みなさん、こんにちは。すっかり春ですね。お花見をするならやはりサクラがいいですが、見るだけならコブシやモクレンがきれいだなと思います。派手すぎないところがいいですね。
 さて春ということで、研究の世界は学会シーズン真っ盛り。私も毎週いろいろな学会の取材で忙しく、今日は日本農芸化学会の取材に名古屋に来ています。今年の農芸化学会は、バイオマスを使ったものづくりの話題が本当に豊富で、抄録に目を通すだけでもかなり労力がいりました。
 これらの話題については、1人でカバーできる範囲で、できるかぎり記事にしたいと思いますので、ぜひ週末から来週あたまにかけて、日経バイオテク・オンラインをチェックしてください。
 それからバイオマスを使ったものづくりからは少々離れますが、先日メールに書いた特定防除剤の続報があります。特定防除剤とは、害虫の防除目的などに使われている農薬登録されていない「資材」を指します。
 これまでこういった資材には、特段規制がありませんでしたが、食の安全の観点から農林水産省が防除の効果や安全性を担保する仕組みを作ろうと動いています。どのようなものを特定防除剤にするのかについて、08年1月にパブリックコメントが終了し、3月ごろには農業資材審議会の中で最終的な議論が行われる見込みでした。
 しかしながら毒ギョーザ事件の余波で、というか大波で、担当の農薬対策室の通常業務が停止に近い状態となり、特定防除剤の議論も中断しています。議論再開のメドは立っていませんが、どうやら5月ぐらいになりそうです。続報がないというのが、続報です。
 本日は、農芸化学会でも研究室から20本程度の発表を予定している地球環境産業技術研究機構・湯川英明氏に寄稿していただきました。そちらもぜひお読みください。
※※みなさまからのご意見、ご批判をお待ちしております。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
                             記者 久保田文
◆BTJの関連記事◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           農業・環境関連の記事
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農芸化学会でシロアリが顕著な成果、
被引用数No.1論文と日本農学賞
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1562/
本農芸化学会が桜ほころぶ名城大学で開幕、
3月29日まで4日間に2400超の発表、5000人の参加見込む
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1559/
旭硝子がS.pombe酵母の数百kbpを削除、
ミニマムゲノムファクトリーで成果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1494/
農環研、生プラ分解するPseudozyma属酵母から
新規の分解酵素を同定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1539/
海外重要発表、米ミネソタ州、
エタノール20%含有ガソリン(E20)の性能と車両適合性を評価
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1190/
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ダイズに寄生するシスト線虫のゲノム配列を公表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1323/
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バイオマス研究開発と実証プロジェクトに1840万ドルを拠出へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1319/
海外重要発表、Novozymes社、
酵素によるエステル交換反応プロセス開発により油脂業界から表彰を受ける
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1475/
海外重要発表、Genencor社、
インドに酵素調合施設を開設
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1476/
海外重要発表、DSM社、
中国のバイオポリマー企業に出資
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1538/
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◆オピニオン◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ワシントンとブリュッセルでのカンファレンス報告
                 ―― 地球環境産業技術研究機構 湯川英明
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 すっかり春めいてきました。桜の開花の便りが届くのももうすぐですね。今月も、米国、欧州で開催された、バイオ燃料関連のカンファレンスの模様のご紹介をしましょう。まずは米国版から。
