みなさん、こんにちは。今日は九州大学の花井准教授に寄稿していただきました。花井准教授は、2008年度からの新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「バイオマスエネルギー先導技術研究開発」で、神戸大学の近藤昭彦教授と「大腸菌によるイソプロパノール生産の研究開発」を進める研究者の方です。最近の研究動向などにも触れられているので、ぜひお読みください。
 さて、早いものでもう10月ですね。毎年秋になると、(弊社も主催者に加わっている)BioJapanの季節だ、と思います。編集部では、手分けしてバイオジャパンを取材するので、BioJapan=運動会、みたいな位置付けなわけです。ただ、私はここ2年ほど締め切りなどの関係と、急なニュースが入ったときのために、会社で待機していた覚えがあるので、今年こそ取材したいと考えています。
 そこで、本日は環境バイオの観点から、注目セミナーをご紹介したいと思います。ちなみに、ほとんどのセミナーが既に満員のようなのですが、立ち見でも聴講可能ですので、ご興味があれば当日、直接会場となるパシフィコ横浜に足をお運びください。
詳しい開催概要やセミナーのスケジュールはこちらからどうぞ。
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/
 今年は例年になく環境バイオのセミナーが目白押しなので、取材したいセミナーは多いのですが、その中でも特に一押しはこの2つです。
 その1:10月15日10時からの基調講演、米NatureWorks社のMarc Verbruggen氏。NatureWorks社はご存知の通り、トウモロコシ由来のポリ乳酸の製造・販売事業を手がけている企業です。帝人の出資などを機にポリ乳酸生産量の拡大を図っています。詳しい講演内容はわかりませんが、個人的には原料についての考えなど聞ければ面白いなと期待しています。
 その2:10月16日15時からの「バイオマスからのポリエチレン生産」、ブラジルBraskem社のAntonio Morschbacker氏。Braskem社は、南米最大の化学メーカーで、2011年までに世界で初めて植物由来のポリエチレンを商業生産する計画を立てています。ちなみに日本を含むアジア地域では豊田通商が販売提携契約を結んでいます。
ブラジルBraskem社と豊田通商、サトウキビ由来ポリエチレンで業務提携
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6404/ 
 また、まだ少しだけ席が残っている環境バイオのセミナーとして、読者の皆様にオススメしたいのは、10月15日15時からの「新世代に入った農業ビジネス」です。講演では、サントリーの田中良和氏が遺伝子組み換え花きの開発について講演するほか、農業・食品産業技術総合研究機構の山本俊哉氏がDNAバイオマーカーによる品種判別について講演します。
 これらの講演などに関しては、日経バイオテク・オンラインでも報道したいと考えておりますので、ぜひそちらもチェックしてください。では、会場でお会いしましょう。
                              記者 久保田文
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
◆BTJの関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  システム生物学のバイオ燃料生産への利用
              ――九州大学大学院農学研究院の花井泰三・准教授
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■ システム生物学
 システム生物学がバイオ燃料生産にとって、重要であることは様々な場面で指摘されています。今回は、システム生物学のバイオ燃料生産への利用について書かせていただきたいと思います。
 「システム生物学とは、ScienceやNature誌に北野によって提案された、実験と計算の両手法を駆使して、生物をシステムとして理解する研究分野です。なお、この研究分野は、システム同定(system identification)、システム解析(system analysis)、システム制御(system control)、システム設計(system design)と呼ばれる研究課題に分けられます」(出典:バイオテクノロジージャーナル、上田泰己)。
 システム同定とは、メタボローム、プロテオーム、トランスクリプトームなどのデータを利用して、遺伝子やタンパク質の相互作用ネットワークの推定などを行うことです。また、システム解析は、代謝系の各生体分子の反応速度などを明らかにして、数理モデルなどを構築することで、システムの動的な挙動を明らかにしたり、大きな影響を及ぼす反応を特定することです。
 さらに、システム制御とは、培地や温度などの外的な要素を人為的に変えることで、システムの内部の仕組みを利用しつつ、システムを望みの状態に制御するものであり、最後のシステム設計は、システム内部を変更することでシステムを望みの状態にするための遺伝子やその仕組みを設計することが相当します。
■バイオ燃料生産への利用
 生産されたバイオアルコールなどは一般的に生産菌などに毒性を示しますが、このメカニズムの解明や、耐性向上にもマイクロアレイデータなどを利用したシステム同定が、盛んに行われています。
 Stephanopoulosが提案したように、代謝工学を「遺伝子組み換えDNA技術を用いて細胞内の反応の改変や新しい反応の導入により、目的の物質生産や菌体の特性の改変を目指すこと」と考えると、システム生物学のシステム設計とも見なすことができると考えられます。代謝工学によるバイオ燃料生産の研究は広く行われておりますから、このような考えに基づくと、様々なバイオ燃料生産の研究にシステム生物学がすでに広く関わってくると理解できます。
 有名なGenencor社とDupont社によるプロパンジオール生産用の大腸菌の分子育種でも、モデリングによる予測技術が時間短縮に役立ったと報告されています。今後も、バイオ燃料生産の展開には、システム生物学がとても重要であると再認識させられます。
■我々のグループのバイオ燃料生産へのアプローチ
 我々のグループでは、UCLAと共同で大腸菌にアセトン-ブタノール-エタノール発酵菌であるClostridium属細菌の遺伝子を導入し、グルコースからn-ブタノールまたはiso-プロパノールの生産を行いました。また、Clostridium属細菌がn-ブタノールを生産する経路とは異なる2-keto acidからアルコールを生産するEhrlich経路を利用し、iso-ブタノールを20g/l以上生産することに成功しました。
 また、佐賀大、九州大学、前橋工科大と共同で、Clostridium属細菌のシミュレーションモデルを作成し、システム解析を行うことで、どの酵素の発現量を調整すれば、ブタノール濃度を向上させられるかを明らかにしています。これら以外にも、システム解析に必要なクラスタリング、遺伝子ネットワーク解析などのマイクロアレイ解析技術の開発等も行っております。
 今後は、これらシステム生物学的なアプローチで、実験と計算の両面からバイオ燃料生産の研究を進めていきたいと考えております。皆様方のご支援をいただけましたら、幸いです。                         
                               (花井泰三)
 
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海外発表、Cold Spring Harbor研究所、
トウモロコシの穂の形成に必須な遺伝子を発見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6409/
ブラジルBraskem社と豊田通商、サトウキビ由来ポリエチレンで業務提携
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6404/
海外発表、Iogen社、Shell社へセルロースエタノールの供給を開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6398/
みつばち研究助成に応募が222件、山田養蜂場が若手研究者に総額1億円
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6239/
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