ずいぶん前から予告していた「廃棄物からバイオエタノール」特集を書き終えました。10月12日発行の日経バイオテクに掲載されますので、お読みいただけると幸いです。
 さて、昨日は農業生物資源研究所・主任研究員の福岡修一さんを取材でお訪ねしました。「いもち病に強く、しかも美味しいコシヒカリ」の作出についてお話をお聞きするためです。昨年発表された成果なのですが、今後の目標も含めて、日経バイオテクでご紹介するためしっかり聞いてきました。
 研究の構想から10年以上、緻密な戦略と強靱な体力・精神力で勝ち得た研究成果です。面白かったと言っては失礼ですが、「コメの食味の試験は本当に大変なんです」とおっしゃっていたのが印象に残りました。仕事でひたすら数十種類のコメを食べるのは、いくらご飯が好きでも確かに辛いと思います。
 畑で栽培するイネ「陸稲」はいもち病にとても強いです。その形質が1つの遺伝子に由来することは、1960年代にすでに遺伝学的に分かっていたそうです。つまり「メンデルの法則」に合致していることが確認されていたわけですね。
 この遺伝子は交配によって水稲に導入することができますが、発揮される耐病性には弱点があります。それは、非主流のいもち病菌(変異株)には効果がないことです。そのため2年もすると、水田でその変異株が主流になってしまい、再びいもち病が流行するようになるのだそうです。病院内で抗生物質を使い続けると耐性菌による感染が広がる過程とよく似ています。
 この現象を踏まえて福岡さんは、効果は多少弱くてもよいから、特定のいもち病菌株だけでなく、非主流菌株も含めてさまざまな株に耐病性を発揮する別の遺伝子を探索するという研究戦略を立てました。それが1990年代のこと。その後延々と、ラボと圃場での実験が続きます。
 「今でこそスッキリしたストーリに見えて、記者レク(新聞記者への成果説明会のこと)なんかやると数分で話し終わりますが、育種研究には、実際には何年も何年もかかっているんです」と福岡さんは熱く話してくださいました。優秀な研究者らしく、説明がややはしょられることもありますが、とても気さくで素敵な方でした。また、お話をお聞きしたいです。
 7人目となる日本人のノーベル化学賞受賞で、「化学は日本のお家芸」とテレビのニュースが連呼しています。得意な分野は大切にすべきですね。イネの研究もまさに、他国にはゆずれない日本のお家芸。福岡さんにお会いして、この研究分野の奥深さを実感しました。大切にしなければいけません。
                日経バイオテク副編集長 小田修司
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