事業仕分けを機に、「日本の向かうべき道」についての関心が巷間高まっているように思います。そこで、今週から3回連続で、日本の向かうべき道について3つの観点について触れたいと存じます。場も限られていますのであくまで「考えるヒント」になるかと存じますが、「ジャパンスタンダード」「異分野連携」「地域の役割」という3つの視点を提案します。1週目のテーマはジャパンスタンダードです。
 東京大学前総長で、三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏が、著書『「課題先進国」日本』で、日本がリーダーシップを取る重要性を説いています。小宮山氏によると、旧来の日本人の特徴には、皮肉っぽく言うと、「出羽の守」「御用学者」という面があるそうです。出羽の守とは、「では」の多用を指しており、「米国では…、欧州では…」と、海外のモデルを追いかけるだけに終始する人のことです。一方の御用学者は「誤用学者」を言い換えたもので、ではのかみと同様な意味になるかと思いますが、海外のモデルを誤用することだそうです。いずれも先進国を追い続けてきた「後進国根性が抜けない日本」を象徴しているといいます。
 小宮山理事長が強く訴えるのは、「日本にとって他国のまねをする時代は去っており、日本が自ら戦略を描け」ということです。日本は環境問題、少子高齢化問題といった課題に対して、他国に先んじて相対している、だから、課題解決も他国に先んじて取り組めると言います。日本は他国を追うのではなく、自らの視座を定めて「真の先進国」を目指すべきだということです。
 環境、農業バイオの場所から見た時に、真の先進国とは、何をもって言えるでしょうか。私は、それは例えば、日本酒、味噌、醤油などの食品工業から生まれた微生物研究であり、研究室から農場までの一貫体制で取り組むことで世界に冠たる製品を生み出す農薬研究の領域などであると思います。もちろん、いろいろあります。お読みの方々、あるいはその周辺にも、「我々が自信を持って世界一である」と胸を張っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。まさに、その方々が日本の先進国性を体現してくるのではないでしょうか。
 日本はこれが一番売り物であるのだ、それを徹底的に明確にしていくべきと考えます。それが、世界に誇るべき日本発の標準、いわばジャパンスタンダードです。「我々はこれを標準していく」と主張するのです。自信を持って語るのは勇気がいることです。しかし、先駆者として突き進む場合、当初は十分な根拠を持っていないことがほとんどなのではないでしょうか。今の日本には、勇気が必要であるように思います。私は日本発の標準を考える上では、情報が足りないと思います。例えば、世界一の技術を保有する企業はどこに存在するか、さらに細かい例で言えば、日本のバイオディーゼル燃料の生産量の年次推移はどうなっているかなど、企業機密にかかわる情報もあるかと思いますが、ごく基礎的な情報で、誰もが参照できておかしくない情報の中に、アクセスできないものが存在しているように思います。
 総合科学技術会議は、十分だったのでしょうか。以前に、この会議設置の発案者の一人と言われる、東レの前田勝之助名誉会長は私の取材に対して、「ゼロだったところに作ったのだから、不十分でも仕方がない。これからより強いものにしていく」といったことを語っていました。まさに、これからが日本の機軸を作っていく正念場なのでしょう。この会議を事業仕分けのように、ライブで公開するというのも興味深い取り組みかもしれません。実践してみたい試みはいろいろあるのではないでしょうか。
                              記者 星 良孝
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