08年11月14日号のScience誌に、理化学研究所の大熊盛也チームリーダーらの研究グループによる研究成果が発表されました。イエシロアリの腸内原生生物であるシュードトリコニンファ・グラッシイの細胞内に共生するCfPt1-2細菌のゲノムを完全解読したという論文です。
 CfPt1-2細菌は、イエシロアリの腸内細菌群の7割を占める共生細菌です。今回のゲノム解読により、この細菌が空気中の窒素を吸収してアンモニアを作り、それを使って必須アミノ酸やビタミンを合成していることが分かりました。ちなみにCfPt1-2細菌のゲノムサイズは約1.1Mbpと小さく、細胞壁や防御系、膜間輸送系などは退化していましたが、アミノ酸合成系とビタミン合成系は豊富で、無駄のないスリム化されたゲノムだということも明らかになりました。
 シロアリの餌である木質には窒素分がほとんど含まれていません。そのため、1980年代からシロアリの共生微生物が何らかの方法で窒素を固定していることは分かっていましたが、そのメカニズムが初めて明確になったわけです。窒素固定する細菌として、植物に共生する根粒菌の存在は知られているものの、動物に共生している細菌は知られておらず、窒素固定の新たな可能性を開く論文ともいえそうです。
 現在は、シュードトリコニンファ・グラッシイもCfPt1-2細菌も、培養することができません。しかし、将来研究が進めば、例えばCfPt1-2細菌を、糖化や発酵を行う微生物に共生させて、窒素源を投入する必要のない生産系を組み立てられるかもしれません。そういう意味では、微生物を使ったものづくり全体に、応用できる可能性があります。
 米国ではエネルギー省(DOE)などが、シロアリやその腸内細菌のセルラーゼをメタゲノムの手法を用いて解析するプロジェクトを進めています。その影響もあって、これまでシロアリというと“セルラーゼの研究”と思いがちでしたが、今回の論文でシロアリの腸内の奥深さについて思い知らされました。
                              記者 久保田文
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