みなさん、こんにちは。すっかり新年度ですね。今日はいろいろあるので、早速本題に入りたいと思いますが、ここ最近、バイオ分野に関する行政の動きが慌しくなってきました。医療分野ももちろんのこと、環境分野でも3月から4月にかけて目立った動きがいくつかありました。
 もっとも注目すべきは、2008年3月17日に(突如として)開催された第1回目の「BT戦略推進官民会議」(以下BT会議)でしょう。BT会議は、内閣総理大臣を筆頭に、関連省庁のトップ、業界のトップが集まって02年まで行われていたBT戦略会議の後継会議です。これまではBT戦略会議で決定されたBT戦略大綱に基づいて、関係省庁が毎年フォローアップを行うだけで、02年以降会議は行われていませんでしたが、もう一度バイオ産業を推進しようということで、大臣と産学の代表者によって再開されることになったわけです。
→BT会議開催の記事はこちら
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1328/
 ただし、裏事情をお話しすると、実は政府の中で内閣総理大臣をトップとする会議が多すぎるという話があり、その削減対象会議の中に、BT戦略会議が挙がっていたようなのです。環境バイオを追い風に今こそバイオ産業の推進を、と考える業界の思惑と、削減の危機という行政の事情が合わさり、内閣総理大臣抜きでBT会議が開かれることになりました。
 再開の事情はともかくとして、個人的には、BT会議が果たすべき役割はかなりあるのではないかと考えています。特に環境バイオ分野では、エタノールやディーゼルといった燃料一辺倒ではなく、バイオプロセスを利用したものづくりという広い視野で、国内の技術を用いて排出権を稼ぐような政策が必要なのではないかと思っていますので、その辺りの議論をBT会議に期待したいところです。BT会議は、BT戦略大綱の改訂版を決定する予定ですが、とりあえず6月までに洞爺湖サミットに向けた中間とりまとめを行うとのことです。
 次にお伝えしなければならないのが、農芸化学会のお話です。環境バイオ、たんぱく質医薬、ミニマムゲノムなど、個人的にはいろいろ勉強させていただいたのですが、参加者の集まりぶりから、環境バイオへの関心の高さを実感しました。研究予算がそういう方向に流れているので当たり前といえばそうなのですが、エタノール、プロパノールなどの「モノをいかに発酵生産するか」、セルロース系バイオマスを「いかに糖化するか」、発酵阻害物質や耐性の研究など、ともかく実用研究が参加者の中心的な興味であったように思います。いろいろお話を聞かせてくださいました研究者の方々、ありがとうございました。
 最後になりましたが、みなさんにお知らせがあります。4月から神戸大学統合バイオリファイナリーセンターの近藤昭彦教授をはじめ、神戸大学統合バイオリファイナリーセンターに関わっている研究者の方々に寄稿をしていただけることになりました。第1週のご担当をお願いしておりまして、今回は近藤教授にご寄稿いただきました。こちらもぜひ、お読みください。
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
                             記者 久保田文
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           農業・環境関連の記事
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農芸化学会、奈良先端大など、
レタスでヒトチオレドキシンの産生に成功
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1644/
農芸化学会、東レ、
組み換えカイコによるインターフェロン製造について、
実用化に向けた課題を示す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1646/
農芸化学会、月桂冠など
亜臨海水と酵母でセルロース系バイオマスからのエタノール生成に成功
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1645/
農芸化学会、トヨタ自動車、
β-グルコシダーゼ活性持つ天然酵母を探索
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1643/
農芸化学会、高光学純度のD-乳酸、
生産技術開発の研究が相次ぐ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1699/
理研など、シロアリ腸内共生細菌の全ゲノム解読、
原生生物を介した多重共生系の機構解明へ進歩
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1729/
