みなさん、こんにちは。大型連休、じっくり充電できましたか。私は連休を利用して屋久島に行ってリフレッシュしてきたところです。屋久島というといわずと知れた世界遺産であり、縄文杉(推定樹齢は2170年から7200年と諸説あるそうです)が有名ですが、この島の魅力ははそれだけではありません。九州の最高峰である宮之浦岳やウミガメの産卵など、見所は盛りだくさんなので何度行っても楽しめます。
 屋久島に行って、あらためて実感したのは、国内の多くのほかの土地と同様に、「山があって森があって水がある」ということです。そこで、今回は日本の森林、林業について考えてみたいと思います。
 
 日本の森林率は約70%です。これは世界的に見ても決して低い数字ではありません。しかし、消費する木材の自給率は18%と低く、国産材の価格は高く、日本の林業は森のある強みを生かしきれていないところがありました。
 
 背景には、所有されている森林が零細で大規模化が進んでいないことや、大量の木材を加工できる大規模な工場が少ないことなどが挙げられます。また、国内では短い期間育てた木をかなりの面積にわたって伐採する方法がとられることが少なくありません。一方、日本と同様に急峻な山を持つドイツなどでは40年ほどの長期にわたって育てた木を間伐して徐々に切っていく方法が主流です。こういった点から、国内林業では、もっと長く育てた気を少しずつ伐採するやり方にシフトする必要性も指摘されています。
 
 このような現状で、熱源や糖の原料としてセルロース系バイオマス(木材)を利用しようとするのであれば、まず国内の林業を立て直すことが必要です。これまでそいういった取り組みが十分になされてこなかったという意味で、国内の林業はピンチでもありますが、経済成長を続ける国々の木材需要が高まっていること、原油高などから、世界的に木材価格は値上がりしており、今こそ立て直しのチャンスとも考えられると思うのです。
 
                              記者 久保田文
 
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  化学工学の視点からバイオマスの糖化を見る
                 ――神戸大学大学院工学研究科・荻野千秋
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 神戸大学の荻野と申します。よろしくお願いいたします。ゴールデンウィークの真っ只中ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は1回目に登場した近藤昭彦教授の研究室で、バイオマスからの微生物によるバイオエタノールやビルディングブロックの生産に関する研究に従事しております。

 先日、国会でガソリン税などの暫定税率が復活し、大きく紙上をにぎわして、既に巷ではガソリンの値段も3月並に急浮上してきています。ガソリンの価格上昇は原油高が原因であり、このような社会的な問題も”バイオ”の力と、”バイオエタノール”で変えていける(かも?)と思うと、重要なミッションだとつくづく思います。いきなり、大上段に構えた発言で大変申し訳ありません。

 さて、バイオマスからのバイオエタノールやビルディングブロックの製造技術開発ですが、最大のボトルネックはバイオマスの糖化(グルコースへの分解)の技術ではないでしょうか。今回はこの点に関して、雑談させてください。

 私は化学工学科の卒業生で、学部では反応速度論や移動現象論など、古典的な化学工学の勉強をしてきました。その当時、バイオテクノロジーに大きな興味を持っていた私は、化学工学など勉強しても何もならないのでは・・・等と、かなり偏った考えを持った学生でした。しかし、無事に化学工学科の単位を修得し、卒業した現在は、その事が今の研究をより広範囲に捕らえるのには大きなアドバンテージがあるとポジティブに考えています。

 化学工学では、学生実験でも試験管での化学反応だけではなく、大きな(学生実験ではとても大きくて2~3m位でしょうか)吸収塔や蒸留塔等の実験も行います。そしてこの実験から、物質収支やその効率、そしてエネルギー計算等の総合的な解釈を求められました。こんな風に、試験管での厳密かつ精密な化学実験のみならず、大きなスケールでの(若干ラフな)学生実験は、実際の反応装置の設計やイメージに大いに役に立つ良い経験でした。

 実際に、セルロース類バイオマスの前処理には、硫酸法、アンモニア法、熱水法などが提案されておりますが、最終的な目的はエタノールを大量に生産することですから、どの手法を選んだとしてもその処理規模は大きく、大量の処理能力が求められます。また、エネルギー収支も重要な視点であり、これらの要素を総合的に、しかも大規模容量の反応器設計まで総合的に行うには、化学工学の力が本当に必要だと感じております。

 また、前処理後のセルラーゼによる酵素糖化行程ですが、この行程でも“これ!”といった、セルラーゼが登場していないのも事実です。セルラーゼには、単独で存在するタイプや、セルラーゼ複合体(セルロソーム)を構成するタイプなど、多様な登場人物が存在していますが、まだ主役を決めるには至っていないと思います。と、言うよりも、前処理の方法によりセルラーゼ処理の主人公も変わってくると思います。

 このように、バイオマスの前処理は、物理的な前処理とセルラーゼ類による酵素処理によって構成されていますが、繰り返しになりますが、“これが一番”は未だ登場していないのが現状ではないでしょうか。前処理後の酵母などでのエタノールへの変換(発酵)過程と含めて、前処理から発酵糧までをすべて総合的に捕らえながらバイオエタノール製造などを考えていかないと、本当の意味での工業化は難しいのでは? と感じております。

 私はこれら全てを、浅く(深くても良いのですが)広く、捉えられるのは化学工学出身者と思っています。私自身まだまだ若い(と思っていますが)ですが、このメールマガジンを読んだ学生さん(特に化学工学関係学科の)にも、この化学工学分野に興味を持ってもらい、バイオマスの糖化や前処理、発酵プロセスの開発に積極的に取り組んでいただければと思います。
                              (荻野千秋)