2009年4月27日、政府が2009年補正予算案を了承したのに合わせて、農林水産省が同省に関係した補正予算案の詳細を発表しました。科学技術にかかわる項目はバイオテクノロジーの領域に根ざしたものが多く、農業バイオのカテゴリーの成長への政府の期待の高さを垣間見るようでした。
 今週、私はこのことについてお伝えいたしました。農林水産省の案の3本柱は「エネルギーの地産地消」「植物工場」「多収量イネ」の研究になると書きました。
 前々から、農林水産省は「バイオマスタウン構想」を推進してきました。2009年2月末までに172市町村が参加しています。目標は2010年までに300市町村です。バイオマスタウンは、市町村で出たバイオマス資源の再利用を進めて、循環型の社会システムの構築、資源再利用に通じた人材の育成、情報の発信、新たな産業の育成を図ろうとするものです。
 今回の補正予算案では、「地域資源利用型産業創出緊急対策事業」という項目が盛り込まれて、地域における再生可能エネルギー利用促進の支援が打ち出されました。バイオマスタウン構想の考え方に沿うものと見られます。私は、この緊急対策事業において、「バイオマスのガス化」に重きが置かれたことに興味を覚えました。
 バイオマスの利用方法としては、そのまま燃焼させる、バイオエタノールに変換するといったもののほか、ガス化して利用することが日米欧で注目されてきました。今回、農水省の事業で採用されるのは、長崎総合科学大学が中心となって開発した「農林バイオマス3号」です。バイオマスのガス化プラントの研究を水面化で進めている日本企業はほかにもあります。ですから、今後、バイオエタノールと並んで、バイオガスの利用に脚光が集まることが想定されます。
 そのほか、植物工場や多収量イネといった技術開発に相対的に厚い予算が組まれています。植物工場は設備や運営の高コストが問題で、施設栽培を置き換えるにはややインパクト不足の感が否めません。ハードルが高くとも植物工場事業を推進する意義は、日本の技術が多面的に生かせるということでしょう。建設、光源、水処理、制御技術など産業の裾野が広く、事業が推進されることは日本の農業のみならず、工業にとっても重要と見えます。多収量イネの研究においては、遺伝子組み換えイネの研究が強化されるようです。日本国民は遺伝子組み換えに対してアレルギーを持っており、研究強化は遅々として進みません。大きな前進はそう易々とはかなえられないかもしれませんが、これから新しい研究成果、情報が生まれることは想定できそうです。
 今後、経済産業省や環境省が、関連の補正予算案の詳細を発表してくると、さらに日本の農業・環境バイオの研究の方向性を考える新しい判断材料が出てくるでしょう。
 なお、BTJ/GreenInnovationメールは1週間お休みいたしまして、次回は5月14日に配信にいたします。
                              記者 星 良孝
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