5月29日に、日本学術会議が「植物を活かす―植物を利用したグリーンイノベーションに向けて」と題してシンポジウムを開催しました。私は当日、日本農薬学会の集会取材に赴いていたのですが、植物科学を生かした産業という意味では農薬も共通しています。植物にまつわる国家プロジェクトの数が減少したことをきっかけに、改めて日本における植物研究の位置付けを探る機運が高まっているようです。植物科学をベースにした農業、あるいは工業が日本でうまく育つならば、それは望ましいことです。
 植物を生かした農業、工業を創出するとはどういうことか。エネルギー分野のバイオ、農業分野のバイオというのが、突き詰めると植物バイオです。まさに、これらエネルギー、農業の領域で産業を作り出すことが「植物を活かす」ことと言っていいのではないでしょうか。例えば、農薬は分かりやすい例と言えますし、海外企業が得意とする遺伝子組み換え作物の種苗事業を推進するというのも分かりやすい例でしょう。バイオ燃料もそうです。最近で言えば、藻類ベンチャーのユーグレナが、新日本石油や日立プラントテクノロジーの出資を受けて、藻類の作り出す油分で航空機向けのジョット燃料を作ろうとする動きが注目されました。
 日本の歴史を振り返ると、研究開発のシーズに関心が向いて、いろいろな企業が手掛けるようになりました。ですが、ヒットは数少ないという結果となりました。もったいないことです。
 じゃあ、いったい何が足りなかったのかと考えると、開発機能が足りなかったのではないでしょうか。開発のプロセスというのは、いわば愚直な実行を繰り返す部分で、直接は儲けにつながらず逆に資金のかかるところなのかもしれません。理論を検証していく段で、大量のファ クトを積み上げて、学術論文にならないような知識やノウハウを構築する。商業化に必要なデータの収集、整理、分析を繰り返す。市場の分析、競合分析、商品の中身、予算の作成、人員計画といった諸々のプランを作り、実行に移していく。シーズと商売をつなぐ重要な役割がありますが、きちん学術的、ビジネス的に、開発機能が相対的に軽視されていた可能性があるように思います。
 もっとも、「軽視されていた」というのは実態とは違うかもしれません。さらに考えると、関係者の心の持ち方に不十分なところがあったと言うべきでしょうか。言い換えれば、「根性」や「信念」、「志」といった青臭くも聞こえる要素が醸成されていなかった。と、この心の持ちようの部分は取材先の方のご意見から拝借しました。
 私なりに具体的に考えますと、若いうちから、研究開発から事業計画、予算策定までを経験できるような風土作りが必要なのではないかと思われました。モノの見方、心持ちを育てるためには、年長者が若手に思い切って仕事を任せる、さらに言えば地位を早期に次世代に譲るといった勇気を出さなけれ ばならないと考えます。植物を活かす、は開発機能の充実の観点から捉えてはどうでしょう。
                         バイオ部記者 星 良孝
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