昨日、弊社が主催する「再生医療産業化への鍵」というセミナーに取材がてら参加しました。ご存知の方も多いと思いますが、国内では2007年10月、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の自家培養表皮「ジェイス」が重症熱傷の治療用医療機器として承認され、唯一薬事法で認められた再生医療製品となりました。保険収載に時間がかかっているため本格販売はこれからですが、再生医療の産業化という意味では、既に1歩目が踏み出されています。
 セミナーでは、J-TECが承認を得るまでにどのような苦労があったか、といった点についての話題がありました。製品規格をどう定めるか、出荷検査をどうするか、保存用の容器はどうするか、物流はどうするか、医師は製品を使いこなせるか、などなど。これの苦労は、再生医療が従来の医薬品や医療機器に当てはめられないから生じた課題です。ただ、裏を返せば、これらの課題を解決したことでノウハウが蓄積され、それが同社の強みになりつつあります。
 再生医療産業のイメージがかなり具体的になってきました。それは、製造法や検査、保存容器など、複数の特許でゾーンを作り、さらにノウハウや人材で周りを固めて強みとするようなイメージです。ただし、ジェイスのような自家再生医療では市場が限られてしまうため、ある程度スケールメリットを発揮して、産業にするには他家再生医療への拡大は欠かせませんが。
 この話を聞いて、私が思ったのは、バイオテクノロジーの化学産業への応用にも似たような面があるということです。微生物や酵素を組み合わせて触媒として利用し、汎用化学品を製造しようとすれば、従来とは異なる人材の育成もノウハウも必要です。
 化学メーカーの中には、世論だけでなく従来とは異なる技術であるという点から「汎用化学品を作るのに、組み換え微生物を使いたくない」と考えるところもあります。大学教授の中には、「今までのように誰でもできるような方法を開発しないとだめだ」という方もいます。ただ、微生物や酵素といったコア技術に加えて、人材やノウハウで周りを固めれば、それこそが強みになるわけです。
 「従来の化学産業と同じようにしないと…」、と考えてばかりでは、新しいものは生まれません。既存の型に当てはめてばかりでなく、違いを強みに変えるにはどうすればいいかを考えることが重要だと実感した一日でした。
                               記者 久保田文
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