チッソと福井県立大学の濱野吉十講師の研究グループが、初めてポリアミノ酸合成酵素を発見し、その合成メカニズムを見出しました。
 この研究成果は、08年8月に仙台で行われた第60回日本生物工学会大会で発表されており、以前このメールでもちらっと触れていましたが、論文投稿中だったこともあって取材ができておりませんでした。その後、Nature Chemical Biology誌に掲載されることが決まって、あらためて会見がありました。
チッソと福井県立大、ホモポリアミノ酸合成酵素を発見し、合成メカニズムを初解明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7470/
 チッソは自然界から単離した放線菌Streptomyces albulusを育種、培養して、ホモポリアミノ酸であるε-ポリ-L-リジン(ε-PL)を食品保存に使う添加物として販売しています。ε-PLは、25個から35個のL-リジンのε-アミノ基とα-カルボキシル基がペプチド結合でつながった直鎖状のホモポリアミノ酸で、その生合成メカニズムを調べようというのが共同研究をスタートさせたきっかけです。
 興味深いのは、ポリアミノ酸合成酵素がこれまで知られているジペプチド合成酵素などと異なるメカニズムで合成を行っていたということ。一般的にペプチド合成酵素(NRPS)は、アミノ酸を活性化するドメイン(Aドメイン)、結合するドメイン(Tドメイン)、縮合反応を行うドメイン(Cドメイン)の3ドメインが並んで1つのモジュールを作っており、そのモジュールが結合するアミノ酸の数だけ複数つながった構造をしています。例えば、ジペプチド合成酵素なら、2つのアミノ酸を結合するので2モジュールという具合です。
 一方、今回発見されたポリアミノ酸合成酵素(膜たんぱく質)は、AドメインとTドメインに、3つのCドメインが並んだ構造をしており、2量体で筒状になって機能していました。それによって数十のアミノ酸をペプチド結合させていたのです。この研究により、酵素の構造、ドメインの役割、合成のされ方はほぼ分かりました。
 ただし、どのように結合させるアミノ酸の数が決まるのか、なぜ2量体の筒状で機能するのか、といったことはよく分かっていません。特に、筒状という点に関しては、ポリアミノ酸合成時、合成されつつあるリジンの鎖が(何に結合しているわけではないのに)筒状のポリアミノ酸合成酵素近くに引き寄せられたまま反応が進むため、「そのことと筒状であることが関係している可能性がある」と、チッソの研究担当者は話していましたが、これらの点は今後の研究課題になりそうです。
 いずれにせよ酵素には、副反応が起きない、基質特異性が高いといった強みがあります。この研究成果は、化学触媒よりも低コストで純度の高いポリマーを製造する技術につながるかもしれません。チッソはポリアミノ酸合成酵素のアミノ酸配列を変えるなどして基質特異性を広げたり、より多くのアミノ酸を結合できるようにし、機能性ポリマーや特殊用途のプラスチックの合成に利用したい考えです。
 とはいえ、現状では、具体的な出口があるわけではない様子。ポリアミノ酸合成酵素を生かすには、用途開発を進めるための新たなパートナーが必要になりそうです。
                               記者 久保田文
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
◆BTJの関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           農業・環境関連の記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
チッソと福井県立大、ホモポリアミノ酸合成酵素を発見し、合成メカニズムを初解明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7470/
海外発表、Syngenta社、ブラジルでサトウキビ植え付け技術を商業化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7558/
海外発表、POET社、
セルロースエタノールの原料となるトウモロコシ芯の収穫技術を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7557/
海外発表、DuPont社とPioneer社、根こぶ病に耐性のあるバイブリッドカノーラを開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7556/
※※記事全文をお読みいただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/