事業仕分けをきっかけに、日本がどこへ向かうのかについて関心が高まっているように思います。先週から3回連続で「日本の向かうべき道」について3つの観点で「担当者より」を構成します。スペースは限られていますので、「考えるヒント」にとどまるかと思いますが、「ジャパンスタンダード」「異分野連携」「地域の役割」の視点について書いてみたいと考えます。2週目のテーマは異分野連携です。
 異分野連携は重要と言われますが、難しいのは、実際問題としては異分野連携が進まないことです。
 昨日(12月9日)、1980年代に旧中国工業技術試験所(現産業技術総合研究所中国センター)で所長を務めた中山勝矢氏と話す機会がありました。「異分野連携どう進めればよいか」と問うていたのですが、中山氏は「いかに上を乗せられるかだ」と強調していました。プロジェクトというものは、元来、大学や企業といった異なる仕事に当たる組織同士を組み合わせるものです。それこそ、まさしく異分野連携であり、中山氏は官僚時代に、今で言えば「オープンイノベーション」の創出に向けて苦労したこともあったようです。昔も今も、キーパーソンを見つけ、ビジョンを描いてもらって、組織の長の納得感を引き出すことは重要なのでしょう。異分野連携を促す上で「上を動かす」は、大切な考え方と思います。
 さらに踏み込んで言えば、ここで重要なのは「ビジョンを描く」ことなのでしょう。異分野連携は「手段」であって「目的」ではありません。重要なのは、前提として、組織が向かう方向が固まっていることです。目的は価値を創造することです。さらに言えば、今の日本は、次の価値、ビジョンを描けなくなっている、ということでないでしょうか。「ナノ」「バイオ」「環境」「エネルギー」という題目にとどまらず、小学生の子供でさえも共有できるような鮮やかな将来像が必要とされていると言えないでしょうか。さらに言うと、戦略を描くためには、日本の強みを明確にする必要があります。先週書きました観点であるジャパンスタンダードを固めることに意味が出てきます。日本全体の強みを明らかにし、根拠に基づいた戦略を打ち立てる。ビジョンが決まれば、さまざまな組織が動きやすくなるということです。
 では今、いったい何をすべきかという問題があります。私は、政治経済が混乱し“北風”が吹く中であっても、とにかくビジネスの可能性を検証するしかないと考えます。例えば、植物工場を巡る動きは象徴的です。植物工場がビジネスとして成立するかどうかという議論はありますが、この目に見えるビジネスチャンスを巡り、あらゆる分野の企業が事業化の可能性を探っています。寒冷地の中で、一部分だけ過熱しているようで、バブル的ではありますが、ビジョンが生まれるとはそうしたことなのでしょう。ほかの分野でも植物工場に該当するような目に見えるビジネスチャンスが眠っているはずです。事業仕分けで勃発した混乱に右往左往するより、自前のビジョンを描き出し、戦略を明確にすることこそが大切です。
 小欄で述べましたけれども、本質的には日本の研究開発力が問われていると考えます。現代の重要課題に浮上している環境、農業分野にかかる期待は大きいといって間違いないでしょう。今、小欄をお読みの方々の双肩に、日本の将来がかかる面は大きいのです。進化論では、強い者が勝つのではなく、環境に適用できたものが勝つ、というのは常識のようです。現在は、強い者が力を持てあましている状況でしょう。これまで述べました通り、戦略の土台となるビジョンを作り適用すべき環境を整える。それで初めて、環境に適用する勝者が生まれてくる。繰り返しになりますが、異分野連携は1つの手段です。
                              記者 星 良孝
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