今週はノーベル化学賞受賞者で、理化学研究所理事長を務める野依良治氏の講演をお伝えしました。野依氏は、「国立大学が差別化戦略を強化、推進していくべきだ」と強調しています。国を代表する科学者からの発言を聞き、国立大学の本格的な変革が進むのではないかと感じました。ウェブで全容はお伝えしましたが、以前より小欄で書いてきたテーマでもあり、ここに改めてお伝えいたします。
 野依氏の言う「差別化戦略」は実にシンプルです。各大学が強い分野を見極めて、ヒトモノカネの資源を集中させよというものです。欧米の大学の例を引いて、米Harvard 大学は生命科学、米MIT(Massachusetts Institute of Technology)は物理化学と、得意分野に特化する動きは先進国に広がっているといいます。日本の大学も欧米と同様に○○に特化した国立大学が必要になってくるのでしょう。小欄で、国立大学が、パナソニック大学、シャープ大学などとなってもいいのでは、とお書きしたことがありますが、方向性としてはそういった変革が起きてもおかしくないのかもしれません。
 野依氏の講演で挙げられていたことでもありますが、「学部」「研究科」の体制を変えなければならないでしょう。東京大学 を筆頭に、それぞれの大学が同じように、法学部、経済学に始まって、工学部、理学部、 農学部、医学部と多様な機能を抱えます。各大学が利用できる資源は多寡が生じてい ますから、さながら東大に倣った「ミニ東大」が全国に存在すると言ってもいいかも しれません。では、全国に総合大学が必要なのかと問われれば、今や「ミニ東大」 は必要ないのでしょう。例えば、工学系、理学系、農学系と抱える大学が、農学系に すべての資源を集中させるということがあり得ます。
 要は、護送船団では個性は出せず、野依氏の言う差別化戦略とはほど遠いということです。強みのあるところに集中し、効率的にヒトモノカネを生かす。言い方を変えれば強みのないところには手は出さない。大胆な「選択と撤退」こそが求められています。
 最近、評価の高い大学というと、秋田の国際教養大学、福島の会津大学、石川の金沢工業大学、大分の立命館アジア太平洋大学などがあります。いずれも「田舎の大学が成功できるわけない」といった下馬評を覆して大躍進しています。新興の大学ほど動きやすいわけですが、「歴史があるから」「図体が大きいから」と言って組織を変えられなければ、組織の生産性は上がらず、長期的に見れば、組織の弱体化につながります。下克上が起きてからでは、もう遅いわけです。
                         バイオ部記者 星 良孝
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