昨週のことになりますが、藻類研究に力を入れている自動車部品メーカー・デンソーの基礎研究所主幹・藏野憲秀氏の講演をお聞きしました。同社が最近、愛知県西尾市にあるデンソー善明工場の敷地内に設置した、微細藻類からのバイオディーゼル燃料生産の実験施設の概要が説明されました。
 実験施設は、工場に電力を供給している発電機の横に設置されました。発電機から出る高濃度のCO2を含む排気を、藻の培養槽に通気するためです。また、オイルを搾る前処理として藻を乾燥させるためには、発電機から出る廃熱を利用しています。さらに培養のために大量に必要な水は、工場で一度使用した水を排水処理して使っているとのことでした。
 デンソー以外にも、藻類研究に力を入れている自動車関連の企業がいくつかあります。ほとんどの場合、自動車が排出する、あるいは自動車を作る工程で排出するCO2を藻に固定させて自動車燃料に戻し、環境負荷を小さくしたい、といった目標を掲げています。デンソーの実験施設は、その「夢のサイクル」の研究の場としても注目です。今後も、この施設を参考に、同様の実証研究施設が設置されるのではないかと思います。
 培養槽の中で、太陽光とCO2から繰り返し燃料を生み出す藻類のポテンシャルは、本当に魅力的です。この分野の話を聞いていると、エネルギー問題も、環境問題もすぐに解決してしまいそうな錯覚を覚えます。しかし現段階では、藻類によるバイオ燃料生産、工場からのCO2の固定などの実用化は、まだまだ遠い先にあります。
 藻類は、単位面積当たりのエネルギー生産量がとても高い、非常に優れたバイオマスです。しかし現在の技術では、バイオ燃料を生産するために必要なエネルギーが大き過ぎます。そのため、工場から排出されるCO2を固定するために藻類を培養したことで、従来以上のCO2を排出するようになった、といったことになりかねません。生み出すバイオ燃料のコストダウンも、至難のワザです。ブレークスルーには、研究者・技術者の相当な努力が必要です。
 最近、藻類研究に、「第3のブーム」が来ているといわれます。約10年前、「第2のブーム」の際には巨額の国費が投じられ、やはりCO2固定やバイオ燃料の製造が研究されました。しかしその研究成果は十分に社会還元されたとはいえません。「事業化につながる成果を得るためのテーマの設定や、研究内容の評価の仕方に問題があった」との分析を、ある研究者からお聞きしました。今回のブームを「三度目の正直」にしたいところです。
                                 日経バイオテク副編集長 小田修司
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