米DuPont社が、デンマークDanisco社の買収を発表しました。買収金額は62億ドル、約5200億円に上る大型買収です。率直にいって、米国の大手企業がDanisco社の酵素部門、つまりGenencor社を買いに動く可能性はあるかもしれない、と思っていました。同じように考えていた方は、結構、いらっしゃるのではないかと思います。
 セルロース系バイオエタノールの生産技術が、エネルギー・資源の確保で重要なキーテクノロジーになることは明らかです。そして「鍵の鍵」になるのが、セルロース糖化酵素です。コストと性能を併せ持つ酵素をこの分野で大量供給できる会社は、事実上、世界に2社のみの寡占状態です。1社がデンマークNovozymes社、もう1社が米Genencor社ですが、Genecor社の親会社はデンマークDanisco社ですから、おおもとは両社ともデンマーク資本というバランスの悪さです。
 エネルギー・資源の確保といった、安全保障にダイレクトにつながるマターに米国は敏感です。この状態をいつまで放置するのか、という疑問がありました。少なくとも2社のうちの1社は米国籍企業に「すべき」とか「「したい」とか「しよう」といった思惑が、いろんな場所で働くのではないかという気がしていました。
 米国企業(Genentech社とCorning社)のジョイントベンチャーとして設立された経緯を持つGenencor社は、米国への親和性はより高いのかなと。米DuPont社は2008年にDanisco社とジョイントベンチャーを設立して、セルロース系バイオエタノールの製造技術を共同開発するなどパートナー関係にありましたので、確かに買い手の有力候補であったと、今になっては思います。
 それにしても酵素部門を手に入れるために、企業まるごと買ってしまうとはさすがアメリカンですね。もっとも株式市場での買収の評価はいまいちのようで、DuPont社の株価は下げました。米国の銀行系アナリストからは「売上高の65%に当る食品添加物事業部門は他社に売ってしまうのではないか」との予想が出ているようです。
                    日経バイオテク副編集長 小田修司
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