアスタキサンチンを製造する事業を手掛けていたヤマハ発動機は、昨年12月に事業から撤退しました。事業開始から4年間の累積損失は40億円以上(推計)だったとのことです。
 事業の成功が難しいのは、低コスト大量培養がハードルになるからです。それを可能にするリアクターは、この分野に絶対に必要なブレークスルー技術といえます。果たしてマイクロリソースが開発したリアクターは、この課題をどこまで乗り越えられるのか。今年中にも始めたいと貞松社長が構想する、新リアクターを使った有用物質生産の事業で、それは証明されることになります。
 マイクロリソースの戦略は、単価の高い物質の生産を主目的として、残りのバイオマスも副次利用しようというものです。単価の低い物質を作るよりは、一般的に有利な戦略だといえます。前述のように、それでも十分にハードルは高く、成功例はほとんどないわけですが…。
単価の低いバイオディーゼルの生産を主目的とする場合には、さらにまったく新しいアイデアが必要になると思います。しかし最終的に目的とすべきはそこでしょう。革新的な発見、技術、機器が、どの国の研究者・技術者から発表されるのか。競争は激しいですが、日本の企業、研究者にもがんばってほしいです。
                    日経バイオテク副編集長 小田修司
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
※※過去のメールはブログでご覧になれます。コメントもお寄せください。
http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/green/
※※日経バイオテク編集部のミニブログTwitter(ツイッター)アカウント。
http://twitter.com/nikkeibiotech 
◆「BTJ」の関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        農業/環境分野のバイオテクノロジー記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
ライオン、衣料用洗剤「トップ」に配合の酵素組成を7年ぶりに変更
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6363/
 
三井造船、マレーシアで廃棄物利用のバイオエタノール生産事業を目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6354/
Medicago社、米感染症研究所(IDRI)と単回投与H5N1インフルエンザワクチンを共同開発へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6250/
 
味の素、飼料用L-リジンの生産菌をより生産効率の高いものに変更へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6277/
 
三井造船とタジリがメタン発酵の前処理装置を開発、ごみの収集体系を大きく変えずにメタン発酵の導入が可能
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6185/
トヨタ自動車、バイオPETを内装表皮材として採用したレクサスを発売
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/6127/