本日、べーリンガーインゲルハイムの日本の動物薬事業を引っ張る伊林富男副社長とお話する機会がありました。ここでは、私が認識を新たにした事柄について簡単に記したいと思います。
 口蹄疫は2010年4月下旬に発生が確認されて、発生した農場の半径10km以内のウシやブタに対して、殺処分を前提としたワクチン接種が実施されてきました。5月26日までに、ウシ4万5827頭、ブタ7万9603頭にワクチンが接種されています。本日は、鹿児島県に近い都城市で口蹄疫が確認されて、消毒の徹底を中心とした防疫体制の強化が図られています。
 政府の対応が後手に回ったといった見方がある一方で、伊林副社長とお話していますと、本当に日本の対応は悪かったのかと、一般的な考え方と逆の思いが浮かんできました。口蹄疫と言えば、1997年に台湾で発生し、世界最大級の養豚地域ということもあり、17万頭を超える殺処分が実行されました。さらに、2001年にはオランダで発生して、やはり20万頭を超える殺処分が行われました。そうした他国の状況から見れば、日本だけが突出した被害を被ったわけではありません。さらに言えば、むしろ対応はうまく言っているとさえ言えるかもしれません。
 と言いますのは、重要なのは、そもそも日本に国産の動物向けワクチンがない中で現場が対応に当たったということです。日本の動物薬の環境ははっきり言って、お寒い限りです。化学及血清療法研究所(化血研)、京都の微生物化学研究所と、一部に独自ワクチンの開発を手掛けるところは存在しますが、日本の大手メーカーは動物向けワクチンの研究開発はほぼ手掛けていません。もっと言うと、日本メーカーは動物薬の研究開発から手を引いており、研究開発力は海外と比べると遠く及びません。日本の食糧自給率向上とうたわれていますが、畜産のリスク軽減に欠かせない動物薬で見れば、海外の研究開発資源頼みとなっています。ちなみに、口蹄疫ワクチンは、仏Sanofi-aventis社傘下の仏Merial社が扱っています。
 資源が元々ない中で、国内の現場が歯を食いしばっているというのが実情というわけです。動物薬はヒトの医薬と研究開発面のシナジーがありますし、今後、世界的に需要が伸びるところです。この分野で、日本は動けるのか。詳しいお話は、追ってリポートしたいと思います。
                         バイオ部記者 星 良孝
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