みなさん、こんにちは。いよいよ洞爺湖サミットが来週に迫り、都心も厳戒態勢です。ものすごく警察官の数が増えました。環境と食糧がメーンテーマですので、バイオ関係のネタもいくつかありそうです。私は取材には行きませんが、関連のニュースは日経バイオテク・オンラインで報道したいと考えています。
 その関連で、先週報道したのがBT戦略推進官民会議のニュースです。洞爺湖サミットに間に合わせるべく、内閣府が外部有識者を集めて作っていたBT戦略推進官民会議の中間とりまとめ案がまとまりました。
 端的にいうと、環境・農業でもバイオテクノロジーを活用しよう、という中間とりまとめ案です(細かく言うと、医薬品や医療機器の話も盛り込まれていましたが、これは別に官民対話が発足していますので、それをサポートしていこうという内容にとどまっていました)。具体的には、非食用のセルロース系バイオマスなどから燃料や化学品を作ろう、食糧自給率を上げるべく組み換え作物も視野に入れてフィールドテストなどをしよう、といった内容です。
 ただ、バイオマス利用はともかく組み換え作物に関しては、この文字通りに行くのか、かなり先行き不透明です。北海道などの条例に現れているように、国内で、組み換え作物をどんどんテストしていこうという状況ではありませんが、といって何か有効な手立てがあるわけではないからです。BT戦略推進官民会議でも、この点については「リスクコミュニケーションの専門家を交えて、ゆっくり理解を得ていくしかない」といった意見が出るにとどまり、状況がすぐに変わるというわけではなさそうです。
 さて本日は、神戸大学の近藤昭彦教授のご紹介で、三重大学の田丸浩准教授にご寄稿をいただきました。米国の今がつまった内容ですので、ぜひお読みください。今号から、オピニオン欄をすぐ下に移動しましたので、ご注意ください。
                              記者 久保田文
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       米国におけるバイオ燃料研究の最前線
               ――三重大学大学院生物資源学研究科・田丸 浩
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 三重大学の田丸と申します。よろしくお願いいたします。さて、はっきりしない(?)梅雨の真っ只中ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は神戸大学の近藤昭彦教授と荻野千秋准教授から紹介され、今回寄稿させていただくことになりました。ここでは、今年5月下旬から6月中旬までの約2週間に収集した「米国におけるバイオ燃料の研究の最前線」について紹介させていただきたいと思います。
■流れはエタノールからブタノールヘ
 さて、そもそも私は1997年から2000年6月までカリフォルニア大学デイビス校のRoy H. Doi先生の研究室でポスドクをしており、嫌気性細菌Clostridium cellulovoransが生産するセルロソームの研究をしておりました。したがって、Doi先生はアメリカ時代の私の恩師であります。また、Doi先生は今年の6月にカリフォルニア大学デイビス校を退職することになっており、2008年6月1日から5日までボストンで開催された第108回アメリカ微生物学会(American Society for Microbiology:ASM)への参加が公には最後の学会でありました(なお、Doi先生はASM学会員として50周年表彰されておりました)。
 バイオ燃料に関する今回のASMミーティングの見どころは、6月2日午後のセッションでDivision OのThomas W. Jeffries(USDA)とJoy B. Doran(Central Michigan University)がオーガナイズした「Genomic Expression Analysis of Stress Tolerance for Ethanol and Butanol Production」と、6月4日午後のセッションでAmerican Academy of Microbiology(AAM)が企画した「Microbial Production of Biofuels: The New Frontier」です。
 前者のセッションでは、Lee R. Lynd(Dartmouth College)が、Clostridium thermocellum(セルロース分解菌)とThermoanaerobacterium saccharolyticum(ヘミセルロース分解菌)を組み合わせ、高温(55℃)における糖化のプロセスについて紹介。さらに、印象的だったのは、最後に講演したEdward M. Green(GREEN BIOLOGICS LTD)の話で、英国では「バイオブタノール生産」を目指したバイオベンチャーがスタートしているということでした。
 後者のセッションでは、大御所のArnold L. Demain(Drew University)がClostridium属からのバイオエネルギー生産に関して講演し、これに続いて、Hans P. Blaschek(University of Illinois)がブタノール生産菌Clostridium beijerinckiiBA101株の全ゲノムプロジェクトの紹介とブタノール生産の優位性を力説していました。
 以上のように、アメリカやイギリスでは、「バイオエタノール」から「バイオブタノール」に研究開発の動向がシフトしていることを改めて痛感しました。また丁度、タイムリーなことに、最近シーエムシー出版より発刊されました「微生物によるものづくり―化学法に代わるホワイトバイオテクノロジーの全て―」)に、三重大学の三宅英雄先生とともにアセトン・ブタノール・エタノール(ABE)発酵について総説を書きましたので、どうぞ参考にしてください。
※ご参考
「微生物によるものづくり―化学法に代わるホワイトバイオテクノロジーの全て―」
http://www.cmcbooks.co.jp/books/t0631.php
■寄り道で痛感した、米国エタノールビジネスの今
 さらにASMミーティングの後、Doi先生の紹介でイリノイ大学のHans P. Blaschekの研究室とBlaschek先生の紹介でSouthern Illinois UniversityにあるNational Corn-to-Ethanol Research Center(NCERC)を訪問しました。イリノイへの道中は飛行機の乗り継ぎが悪く、結局、シカゴから陸路3時間かけてイリノイ大学のあるシャンペンという町に到着。上述のように、Blaschek先生は嫌気性細菌によるバイオブタノール研究の第一人者です。
 さらにシャンペンから陸路3時間かけて、イリノイ州とミズーリ州との州境にあるNCERCを訪れました。ここでは、最先端のバイオテクノロジーを導入して、低コストでバイオエタノールの生産がシステマティックに行われていました。さらに、NCERCでは教育にも力を入れており、世界各国からの訪問者とその技術指導を行っていました。私たち以外にも、日本からの訪問者が過去に来たことがあると言っていました。
 最後に、NCERCからシャンペンへ戻る途中、給油のためにガソリンスタンドに立ち寄りました。驚いたことに、そこで販売されていたのはE10含有のガソリンだけ! イリノイ州だけかも知れませんが、バイオエタノールについては、生産から販売まで、本当に商業ベースで取引されていることを実感させられた次第です。近い将来、イリノイ州のガソリンスタンドでバイオブタノールが販売されるのかも知れません。それを予感させるアメリカの旅でした。                       
                                (田丸 浩)
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