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http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/nbto/
◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  私たちの研究と統合バイオリファイナリーセンター
               ―― 神戸大学大学院工学研究科 近藤昭彦教授
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 はじめまして、神戸大学工学研究科の近藤です。このメールマガジンより1年間、皆様にお世話になります。どうぞ宜しくお願いいたします。今回は1回目ですので、私達の研究室の研究紹介と昨年12月に神戸大学に設立されました「統合バイオリファイナリーセンター」について簡単にご紹介したいと思います。
 神戸大学は六甲山の山手にあり、夜になると阪神から神戸にかけての夜景と大阪湾を一望できる高台に位置し、ちょっとした夜景スポットになるような場所にあります。キャンパスは標高が高いためか、キャンパス内の桜もようやく蕾から七部咲き程です。この神戸大学六甲キャンパス内に私達の研究室もあり、バイオマスからのバイオ燃料製造からナノバイオテクノロジーを用いたDDSまで幅広い分野を対象に研究を行なっております。
 その中でもバイオ燃料に関する研究は、近年の社会的背景から非常に注目を浴びています。特に、植物油を原料としたBDF(Bio-diesel Fuel)生産技術や、細胞表層技術(アーミング)を駆使した酵母によるデンプンやセルロースからのエタノールに関しては皆様にも御興味を持っていただけるのではないかと思います。これらのバイオ燃料製造において、私達は固定化菌体触媒と細胞表層技術をコア技術に位置づけて、様々な応用分野へと展開を図っています。
 BDF製造では、リパーゼ酵素を菌体触媒に担持させることで、実験室規模ではありますが、京都市のゴミ収集車で使用されているBDF規格をクリアできる実験条件の探索に成功し、現在プロセス化に向けた応用研究を展開中です。酵母での細胞表層技術を用いたエタノール発酵では、2種のアミラーゼを表層提示することでデンプンからの直接エタノール発酵と、3種のセルラーゼを表層提示することでリン酸膨潤セルロースからの直接エタノール発酵に成功しております。
 研究室に所属する学生さんは神戸大学工学研究科応用化学専攻に所属しており、主に“ケミストリー”と“ケミカルエンジニア”の知識を有して研究室に入ってきています。私達スタッフも“ケミカルエンジニア”のバックグラウンドで教育を受けている者が殆どであり、これら構築してきたバイオ燃料製造技術に関して、“ものづくり”を目指したプロセス構築まで見据えた研究項目を設定し、研究に励んでおります。
 先日参加しました日本農芸化学会や日本化学会では、バイオ燃料関連のシンポジウムや一般研究発表会場は研究者で溢れており、これらからもバイオマスからのバイオ燃料技術の注目度の高さが伺えます。このような様々な背景と私達の研究成果をベースに、昨年12月に神戸大学工学研究科キャンパス内に「統合バイオリファイナリーセンター」開設が許可されました。
 この研究センターは、バイオマス資源専門の研究センターとしては日本で初めてであり、廃木材や植物の茎など農廃棄物バイオマス資源より、バイオ燃料や化成品化合物の原料を効率的に生産する“ものづくり”に関する総合的なシステム開発を行うのが目的です。私達、工学研究科の研究者を中心に、農学研究科、理学研究科の研究者から構成されており、バイオマス原料の研究は農学研究科、酵素によるバイオマスの分解方法開発は理学研究科、そして糖化・発酵によるバイオプロセスは私達、工学研究科の研究者が担当し、バイオマスからの生産システムを“統合”的に研究するセンターです。
 研究センター施設は120平米であり、てんぷら廃油からのバイオディーゼル燃料合成装置や多収量米からのバイオエタノール発酵装置などのパイロット装置を様々な外部資金により設置する予定です。また学外の関係機関として、京都大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学などの関西の各大学や、バイオ系企業が終結している近畿バイオインダストリー振興会議などとも連携を図り、バイオマスの統合研究を世界的にリードしていきたいと考えています。
 神戸大学「統合バイオリファイナリーセンター」は、設立されて間もないまだまだ蕾の状態ですが、皆様の御協力で、社会に貢献できるバイオマス資源の有効活用技術を開発して、大輪の花を咲かせていきたいと願っております。これからどうぞ宜しくお願いいたします。                          
                                (近藤昭彦)