■再生可能エネルギー国際会議 in ワシントンDC
 3月の初旬にワシントンDCにて、「再生可能エネルギー国際会議」が開催されました。対象としたエネルギーは、水力、波力、風力、地熱and太陽光発電、バイオ燃料でした。会議は各国の閣僚レベルによる基調講演ではじめられました。講演の基調としては、太陽光発電とバイオ燃料に主として焦点があり、前者は今後いかに普及を図るか、国の支援のあり方などが表明され、きわめて現実的な内容でした。
 バイオ燃料は、現状の食料資源からの生産拡大への懸念とともに、技術革新(セルロース資源への転換)による"影の解消"への期待、技術開発促進策の重要性を、各講演者が等しく強調していました。
 会議の2日目にはブッシュ大統領も来場し記念講演を行いました。内容は日本のメディアでも一部紹介されましたが、「地球温暖化問題は世界の最重要課題、ポスト京都の枠組み設定に米国は積極的に取り組む、これに加わらない国は許されることはない」と強調し、直近の米国内の産業界の動きをストレートに表明したものとなりました。それにしても、ブッシュ大統領は、つい最近までまったく反対の表明をしていたわけですから***大変印象深く講演を聴きました。
 と同時に、バイオ燃料を含めた米国の「バイオリファイナリー産業」は、経済的インセンティブに加えて、温暖化対策という"大義名分"による国の支援策の一層の強化を得ていくわけですから、大変な脅威ですね、技術開発競争は激化するばかりでしょう。この会議から2つトピックスを紹介しましょう。
―E20の可能性に言及:Minnesota州知事のTim Pawlenty氏
 Minnesota州法は、数年以内に同州のガソリンの2割をバイオエタノールによる置換を予定し、その実現にはE85普及だけでは限界もありE20実現での加速を検討したい。この発言の根拠は、Minnesota大、Minnesota州立大の研究で、"E10と同様に通常車両でE20も可能"とのレポートです。
 もっともこのレポートに対しては、多くの反対意見もあるようです。まず、EPAの基準を変更する必要があること、また、米国ビッグ3(GM、 Ford、Chrysler)は揃って安全性担保への懸念から慎重な姿勢を表明しています。FFV普及も含めて、バイオエタノールの使用量促進議論のひとつとなっていくのでしょうか。
―DuPont社:システムバイオロジーへ絶対の自信を表明
 ご承知のように、同社はバイオリファイナリー分野に早くから大規模な経営資源投入を決め、プロパンジオール、イタコン酸等の化学品製造計画の表明、続いて、バイオ燃料分野への参入も図るべく、ザイモモナス菌によるセルロース原料バイオエタノール製造計画を表明。さらに、ポストバイオエタノールとして、BPと提携し、バイオブタノール生産に関する大規模研究計画を打ち出してきました。
 今回の会議で、これまでの同社の取り組みを総括・紹介するとともに、ザイモモナス菌を中心として研究開発を進めてきた、システムバイオロジー(工業生産に用いる株を代謝設計プランに基づき人為的に創製するバイオ革新技術)を産業化技術として確立したと表明しました。今後は、目標とする化合物の生合成代謝系を人為的に設計し短期間に創製し得るとの内容でした。
 同社の宣伝要素は割り引くとしても、システムバイオロジーを技術コアとして位置付けし、米国内で続々誕生しているベンチャーを含めて、米国では、同技術はすでに"産業技術"としての地位を確実としていると実感します。我々も、一層、頑張らねばと、覚悟を新たにしました。
 ところで、バイオリファイナリー分野では現在まで、C3~C6化合物の激しい開発レースが行われてきたわけですが、近年、"石油化学のグリーン化学への変換"という、まったく新たな技術体系への期待が急浮上しています。今後バイオリファイナリー産業はますます展開を見せていくものと思います。
■バイオ燃料会議 in ブリュッセル 
 次に同じく3月初旬に欧州ブリュッセルで開催されたバイオ燃料会議の注目すべき出来事を紹介しましょう。ちなみに私はこの会議にはスケジュールの関係で参加できず、ホンダ技研の方に参加して頂きました。
 このメールでこれまでご報告してきましたように、欧州域内で開催されるバイオ燃料の会議では、"影"の部分が大きく取り上げられ、グリーンピースなども講演に参画するなど特色ある会議模様となっております。グリーンピースなど国際的な環境NGO・団体も食料原料からの製造、および、バイオディーゼル燃料の原料、油脂植物、の栽培拡大による熱帯雨林の破壊に対する大きな懸念を表明する一方、セルロース原料からの製造(技術革新)には強い支持をしています。
 ところが今回の会議では、なんと、ひとつのセッション会場がバイオ燃料反対を主張する数名により封鎖され、逮捕騒ぎにまで発展したとのことです。世界各国でバイオ燃料の会議等が開催されていますがこのような混乱は初めてでしょう。残念なことです。一日も早く、非食料資源からの生産が開始・拡大され、上記の懸念を減少すべく国際社会は協力して取り組むことが肝要ですね。
 ところで、毎回同じことを述べてますがこの会議にも日本からの参加は少なく数名だったとのことです、ぜひ、多くの企業からの参加、講演が望まれます。
                               (湯川英明)