セルロース系バイオエタノールの大規模生産を事業として手掛けるために、研究開発を続けている企業が日本にあります。X日鉱日石エネルギーと王子製紙は、ともにNEDOプロジェクトを通じて、必要な技術開発を進めています。単独になるのか、パートナーを募るのかはまだわかりませんが、両社ともに本気で事業化を検討していることを明らかにしています。
 しかし実は、2社だけではありません。三井造船もバイオエタノールの大規模生産を事業化することを、真剣に考えています。先日、取材にうかがったのですが、前述2社に劣らず、事業化に向けた準備が進んでいるようです。
 三井造船の事業モデルが他の2社と決定的に違う点は、「廃棄物」をバイオマスにしている点です。3社の事業モデルには、それぞれ特徴があるわけですが、私はこのアドバンテージはすごく大きいと思います。
 そのバイオマスとは、パームヤシの空果房(EFB)です。パームヤシからは、パーム油が採れます。パーム油を搾る際に排出される廃棄物がEFBです。世界のパーム油生産量の9割がマレーシアとインドネシアに集中しているので、当然、EFBもこの地域で集中的に発生します。廃棄物なので、以前にこのメルマガでもご紹介したように、バイオマスが無料または非常に安価、拠点への搬送システムができている、といったメリットがあります。
 EFBに含まれるセルロースの糖化技術は世界的にあまり例がないようで、技術開発が課題でした。しかしこの点については、デンマークInbicon社との技術提携を通じて、基礎技術をほぼ完成させたとのことでした。Inbicon社は、セルロース系バイオエタノールの生産技術開発で、現在、世界のトップを走っている企業といっていいと思います。
 さらに三井造船は12月28日に、マレーシアのパーム産業でトップシェアのSime Darby社と提携して実証実験を行うことも発表しています。Sime Darby社と強固な提携関係を築くことは、バイオマスとなるEFBの供給確保につながるメリットがあります。事業化を視野に置いた、手堅い一手だと思います。
 ちなみに、「なぜ、造船会社がエタノール製造?」と疑問に思う方がいるかもしれませんが、同社はバイオエタノール製造のプラント設計では、既に実績があります。JA全農が国から研究事業費を得て新潟県北蒲原郡聖篭町に建設した、1000kL/年の生産規模のイネをバイオマスとするエタノール製造プラント (2009年に運転開始)を設計したのは三井造船です。
 それぞれのアプローチで描く、日本の3社のセルロース系バイオエタノール生産の事業化への道筋がようやく見えてきました。3社ともに、展開が楽しみです。
                  日経バイオテク副編集長 小田修司
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