この1週間ほどにわたって、微生物農薬についてインターネット上でお伝えしました。併せて、販売元である出光興産の微生物農薬事業の育成戦略についても書きました。
 農薬世界最大手のシンジェンタによれば、今や、農薬の開発は医薬品の開発並みに難しくなったと言います。特定の害を持った菌や虫だけを防除する抗菌剤および殺虫剤、特定の雑草にだけ防除効果を示す薬剤など、高度な機能を持った薬剤の開発が世界で進んでいます。そうした中で、出光の微生物農薬は存在感を高めているようでした。
 2月に、住友化学と共同開発して、出光は「ゴッツA」という新製品を発売しました。農薬事業の規模で比べれば、住友と出光の差は50倍近くの開きがあると見られます。もちろん、出光の連結売上高で比べれば、住友に引けを取るものではありません。そうはいっても、事業規模の差がある中で、対等にプロジェクトを進めるのは容易ではないでしょう。
 出光興産のアグリバイオ事業部の坂井昌和氏、尾川新一郎アグリバイオ一課担当課長がインタビューでおっしゃっていたことで面白いのは、社外から微生物農薬の候補となる開発案件が集まっているということ。他社が出光を頼ってくるわけです。
 一言で言えば、先行者の利でしょうか。出光は収益が出にくい中で30年近くも微生物農薬の研究に資金を費やしてきました。出光が非上場企業だったという特殊な要因はありました。遂に、出光は、微生物農薬の技術や営業戦略で他社に頼られるまでの地位を得ました。出光の微生物農薬の強さを見ると、短期的に利益が出にくいところに対しても投資を続ける大切さが見て取れます。
 経済危機の中で、研究開発費を確保するのは、企業ならずとも難しくなっていると聞きます。外部環境が厳しくとも、ほかと差別化できる技術は重要視していくべきなのでしょう。小さな技術のタネがどのように花を咲かせるか、出光の事業育成の経緯から学ぶことができます。
                              記者 星 良孝
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