ゴールデンウィークをはさんで、2009年3月期決算の発表が相次ぎました。 今週は、農業・環境バイオ産業にかかわる総合化学および繊維、プラント企業の業績発表が続きました。長光大慈記者が連続でお伝えしています。
 決算内容を一言で言えば「苦戦」でしょうか。総合化学を見ると、旭化成は黒字を守りましたが、三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学が純損失を計上しているほか、東レ、帝人、三菱レイヨンも最終赤字となり、化学にかかわる企業はいずれも苦戦を強いられています。
 業績が厳しい企業でも、農業および環境にかかわる事業は堅調でした。例えば、住友 化学は、連結で592億円の赤字でしたが、農薬事業を含めた農業化学は売上高が8.8%増 の2222億円、営業利益は16.7%増の244億円でした。世界人口の増加、それに伴う食料 需要の増加で、農薬の売り上げが伸びています。
 過去最大の赤字を記録した帝人も、医薬医療事業は14.5%増益となりました。
 しばらく各社は人員削減を含めた事業構造の改革に本腰を入れるようです。その中で、農業や環境分野は、底堅い市場として、従来以上に注目されることになるでしょう。折しも、私は日経バイオテク5月11日号「特集」で農薬を取り上げました。見出しは 「日本勢が原体開発を強化、自社開発品で世界市場へ─農薬開発の最前線」。農薬市場は、新たな作用機序の薬剤が次々と開発されています。基礎的な技術を持つ企業は、成長余地の大きな分野と期待しています。実際に、クミアイ化学工業、石原産業、日本農薬といった独自性の高い企業が、新薬開発に血道を上げています。
 農薬に限らず、自社の技術力を生かせる分野をどう見極められるかが問われています。
私は事業構造改革の観点で、旭化成に注目してきました。90年代後半、利益率が大きく落ち込みました。その時に、選択と集中を進めて、繊維事業を大幅にリストラすることを含めて、技術を生かせる分野に集中しました。新規の地形は花を咲かせるまでに時間はかかりました。ですが、09年3月期に、化学系企業が大幅に収益を悪化させる中で、黒字を維持できたのは10年前の眼力が今に生きたからと見えます。
 その旭化成は再び事業の選択と集中に着手するようです。同社に限らず90年代の経験を踏まえて、 賢明な事業改革を進める必要があるでしょう。
                              記者 星 良孝
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