あっという間に師走突入です。私は昨日、経済産業省が進めている「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発」の中間評価検討会に行ってきました。
 このプロジェクトは、ヒト用医薬品や動物用医薬品、機能性物質など、有用物質を植物に作らせようという目的で立ち上げられた、2006年度から2010年度までの5年間のプロジェクトです。傘下に13の個別プロジェクトがぶら下がっており、中間評価検討会ではこれまでの成果などが発表されました。
 13の個別プロジェクトの中には、無毒化したコレラ毒素を発現するワクチン米の研究や、ヒトチオレドキシンを発現するレタスの研究、ミラクリンを発現するトマトの研究などが含まれています。一部の研究成果は、日経バイオテクでも報道してきました。中間評価では、プロジェクト全体にわたっておおむね良好な評価が得られたようです。
 中でも高い評価を受けていたのは、サントリー生物有機科学研究所による「組み換えレンギョウ等による高機能性成分生産及び閉鎖系での栽培システム構築の開発」。サントリーはゴマに含まれるリグナン類のセサミンを栄養補助食品として販売していますが、現在セサミンはゴマサラダ油の副産物を原料に精製しています。ただ、セサミンの需要が伸びていることから、セサミンを獲得する目的で大量のゴマ油が廃棄物になるという事態が起きています。
 そこで、モクレン科レンギョウ等の葉にセサミンの生成能力を付与して、閉鎖系施設で栽培しようという訳です。具体的には、ゴマ種子で二次代謝産物のピノレジノールからセサミンが生合成されることが分かっており、レンギョウの葉にピノレジノールが豊富に生成されるので、それを利用して必要な遺伝子を発現させたり不必要なものを発現抑制したりし、レンギョウにセサミンを作らせる計画です。これまでの研究では、組み換えレンギョウの作製法を確立し、組み換え体でセサミンが生成することを確認。さらにレンギョウ類の栽培条件などが決定したところです。
 全体的に研究は順調に進んでいるものの、実用化に当たって大きな課題になりそうなのが、組み換え植物を使った医薬品原材料生産(PMP's)。野外栽培を念頭においてPMP'sの開発が進んでいる欧米とは違い、このプロジェクトではPMP'sの閉鎖系での栽培を念頭においているので、その当たりは日本の研究の強みといえるでしょう。
 ただ、PMP'sに関しては、米食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品審査庁(EMEA)が既にガイドライン案を作成しており、日本は一歩遅れた状態です。閉鎖系での栽培を念頭に研究を進めている日本の強みを生かすためにも、規制の整備が望まれるところです。
                               記者 久保田文
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