みなさん、こんにちは。東京は夏に向かってどんどん暑くなってきました。沖縄と奄美は梅雨入りだそうです。
 さて、今週最も気になったニュースは、DuPont社とGenencor社がセルロースエタノールでジョイントベンチャーを設立するというニュースです。両社は50%ずつ出資をしてジョイントベンチャーを設立。向こう3年間で1億4000万ドルを投資し、最初のパイロットプラントを09年に米国で立ち上げます。とりあえずトウモロコシの茎葉とサトウキビの絞りかすを狙い、セルロースエタノールの製造プロセスをパッケージとして開発して、それを世界中の事業者にライセンスするのが狙いです。
海外重要発表、DuPont社とGenencor社、
セルロース由来エタノールを商業化するJV設立へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3088/
 重要なのは、この動きによって当面、セルロースエタノールビジネスが知財ベースのビジネスになることがはっきりしてきたことです。セルロースエタノールの原料として考えられるものはさまざま。これまでセルロースエタノールビジネスは、地域ごとに、原料を確保して、各事業者が製造プロセスを確立して…というイメージが先行していました。
 しかし、DuPont社とGenencor社は、トウモロコシの茎葉とサトウキビの絞りかすに照準を絞ることで、世界中の事業者に対して製造プロセスをパッケージとして、その知財をライセンスするという戦略に出たわけです。その背景には、既存のバイオエタノールの工場がトウモロコシ畑やサトウキビ畑の近くに存在しており、それらの施設をセルロースエタノールの製造にも利用できるという理由があるのではないでしょうか。
 既存のバイオエタノール工場を核にセルロースエタノールを製造できれば、既に原料の収集ルートや、エタノールの出荷ルートが確立しているというのも大きなメリットです。いずれにせよ特定の原料を狙い、一歩前に踏み出すことで、新たなビジネスチャンスを得ようというわけです。
 国内では、2008年5月19日に行われた総合科学技術会議で、「脱石油社会の実現に向けたGM微生物の貢献」というタイトルで、セルロースエタノールの製造技術がいくつか紹介されました。みなさんもご存知のGMコリネ菌とアーミング酵母です。
 必ずしも出口がエタノールである必要はないと思いますが、それから必ずしも原料の調達を国内でしなくてもいいと思いますが、とりあえず原料として特定のセルロースに照準を合わせて、事業へ向けて一歩踏み出すことが、まさに今、国内の事業者にも必要とされているのではないでしょうか。
                              記者 久保田文
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 出揃った各社のセルロースエタノール実証計画
                 ――地球環境産業技術研究機構・湯川英明
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 早いものでもう5月。しかし、"五月晴れ"の日が少ないような感じがするのは気のせいでしょうか。さて、今月も例によって、海外カンファレンスの紹介から始めましょう。
■盛況だった2大カンファレンス
 毎年この時期に、米国ではバイオリファイナリー分野の2大カンファレンスがあります。「Annual World Congress on Industrial Biotechnology and Bioprocessing」が、4月末にシカゴで、「Symposium on Biotechnology for Fuels and Chemicals」が5月初めにニューオリンズで開催されました。
 前者は、今年で5年目(5回目)の新しいカンファレンス。米エネルギー省(DOE)がサポートしている、言わばバイオリファイナリー産業へ登場する役者が勢ぞろいする実用化の色彩が強いカンファレンスです。主要メンバー企業・研究機関の展開プランを知るには大変よい機会です。地球環境産業技術研究機構(RITE)も、初回から毎年、講演やポスター発表で参加しています。今年も「RITEバイオプロセスによるバイオ化学品・燃料製造」で私が講演を、若手の研究者が要素技術に関するポスター発表(2件)を行いました。
 後者は、NREL(DOE傘下の研究機関)肝いりのカンファレンスで、30年の歴史があり、当初は「糖化研究」をメインとして運営されてましたが、最近ではこれに加えて、原料バイオマスに関する研究と、"出口"となるバイオエタノールや化学品の製造研究まで対象を広げています。
 今年の両カンファレンスを通じ、注目すべき内容として挙げられるのは、セルロースエタノールの実証生産に関するベンチャー企業や大手企業の計画が出揃ったことでしょう。主な計画を紹介しましょう。生産時期、混合糖からの製造法、生産規模、糖化酵素、発酵微生物種の順で記載します
■POET社
 2011年、C6C5同時発酵、約12万KL、Novozymes社製、組み換えザイモモナス
■Verenium社
 2010年、C6C5別途発酵(2段醗酵)、約12万KL、自前酵素、組み換え大腸菌
■Abengoa社
 2011年、C6C5別途発酵(2段醗酵)、約4万KL,Novozymes社製、未発表
■Dupont社
 2012年、C6C5同時醗酵、未発表、Genencor社製、組み換えザイモモナス
 このほかにも10社以上が計画を表明しています。まさに、セルロースエタノール開花宣言といった状況です。技術的に注目すべき点としては、セルロース原料法の最大の技術課題である、「混合糖からのエタノール製造」法は、C6糖と、C5糖を別途発酵する"2段醗酵法"と、C6C5糖同時発酵法に分かれます。
 このほか、発酵微生物は、組み換え酵母、組み換え大腸菌、組み替えザイモモナスのいずれかを使用。糖化酵素は一部を除き、Genencor社もしくは、Novozymes社と連携することが明らかになりました。製造コストは、概ね1ガロン当たり2ドル前後とされてます。
 有名な"イングラム特許"が、米国では来年春 特許切れとなりますが、C5糖の利用能付与に関する特許はまだ当分有効ですし、さらに、C6C5混合糖完全同時利用に関する最新システムバイオロジーを駆使した技術に関する特許は、今後続々とその内容が明らかになるでしょう。これら知財の制約から、ごく近い将来、現在の乱立状況が保有技術によってグループ分けされたり、合従連衡することも予想されています。
■議会を通過した米国農業法案
 食料価格の高騰化誘因、食飼料向けコーン出荷量の急減等に対する国内外からの批判に抗すべく、米国ではコーン原料エタノールからセルロース原料エタノールへの変換を強力に推進する政策が求められてきました。これに関して、かねてから議論されていました推進策がついに決定しました。5月15日に議会を通過した米国農業法案(セルロースエタノール振興策)がそれです。
 一連の法案は、「豊かな農場主をさらに豊かにする」として、ブッシュ大統領は拒否権を発動するとしていたのですが、両院とも3分の2以上の可決により、拒否権が有効とならない状況となったわけです。
 セルロースエタノールに関し、1ガロン当たり1.01$の補助金を支出、またこれまでのコーンエタノールへの補助金、1ガロン当たり51セントを45セントへ減額するというものです。なんとしても、セルロース原料法を推進すべきとする国内世論を背景とする議会の動きといえるでしょう。セルロースエタノールの実用化の時代はすぐ目前となったわけです。
 RITE-Hondaプロセスによる、セルロースエタノールの早期実用化へ向けて、我々も全力で推進してまいります。「絶対に遅れはとらない!」をスローガンに。
                               (湯川英明)