昨日、化学企業の社員の方といろいろとお話する機会がありました。日本経済団体連合会の会長に、住友化学の米倉弘昌会長が内定したこともあり、「これからは化学の時代でしょうか」などとやりとりしていました。が、話が進むと、「日本の化学は厳しい」という言葉も出て「なかなか大変だ」で一致してしまいました。
 2009年以降、中東や中国を中心に、日本最大手の出光興産の生産能力に匹敵する「エチレンクラッカー」が相次いで稼働し始めています。エチレンクラッカーは、ナフサから化学品の基礎であるエチレンを作り出すプラントです。今、中東、中国で動き始めたプラントの生産能力は年間100万t級です。最新鋭の設備ですから生産効率も高いでしょう。石油化学工業協会によると、日本最大手の出光興産のエチレン生産能力がおよそ100万tで、そのほかの大手、中堅企業の生産能力が50万t前後。海外と比較すると、国内は太刀打ちすることが非常に難しくなります。
 米倉会長が日本経団連の会長に推された要因もエチレンと関係します。ちょうど住友化学は今年、サウジアラビアでエチレンプラントを稼働させました。エチレン生産量は年間130万tで世界最大規模となります。総工費が約1兆円で、住友化学にとっては石化製品の価格が低迷すれば投資負担が経営基盤も揺るがしかねません。まさに、これは大勝負です。この事業はラービグ計画と呼ばれており、住友化学のグローバル戦略の象徴として語られます。
 要するに、化学を取り巻く情勢が急変しているわけで、実は、バイオリファイナリーの見方も当然変わってくると見た方がよいのでしょう。化石原料系と、バイオ系の化学とを有機的につなげて考えていく視点がますます求められそうです。現状では、日本では粛々とバイオリファイナリーの研究が進んでいるという感があります。先日、地球環境産業技術研究機構(RITE)の湯川英明・バイオ研究グループリーダーとお話ししていましたら、バイオリファイナリーの問題を、「もっと経済問題ととらえて、もっと論じられなければ」と伺いました。まさしく、現在の急速に変わる環境で、バイオリファイナリー研究への注力の仕方、実用化へのタイムスケジュールについて、経済的な問題を含めて考えるべきなのでしょう。
 湯川氏とお話ししていて、「日本で、グリーンイノベーションのイメージ、特にバイオマス利用にかかわるイメージが固まっていませんね」という考え方で共通していました。グリーンイノベーション、その中でもバイオマス利用をしようと言うわけですが、実用化の絵がぼやけていると見えます。一部に研究はあるのですが、メジャーでありません。
 島津製作所の創業二代目に当たる島津源蔵氏が、箴言を残しています。「学理を教えたらその応用を考えなくてはならない。死に学問ではだめだ」。まさしく、日本のバイオリファイナリーは岐路に立たされているのでしょう。
                            記者 星 良孝
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