バイオプラスチック市場に拡大のきざしがみられることについて、以前ここでお伝えしました。トヨタ自動車をはじめ、大企業がこぞって自社製品への本格的なバイオプラスチック導入を考え、そのための準備をしています。
 新年を迎えるまで2カ月を切りましたが、2011年は新しい素材の登場という点でも、バイオプラスチック市場にとって大きな転換点になると思います。ブラジルBraskem社が、サトウキビの廃糖蜜(モラセス)を原料とする「バイオポリエチレン」の商業生産・販売を開始することになっているからです。
 Braskem社はバイオポリエチレンの商業生産を2008年に発表し、プラントを新設するなど準備をしてきました。スケジュールに遅れはないようです。2011年の供給量は全世界で20万t。そのうち5万tを、豊田通商が日本を含むアジアで販売します。ちなみに2010年のバイオポリ乳酸の国内市場は5000t程度になるようです。
 バイオポリエチレンと石油由来のポリエチレンは、そのものの組成がまったく同じです。製品の物性は完全には同じではない可能性がありますが、それは「バイオ」だからではありません。製造する化学会社によって、添加剤やプロセスが微妙に変わるといった理由です。
 ポリエチレンは代表的な汎用プラスチック素材です。シャンプーのボトル、じゅうたん、ゴミ袋・レジ袋などもポリエチレンで作られています。
 バイオポリエチレンのコストは、石油由来のポリエチレンの1.3倍から1.5倍になるそうです。それを許容できるならば、2011年からは従来のポリエチレンの用途がほぼすべて、バイオプラスチックで代替できます。バイオポリエチレン100%の場合、植物度は95%以上です。現実に、資生堂は、自社の化粧品のボトルやチューブを2011年4月以降、バイオポリエチレン製に積極的に切り替えていくことを発表しています。
 これまでのバイオプラスチック素材には、耐熱性が低い、製造プロセスを変えなければいけない・量産ができない、着色しても発色が悪い、といったコスト以外の何らかの制約がついてまわっていました。うがった見方をすれば、これらの制約が消費者にとっても企業にとっても、作らない、使わない、買わないことの言い訳になっていた気がします。
 ポリエチレン製品については、来年からそんな言い訳ができなくなります。消費者はエコのための若干の価格アップを受け入れられるのか、企業が掲げるエコは本気なのかがためされます。当然、ボトル容器の素材の値段が30%上がっても、最終製品(例えばシャンプー)の値段が30%上がるわけではありません、念のため。
 バイオポリエチレンの登場は、バイオエタノール製造事業にも大きな影響を及ぼします。Braskem社がバイオポリエチレンの原料にしているのは、正確には、(モラセスではなく)バイオエタノールです。同社は、モラセスから製造したエタノールをブラジル国内のバイオエタノール製造会社から買って使用しています。
 もちろん稲ワラや資源作物から作ったバイオエタノールでも、問題なくバイオポリエチレンの原料にできるはずです。バイオエタノールは、「21世紀の産業の水」としてさらに重要さを増します。
               日経バイオテク副編集長 小田修司
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