みなさん、こんにちは。先ほど関西出張から戻ってきたところです。今日は大阪から東京までずっと雨でした。新緑にとっては恵みの雨になりそうですね。
 今回、関西に行ったのは、いくつか取材したいトピックがあったからです。その1つが京都大学の植田充美教授の有機溶媒耐性酵母の研究。先日、名古屋で開かれた日本農芸化学会でも発表されていたのですが、私は発表を聞き逃したので取材に伺ったというわけです。
 詳細は日経バイオテク・オンラインの記事にしたいと思いますが、この研究で植田教授らは、有機溶媒耐性が転写因子の1アミノ酸変異でもたらされていることを突き止めました。
 研究グループは、DNAマイクロアレイで野生株と有機溶媒耐性株の全遺伝子の転写レベルを解析しました。その結果、有機溶媒耐性株で転写レベルが上がっている遺伝子にはトランスポーター関連などが多く含まれていましたが、それらに共通する配列があることに注目。上流で1つの転写因子が発現制御を行っていることに気付きました。
 しかも、有機溶媒耐性株の転写因子の配列に1アミノ酸変異があることを発見。実際、野生株にその1アミノ酸変異を導入したところ、有機溶媒耐性を付与することに成功しました。既に特許を出願し、論文も投稿中です。
 とても興味深いのは、DNAマイクロアレイを使って転写レベルを調べた際、遺伝子をそれぞれ「独立したもの」として見るだけではなく、「つながり」として理解しようとして、いろいろ想像をめぐらせた点だと思います。細胞集団が混ざりものであることを考えれば、なおさらのことです。しかも、有機溶媒耐性の酵母を人工的に作製できるわけですから、将来的に医薬品原料や化学品の生産に利用できるようになるのではないでしょうか。産業応用が注目されます。
 さて、今日は、4月1日付けで初代食料安全保障課長に就任された末松広行課長に寄稿していただきました。ぜひお読みください。
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
                             記者 久保田文
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 ◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 水田の有効活用 ~水田の機能を将来に伝えるために~
            ――農林水産省大臣官房食料安全保障課・末松広行課長
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 日本をはじめとするアジアモンスーン地帯に属する国々は、水田を使った稲作により人口を養ってきたという共通点があります。今回は、この水田とバイオマスの関係について考えてみたいと思います。
■わが国の水田の規模と生産量
 わが国の水田の面積は約260万haです。農地全体が約460万haですから、過半が水田ということになります。この水田全部を活用して米を作ったらどのくらいできるでしょうか。机上の計算ですが、反収500kgとして1300万トンということになります。現在の反収はもう少し高いので、それを反映すればもっと多く取れるということになります。江戸時代、それ以前から、多くの努力とともに開田が進められてきました。戦後も国民に食料を供給するため多くの努力が続けられてきました。
■米の需要の状況
 さて、お米をお腹いっぱい食べられるという目的が達成されたのち、ご存じのとおり米の消費は減少していきます。約120kg食べていたのが今は60kgになっています。さらに人口の伸びが鈍化し減少に転ずるに及び米の消費量は全体としても減少しています。そこで米を作りすぎないように、米の生産調整が実施されています。現在の米の消費量は約800万トンです。従って、約160万haで米を作れば十分ということになり、100万ha程度が生産調整として水田に米以外の作物を作っていることとなります。
■米の生産の特徴
 米は水田で生産するのに相応しい作物です。また、水田は米を生産するのに相応しい農地です。水田の特徴は、米という同じ作物を何年も連作できることです。普通、畑で一つの作物を作り続けると連作障害が起きますし、そうでなくともだんだん農地の地力が下がっていくことが多いのに対して、水田は日本では2000年以上も、また中国などではもっと長く数千年の間同じものを作っていても大丈夫です。米が余っているということで米以外のものを作らなくてはならないわけですが、作れるものなら米を作るのが、生産の側からは合理的といえます。
■水田の機能
 さらに、水田は国土保全機能などの多面的な機能を持っています。棚田などの美しい風景、そして文化も育んできました。このような機能を十分に発揮させることが必要です。このように考えると、水田を水田として使うことについて力を入れていくべきだと思います。消費以上の主食用米は食べてもらえないので作っても仕方ありません。小麦や大豆などわが国では自給率が低いものの生産に転換できればそうするのがいいですが、水田以外の利用が困難なところもあります。そういうところで、水田を水田として活用しつつ、ご飯として食べるもの以外を生産するということが期待されています。
■バイオ燃料米
 このような状況の下で注目されているのがバイオ燃料米です。バイオ燃料は、さとうきびやてんさい、トウモロコシなどのほかに米からも生産できます。わが国においても北海道において米を主原料とする1.5万キロリットルのプラントが建設されようとしていますし、インドなど外国にも例があります。バイオ燃料米を作る場合、既存の米作りの技術、機械、水利施設などがそのまま活用できます。更に、丁寧に、品質を第一に考えて、少量作る主食用の米と異なり、大量に品質を問わず作ることが可能となります。新たな作物を作付するよりも低リスク、低コストでの取り組みが可能となります。
 しかし、この場合、問題になるのは価格です。バイオ燃料の原料として考えた場合、主食用の米の価格の1/5~1/10の価格になる事を覚悟しなくてはなりません。この差を解決することは簡単ではありません。まず、収量をできるだけ高くする努力が求められます。一般の主食用の米の2倍程度の収穫のある米が開発されており、これをさらに進めることが期待されます。
 次に、コストをできるだけ下げる努力が求められます。見かけなどはよくなくとも、バイオマス量が確保できればいいので、かなりカットできる作業や資材はあると考えられます。その上で、水田を将来に残し、多面的機能を持続的に発揮させるという観点から、現在も交付されている「産地づくり交付金」のような制度を活用して支援することが考えられます。
■飼料用米、加工用米
 バイオ燃料米だけでなく、飼料用米、加工用米についても、水田の有効利用という観点からは、同じように効果があります。更に、食料自給率を向上させるという点もあり、農政上の重要性は、バイオ燃料米を上回る点もあります。但し、これらも需要があってはじめて作付けられるものであり、いずれにせよ、地域の実情と生産方法の選択によって、どれを選択していくがということになると思います。 
                              (末松広行)